二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

比翼連理

INDEX|12ページ/79ページ|

次のページ前のページ
 

-5-

  ―――アテナ、私が憎いですか?私に与えられた力が。


 突如、がくりと膝折るアテナに驚き、周囲にいた瞬やサガたちが駆け寄る。
「どうなされたのです!アテナ」
「大丈夫か!?」
 はぁはぁと荒く息つくアテナはさらに顔面蒼白となっている。まるで何かから耳を塞ぐように両方の耳を強く押さえていた。
「私は…私は…っ!いやっ!!聞きたくないっ!!」


  ―――何故、貴方なのです!?地上は私が……支配する!


「一体、貴様は何をしたのだ!アテナに!」
 ぐっと奥歯を噛み締め、睨みつけるサガにハーデスは残酷な笑みを返した。

『心話にて教えてやったまでだ、己の犯した罪を。どうやら、やっと、思い出したようだな、アテナ?さて、貴女の答えは?』


  ―――今、冥界と事を交える訳には参りません。
   その申し出はお引き受けするほうが宜しいでしょう、父上?


  ―――しかし、アレの母親が納得するはずがない


  ―――では、ハーデスを敵に回すので?
   たった一神の為に必要のない血を流すのですか?


  ―――ううむ。だが、地上を任せるのはアレしかおるまい


  ―――地上のことなれば、どうぞこの私にお任せくださいませ


  ―――ならば、どうやって母親を納得させる?


  ―――納得させる必要などないのでは?
   攫わせれば良いのです。彼に。
   本当に欲しければ冥界の果てからでも飛んでくるでしょう。
   手筈は私が整えましょう



  ソウシテ貴女ハ地上ヲ手ニシタノデハナイノカ?
  無垢ナル者ヲ裏切ッテ。



「その者は―――5体の聖衣と引き換えに柘榴の実を5粒口にしたのですね?冥界の物を口にした場合は……冥界の掟に縛られ、従わなければならない」
 これ以上、蒼白になりようがないほど、血の気の失せた顔を上げたアテナは応えた。
「アテナ!?」

『善き答えだ。アテナよ。その潔さに免じて、一つ良いことを教えて差し上げよう。そなたが愚かにも“冥界の秩序”を乱したおかげで、冥府に幽閉していたティターン一族が地上へ逃れた。彼らは速やかに復讐を遂げに来るだろう』

 暗黒の渦がハーデスをゆっくりと包み、その闇に溶けていく。
「ティターン一族!?待って、ハーデス、貴方は―――」

『誰もそなたの味方にはならないだろう。アテナ、貴方は秩序を乱す神だからな』

 暗闇が空を覆いつくしたのち、やがて光が再び降り注ぐ。
 さわさわと、風が主なき花園を通り過ぎた。




作品名:比翼連理 作家名:千珠