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こらぼでほすと 拾得物8

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「ダメですよ? ティエリア。デートは、二人でするものです。こういう場合、あなたはお邪魔虫というものに該当いたします。」

「ラクス、それは言いすぎだ。・・・・ティエリア、アレルヤ、お土産買ってくるけど、何がいい? 」

 ごめんな? フェルトと約束してたからな、と、ティエリアの頭を撫でて、ニールも苦笑する。

「僕は、何もいらないよ。」

「おりぃは、あんみちゅがたびたいにょ。」

「あんみつか・・・・・わかった。買ってくるからな。アレルヤ、後を頼むよ? 」

「うん、楽しんで来てね。いってらっしゃい。」

 ニールの具合が良くなったらフェルトとデートするというのは、聞いていた。歌姫様がコーディネートしてくれるらしい。まあ、たまには、親猫も家事を忘れて楽しめばいい、と、内でハレルヤも手を振っている。



 本宅に連行されて、そこで昼食を摂ると、ニールは客室に追い払われた。「女性の仕度には時間がかかります。二時間ほど昼寝でもしていてください。」 と、歌姫様はおっしゃるので、大人しく言われた通りにした。

 実際、メイクしたり着替えたりで、小一時間はかかるのだが、歌姫様の意図としては、あまり長時間、暑いところへ、ニールを出したくなかったからだ。

「ごめんなさいませ、フェルト。でも、これぐらいでないと、ママが弱りますのでね。」

「うん、これでいいよ。でも、なんだか、ここまですると恥ずかしいな。」

 髪の毛も、きっちりとセットされ、さらにメイクもされてしまうと、なんだか別人になった気分だ。

「なるべく外へは出ないでくださいね。ショッピングモールが隣接しているので、その辺りを歩くぐらいにしてください。」

「わかった。」

 さあ、それじゃあ、ママを起こしてデートしていただきましょう、と、ラクスが立ち上がる。びっくりさせたいから、フェルトは居間で待機だ。



「あら、残念。もう起きていらっしゃいました? 」

「二時間も寝ないさ。準備は終わったか? 」

 部屋に入ったら、ニールは、そこのソファで寛いでいた。用意しておいた麻のスーツを着ているのだが、無駄に美人だから似合いすぎて、ラクスには微笑む光景である。これで中身がおかんでなければ、引く手数多にもてるだろう。

「ホテルのレストランの予約をしてございます。名前は、ディランディで。どういうリクエストでも受けてくれますから、お好きなようにお使いください。一応、コースの予約はしてございます。時間は、六時です。それまで、隣接のショッピングモールでも散策なさって、デート気分を盛り上げてくださいね。」

「おまえさんは? 」

「私くしは、仕事がございますから同行できかねます。」

「別に、両手に華でも、俺はいいんだぞ? 」

 歌姫様の嘘なんてものは、おかんにはお見通しだ。どうせなら、一緒に行けばいいだろう、と、言う。

「いいえ、ティエリアに、あんみつを届けて、あちらで遊んできますから。レストランの上に、バーがございます。もし、フェルトが、そういうものに興味があるようなら連れていってあげてください。大人のデートですから。」

 フェルトとデートをするというなら、二人で行くのが基本ですよ? と、ラクスは微笑んでいる。せっかくなんだから、王道のデートをしてもらいたい。

「あんみつか・・・・・すまないな。」

「いいえ、今夜は、ティエリアが出勤ですから。ふふふふふふ。」

「あんまり、どぎついのはやめてやってくれよ? 」

 『吉祥富貴』へ出勤するティエリアの着せ替え遊びを満喫するつもりの歌姫に、一応、釘は刺す。あんまりやると、魘されそうで心配だからだ。

「わかっておりますよ。それからお帰りの際は、ホテルのコンシェルジュに命じて頂ければ、うちの車が待機しておりますから、それでお戻りくださいね。」

「何から何まで、手配してくれて有難いねぇー。」

「女の子の憧れる王道デートを演出させていただきました。楽しんでください、ママ。」

 はいはい、と、ニールは立ち上がって、歌姫の頭を撫でる。彼女には、できない普通のデートなんてものを、フェルトにさせてみたかったらしい。それなら、せいぜい、フェルトをエスコートして楽しませてやろうと、と、ニールも思う。

 居間のほうに出向いたら、そこには夏らしい装いのフェルトが佇んでいた。髪の毛を、綺麗にセットされて、薄い桃色のワンピースを着ている。女の子って化けるんだよなーと、内心で感心した。すっかり女性らしい体型になったから、背中から腰のラインがすっきりしたワンピースだと、色気すら醸し出されている。

「じゃあ、お嬢さん、行こうか? 」

 はい、手は、ここだよ? と、自分の腕に回させる。フェルトも嬉しそうに、それに従った。

「はあ、本当にお似合いですのにね。ママの中身が貧乏性のおかんでなければ、フェルトにお奨めしますのに。」

「ラクス、それ、微妙に貶してないか? 」

「いえ、事実です。フェルト、レストランの空調が効いていたら、これをかけてください。」

 ふんわりとしたショールを手渡して、ラクスが追い出す。なんか、ドキドキしちゃう、と、フェルトが笑っているのが、何よりの癒しだ。



 ホテルまで、送迎されたものの、まだ、予約時間までは、二時間はある。隣接するショッピングモールでも散策するか、と、そちらへ足を進めた。

「ニール、買いたいものがあるんだけど? 」

「ああ、なんでも好きなものをいえよ? フェルト。お兄さんが、なんでもプレゼントしてやるぞ? 」

 ふらふらと、モールの中を歩いていて、フェルトは、何かを思いついたらしい。そういうもんじゃないよ、と、その店の前に立つ。そこは、キラの出身地域の民族衣装の店だった。

「明日、花火をする時に、浴衣を着るんでしょ? ティエリアのは、きっと、女の子用だから、男の子用を用意してあげたいの。」

 連日のように、歌姫たちの着せ替え攻撃を食らっているティエリアに、フェルトも同情した。似合うのだが、普段のティエリアなら、ヴァーチェを持ち出して、歌姫を殲滅しそうなほど怒っているのは、見ただけでわかる。だから、とりあえず、女の子用を一瞬だけ着て、後は着替えればいいだろう、と、フェルトは思ったらしい。

「ああ、そういうことか。うんうん、フェルトはいい子だな? 」

 じゃあ、それを選ぼうと、その店に入る。二歳くらいの男の子用の浴衣とか甚平とか、店の人に出して貰って、その中で涼しい感じの幾何学模様の甚平を買った。これなら走り回るのにも裾がひっかかることもない。

「おまえさんのも買うか? 」

「ううん、カガリが用意してくれてるからいい。」

 じゃあ、他の店を見てみよう、と、ぶらぶらと見て回る。せっかくだから、俺に選ばせてくれよ、と、ニールが、普段使いの服をフェルトにプレゼントした。カントリー調の流行りでないスタンダードな服だ。明日は、それを着てくれ、と、リクエストする。それから、花屋で、小さなブーケを買った。

「花は贈らないとな。」

「デートの時って、そういうもの? 」

「うん、そういうものだ。・・・・・さて、そろそろ、いい時間だな。行こうか? 」
作品名:こらぼでほすと 拾得物8 作家名:篠義