監獄島へようこそ!!
臨帝既刊ネタが混入されつつ「監獄島」としての折原臨也の核心としての話。
監獄島の臨也さんの帝人君に対する「あーだ、こーだ」プラス外野の雑談なので、
分からなかったら分からない話なので読まないでとっておいてもいいかもしれません。
※0.5のナンバーリングは不親切な作りです。
以下は監獄島へようこそ!! No2.5 『折原臨也』 冒頭抜粋
監獄島のその前に【折原臨也】
少年は世界が嫌いだった。
いいや、世界に嫌われていると思っていた。
少年の世界は狭い。狭いことすら幼い少年時代には知らないことだ。世界の全てが自分のものだと驕れる万能感。
南京錠が三つ、番号による鍵が三つ、太さの違う鎖が三つ、ぐるぐると扉に絡まっている。いつかの何処かを模したものであるが少年はそれを知らない。起源など関係せず、ただ少年にとって世界の全てはその部屋の中にあるものに変わっていった。絶対だった。壊れない。砕けない。信じられる確かなもの。
「別に淋しくなんかない。でも、いつ君は目覚めるんだろうね」
冷凍睡眠の中にいる自分の伴侶に問いかける。
カプセルの中に居るのは少年だ。それでも自分の花嫁なのだと疑わない。永遠を共にするパートナー。
「だって決められてるんだ。ううん。違うね。……これは、これだけはさ――」
カプセルの表面を撫でながら少年は熱心に囁きかける。反応などない相手に誰にも見せたことのない純粋な微笑みを浮かべた。カプセルの中にいる少年だけが真実だった。他はいらない。
「この狂った機械仕掛けの世界なんて壊れてしまえばいい。血の通った人間が存在せずに計算式で動くなんて、気持ち悪い。君は違う。君だけは違う。だから、俺は待ってるよ。俺のために、俺だけのために早く目覚めるといい。こんなに俺が思っているんだから君が俺を愛さないはずない」
カプセルに口付けをして静かに少年は自分の世界を後にする。
狂っていて気持ち悪いものは全てゴミ箱にでも捨てた方がいい。つまりは、カプセルの中の居る少年以外は全てゴミであり捨てればいいものだ。壊していいものだ。
「機械が言った、機械が決めた。冗談じゃない。君だけは俺のだ。俺が見つけて、俺が求めた。俺だけの君だ」
少年の宣言に返される言葉はない。誰もいないのだから。
「嫌うなら嫌えばいい。機械ごときに排斥されるか」
機械という名の世界に嫌われた少年は吼える。
生まれた時から感じる嫌な予感。付き纏い続けるソレ。
「電波が悪いんだ」
響きわたる電子音。
人は肉の器を捨ててどこへ行くというのだろうか。
少年は知らない。
青年になっても答えは出ない。
少年は知らない。
カプセルから出ても少年のまま何も知ることはない。
全てを知っていた土台を作ってしまった神様は「失敗した」とない頭を抱えた。そんなつもりはなかったのだ。
苛立ちというよりも明確な嫉妬心と面白くなさと許せない気持ちが何よりも強かった。自分自身の至らなさと進んでしまった世界の有様。自分が目指したものと違い過ぎた。自分がいた場所と違い過ぎた。何もかもが遠い。最果ての地に辿り着けない。駄目だと諌められて初めて自分がやったことを振り返り少し反省した。だが、手遅れだった。これはその手遅れの物語。
作品名:監獄島へようこそ!! 作家名:浬@