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こらぼでほすと 拾得物9

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 と、叫びつつカガリは、フェルトたちにも、その水爆弾を投げてくる。さらに、キラが追い打ちにニールにめがけてきたので、その場の三人も、すぐにびしょ濡れの被害を被った。

「フェルト、反撃です。」

「うんっっ。」

 こちらも、負けん気の強い歌姫と桃色子猫だ。すぐさま、その騒ぎに参加してしまう。ありゃありゃと笑っているニールには、アマギが、すかさずタオルを渡してくれた。

「これで境内の温度は下がるさ。」

「けど、アマギさん、これじゃあ、全員、着替えないと・・・・」

「そのために浴衣を準備しているんだ。滅多に、こういうことはやれないだろ? 」

 カガリが用意させた浴衣は、すでに運び込まれている。せっかくだから、遊び倒すぞ、と、筋肉脳姫が思いついたサプライズであるらしい。

「用意は終わったんですか? 」

「ああ、そうめんを茹でたら完成だ。先に、三蔵さんに顔を見せておいで。」

 そういえば、三蔵の姿はない。バカ騒ぎには参加していない模様だ。とりあえず、戻った報告をしておくか、と、家に入ったら、どこまでもマイペースな高僧様は、デーゲームの野球中継を観戦していた。

「ただいま戻りました。」

「おう、じゃあ、そろそろメシが食えるな。えらい騒ぎになってたが・・・・・ああ、やられたのか? 」

 振り向いた三蔵が、シャツから水を滴らせているニールに、人の悪い笑みを浮かべる。どんくさい、と、顔に書いてある。

「いきなりやられたんですよ。」

「ったく、油断しすぎだろ? 」

 いや、あの場合、油断も何もあったもんじゃ・・・・と、ニールも笑っている。普段できないバカ騒ぎだから、マイスター組にもサプライズで楽しいだろう。外の喧騒は、テレビの音で消されて、ここまで届いていない。

「着替えて、そうめん流しらしいですよ? 」

「トダカさんが、そう言ってたな。客間と脇部屋で着替えさせりゃいいだろう。」

「悟浄さんたちがいらっしゃいませんでしたが? 」

 なぜか、こういうイベントには、皆勤で参加のはずの沙・猪家夫夫の姿がなかった。

「今日は不参加だ。あっちはあっちで、何やらやってるんだろう。」

 毎度、呼び出されているので、今回はお休みということらしい。まあ、毎度毎度、このバカ騒ぎの後始末も大変には違いない。



 しばらくして、騒ぎは終わったのか、ぞろぞろと全員が家のほうへあがってきた。夏のことなので濡れても寒いということはない。男性陣は、客間で、女性陣は脇部屋で着替えた。いそいそとカガリがやってきて、三蔵とニールにも浴衣を差し出す。

「ペアルックにしといたぞ。」

「はあ? 」

「ああ、ニール、着替えても、まだ外へ出るなよ。その暑苦しい髪を纏めるからな。」

「余計なお世話だ。・・・・おまえ、それ、男物じゃないのか? 」

 カガリが着ているのは、大島紬という最高級の灰色に白の縞が入ったものだ。本来、浴衣は綿で出来ているはずだが、さすが、超お金持ちは、衣装にも金をかけた様子だ。

「このほうがしっくりするんだ。さっさと着替えろ。」

 で、差し出されたのは、三蔵が黒に朱色で昇り龍のデザインのものと、ニールには白で緑色で昇り龍というイロモノすぎる浴衣だ。そして、着替えるとニールの髪は、軽く束ねられてしまった。

