比翼連理
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『アテナよ、忘れたとは言わせぬ。そなたの罪を。そなたが犯した罪を今、ここで、明白にしてもよいのか?』
冥王は残酷な微笑みを浮かべながらアテナの胸に見えない剣を突き刺す。
「それは一体……どういうことなのです?」
ハーデスは腕の中に眠るシャカを優しく見つめ、静かに微笑みを浮かべていた。
『ほう…忘れたと?くくっ…本当に?』
「この私が罪を犯したと?あなたはそう……おっしゃるのですか!?」
青褪めながらも、怒りに打ち震えるアテナの姿を聖闘士たちは黙して見守った。
この清廉潔白な女神が罪を犯すことなどあるはずがないと、信じて疑うことなど一度もなかった。 ゆっくりと聖闘士たちに湖底のように静かな瞳をハーデスは向けた。
『地上の正義と愛の代行者?くくくっ……はは!お前たちは本当にアテナがその力を持っていると思っているのか?本当に?』
ソナタガ手ニ持ツノハ、勝利ノ女神デハナイノカ?
正義ノ剣ハドコニアル?
罪人ヲ裁ク力ナド貴女ニアルノカ?
大地ニ豊穣ヲ齎ス、チカラハ?
大地ニ愛サレタノハ貴女デハナイハズ。
大地ヲ支配スルノハ貴女デハナカッタハズ。
「当たり前だろ!沙織さんが……アテナが罪を犯したなどと、デタラメ言いやがって!」
噛み付かんばかりに咆える星矢をハーデスが冷たく凝視する。
『知らぬ故の幸福だな。のう、アテナよ?そろそろ思い出しただろう。あなたの悪行を』