こらぼでほすと 拾得物10
フェルトは、デートした時に、きっと刹那は羨ましがっているから、デートしたほうがいい、と、提案していたのだ。
「でも、刹那。ティエリアを、ひとりにするわけにもいかないぜ? みんなで、出かけるってーのならさ。」
「ダメだ。デートは、ふたりが基本だ。」
「おまえさんさ、もう成人して、立派な大人になったんだろ? 親離れしないとな? 」
「するつもりはない。あんたは、、俺のおかんだ。」
キラが、マザコンとからかおうとも、刹那は、ニールにはべったりしていたいらしい。ニールの側でだけは、責任とか義務とか、いろいろと堅苦しいものから解放される。それに、無条件に甘やかしてくれるのも、ニールだけだ。
「ママ、明日、ティエリアは、俺とフェルトとライルで世話するから、デートしてやって。」
「けっっ、結局、ちびは、まだまだ親離れはしやがらねぇーわけか? よかったじゃねぇーか? ママ。」
悟空と三蔵が、そう言うので、ニールも苦笑する。すっかり親離れされてしまったと思っていたから、嬉しい誤算ではある。
クリーニング屋まで行くから、ついでに、ティエリアの水着を、スーパーまで買いに行こうとニールが思ったら、俺も、私も、と、全員がついてきた。
「ついでだから、悟空も買うか? 」
ライルと刹那も、用意させたから、ついでに悟空も新しいのを買おう、ということになる。そういうことなら、ニールも、と、フェルトが言い出したからだ。
ティエリアの水着は、一度限りだから、ご近所のスーパーでいいだろうが、残りの野郎どもは、スポーツショップへでも出向けとは言い渡した。
「ママも買うんだから、一緒でいいだろ? 俺は、そんな高いのじゃなくていいよ。」
「・・・・兄さん、ティエリア預かろうか? 」
ひとりだけ歩幅の違うティエリアは、ニールがだっこしている。ライルが、疲れるだろうと手を差し出したが、ティエリアが、ぎゅっとニールにしがみついて拒否している。
「大丈夫だよ、ライル。・・・・・そうだ。ティエリア、今回限りのお楽しみをしてやるよ。」
ぎゅっとしがみついていたティエリアの身体を持ちあげて、肩車をした。小さいからできることだ。
「頭を持つんだ。ほら、いつもより目線が高くて楽しいだろ? 」
「にーるぅーだいじょぶきゃ?」
「おまえさんくらい軽いもんさ。」
肩から下ろしているティエリアの足を持って、ニールは笑っている。たぶん、刹那もアレルヤも、こんなことはしてもらったことがないんだろうな、と、思ったからだ。
「乗りたい。」
「ごめん、フェルト。おまえさんは無理。アレルヤが帰ってきたら、やってもらえ。」
フェルトもして欲しいと言うが、さすがに成人女性の体重はきつい。じゃあ、俺が、と、悟空が胸を叩いた。
「ライル、あれをやってくれ。」
そして、刹那は、嫁に、肩車を所望する。もちろん、刹那はやってもらったことはない。
「いいぜ、ほら来いよ。」
曲がりなりにも現役マイスターのライルは、刹那ぐらいなら持ち上げられる。腰を下ろして、刹那を肩に乗せた。
「はははは・・・・ライルは鍛えてるなあ。」
「そりゃそうだろう。これぐらいの荷重なら、朝メシ前だよ。」
人気のない道だから、わあーわあーと騒いでいても迷惑ではない。しばらく、ライルの上からの目線を楽しんだ。フェルトは悟空が肩車をした。ちょっとよろけたのは、ご愛嬌だ。何、やってんだか、と、ライルとニールは顔を見合わせて苦笑する。大通りまで、フェルトと刹那は肩車をしてもらった。今度は、俺が、と、ライルを乗せようとしたが、潰れるからやめろ、と、悟空とニールが止めた。
「にーるぅー、ちいさくなりゅのはいやらとおもったぎゃ、たのしいこともありゅんらな?」
小さくなって、散々な目に遭わされていたティエリアは、そう呟いた。アレルヤとハレルヤも、必ずだっしてくれていたが、やっぱり、おかんは一味違う。
「そうだな、こういうのは子供の特権だからな。」
小さくて今までできていたことが、できないが、それを補ってくれる存在があるのは幸せなことだ。この関係は、ずっと続くのだと思うと、ティエリアは頬が緩む。
「水着は、ワンピースにする? ティエリア。」
「にゃんでもいいぎゃ、おんにゃにょのはやら。」
「じゃあ、海パンとTシャツぐらいだろうな。後さ、浮き輪は必要じゃないか? 兄さん。」
「そうだよなあ。大人用だと立てないだろうしな。というか、おまえは泳げるのか?」
「さあ? ここんとこ、そういうリクはしてないからなあ。」
「俺、泳げないんだよなあ。」
片や腕利き反政府エージェント、片や、元スナイパーなんてものだと、そういう暢気なレクリエーションを楽しんだことがない。刹那は、どんなこともできないと、と、ニールが水泳も練習させていたから、遠泳だってお茶の子歳々だ。
「じゃあ、プールの時は、どうしてるのさ? これ、毎年なんだろ? 」
「浮き輪で浮いてるか、パラソルの下で読書。・・・・ああ、おまえも日焼けは気をつけろよ? すごい腫れるからな。フェルトもな?」
西洋人は、紫外線に弱い。日焼けしようものなら、ヤケド状態になる。フェルトにも、日焼け止めを塗るように指示するのは忘れない。
「うん、鷹さんも、そうだよ。刹那は大丈夫だけど、ライルとフェルトは要注意だな。」
いろんな種族が混じっているので、プールで日焼けすると、とんでもないことになるのもいる。コーディネーターは、基本、悪環境に対応しているから、日焼けもあまりしないのだが、それでも、キラはヤケドになったりする。
「悟空、おまえの親父さんは? 」
「うちの親父は不参加。」
暗黒歌姫の居るところへなんざぁ、行きたくねぇーと一蹴されてしまうので、三蔵は、毎回、不参加だ。
そんな話をしていると、スーパーに到着した。まずは、アイスクリームと、フードコートへ走り出そうとした悟空の襟首を捕まえて、全員で水着売り場へ向かった。
ティエリアには、空色の海パンと白のTシャツという、とっても子供らしい格好を用意した。どうせ、一度しか着ないのだから、一番安い組み合わせにしたのが実情だ。それぞれの水着も選んで、フードコートで、悟空の希望したソフトクリームでブレイクタイムとなった。
本日は、ウイークデー。つまり、夜の仕事がある。だから、あまり時間の余裕はない。軽いものを食べさせて、仕事に出て貰わなければならないから、ニールは、この合間に買い物して来ると席を立った。ティエリアは、ニールが連れて行ったので、残っているものは、大人ばかりだ。ライルは、ニールの後からついていった。荷物持ちをするつもりだろう。
「刹那、明日、ニールとデートすんなら、こういう空調システムがあるとこにしてくれよ?」
真夏の気候を慮って、悟空が、そう忠告する。長時間、外気温の高い昼間に外へ出たら、確実に熱射病になる。
「どっかで食事して、ショッピングモールを散策するとか? 」
「うん、フェルトの言うのが一番安全だけど、刹那は、何を予定してる? 」
作品名:こらぼでほすと 拾得物10 作家名:篠義