「ママニールのうなじには色気があるなあ。」 と、カガリ。

「そりゃ、カガリ。ニールは人妻ですもの。」 と、ピンクに桜と花火をあしらった浴衣の歌姫様。

「綺麗なんだよね、ニールって。」 と、黄色に鮮やかな南国の鳥と花の浴衣のフェルト。

「その意見さ、俺、全然嬉しくないんだけど? お嬢さんたち。」 と、がっくりなニール。

「いいじゃねぇーか、こいつらが褒めるなんて滅多にないんだぞ。」 と、なぜ、そんなイロモノ浴衣が似合うんだ? な、高僧様。

 そんな感想を話していたら、続々と男性陣もやってくる。笑えたのは、刹那とライルのペアルックだ。白に緑でカエルの柄の甚平なのだが、ライルのは、かなり裾が短かったのか、太腿露出になっている。

「なんか、俺だけ変じゃねぇーか? 」

「すまないな、ライル。ちょっと寸法が間違った。まあ、いいじゃないか、刹那とお揃いだ。」

「いや、限界領域だろ? 痛いぞ、かなり。」

 と、カガリにツッコミするハイネは、藍色に白で乱菊という柄で、なかなか粋な代物だ。小千谷縮の甚平で、白地に金魚柄の浴衣のティエリアをだっこしているアレルヤは、丈がちゃんと合っていて、男らしい格好だ。

「にーるぅーきりぇいだにゃー」

「ほんと、すっごく色っぽい。なんで、ライルと、あんなに違うかなあ。」

「そりゃ、ママとライルじゃ違うよ。」

 と、断定してる大明神様は、カガリとお揃いの大島紬の白だ。アスランは、藍色に鯉の柄という定番の浴衣である。

「俺の、甚平じゃなくてよかった。レイも、すっげぇ美人だと思う。」

「ありがとう、シン。おまえも格好いいぞ。」

 そして、真っ白に涼しげな波のデザインの浴衣のレイと、それの色違いの茶色のシンも、二人して褒めあっていたりする。

 各人の親衛隊も、「かがりんらぶ」と「とだかーずらぶ」と染め抜かれている揃いの浴衣を着ている。そして、トダカは、黒絣で微妙な色合いで市松模様になっている重厚な浴衣だ。

「兄さん、それと代えて。」

「ああ、いいよ。」

 ライルは、やはり自分のものがおかしいと思った。兄も、それじゃあ、可哀想だと頷いたのだが、外野が一斉に、「「「「「「「だめぇーーーーーーーーっっ」」」」」」 と、一刀両断した。だが、ニールとしても、その足はまずいだろうと反論する。

「でも、これさ、カガリ。あんまりだろ? 」

「ニールの生足のほうが問題だ。・・・・・ペアじゃなくてもいいのなら、予備があるぞ? ライル。」

「じゃあ、それにしてやってくれ。・・・・それでいいか? ライル。」

「うん。どうせなら、兄さんと同じのがいいな。」

「わがまま言うな。あれは、一組しかない。」

 予備は、ごく一般的な浴衣だった。紺色で破縦縞というものだった。色白のライルだと、これはこれで似合っていたりする。

「これで着替え終わったな。それじゃあ、そうめん流しをやろう。」

 さあ、準備再開、と、カガリの号令で、全員が、ドタバタと外へ移動する。ハイネが、あっちこっちに連絡は入れたが、今回は集まらなかったので、ほぼ年少組だけなんてことになった。

「ニール、今日は、俺たちがやるから三蔵の相手頼むな。」

 薄い紺色にお猿の柄の甚平を着た悟空が、ニールの帯辺りをバンと叩いて出て行く。

「相手って・・・・それより、そうめん茹でるんだろ? 悟空。」

「大丈夫、大丈夫。アマギさんたちと連携するから。」

「おまえも楽させてもらえ。どうせ、この夏は忙しい。」

 三蔵のほうは、からから笑いつつ、団扇で煽っている。まあ、年少組がマイスターたちと遊ぶつもりらしいから、そういうことなんだろう、と、ニールも頷いて、ゆっくりと表へ出て行く。


作品名:こらぼでほすと 拾得物9 作家名:篠義