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比翼連理

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 薙ぎ倒しても、薙ぎ倒しても押し寄せる、津波のごとくの敵の数。それにもまして、その異様な姿は人のそれではなく、怪異な冥衣を纏う冥闘士などはまだ可愛いとも思えるほど醜く、俗悪なものであった。
 何より、狂信的なまでの意志を感じ、一片の哀れみさえも浮かべず、残酷に人間を踏みつけては押し潰し、快楽に耽る姿は、雑兵や下位に位置する聖闘士たちには憎悪と恐怖の心を抱かせるには十分な効果を齎していた。
 十二宮前を守っている者たちが無残に散っていく姿をムウとカミュは目蓋の奥に焼きつける。
 悲しみも憎しみも怒りさえ―――今はただ、心の奥にとどめ、一気にムウはカミュを連れ立って敵陣の中央へと向かい飛翔する。敵が張り巡らせている結界を抜け、気づかれることなく敵陣の真只中に降り立つなどということを考えるなど、狂気の沙汰ともいえよう。
 こんなことをするのは後は恐らく黄金聖闘士の中でも鬼才を放つシャカくらいだとカミュは思っていた。
 どこか『不動』のイメージのあるムウが、このような奇襲作戦という無謀な提案をしたこと自体に驚きつつも、それを実行せざるをえないほど、敵は手ごわいのだということなのだろうと納得しているが。
 次元の狭間で二人は訪れる好機の瞬間を待った。
「―――わたしは罪深い男なのでしょうね、きっと。救える仲間の命をむざむざ見捨てるなんて」
 ぽつりとムウが呟いた言葉の意味が痛いほど伝わってきたカミュはただ押し黙った。次元の狭間から見える、朱闇に染まる聖域から一人、また一人と消えていく小宇宙……尊い生命。

―――この戦いに勝算はない。

 そのムウの言葉の意味が、やっとカミュに理解できた。たとえ、奇襲が成功しても、散っていった多くの人々の命は戻らない。いくらアテナとはいえ、その奇蹟の力をもってしても、これだけのおびただしい死者を甦らせることなど、ましてやハーデスの存在が明らかとなった今は不可能なこと。
 そして、奇襲が失敗すれば更なる人々の死が待ち受けているのだろう。白羊宮で迎え撃つであろう仲間たち。彼らの命すら、無駄に散らせてしまうかもしれない。
 どのみち、アテナの精神が不安定なこの時に、突然しかけられたこの戦いの行方は、聖域にとって好ましい結果は何一つないのだということを、ムウは最初からわかっていたのだろう。
「―――ムウ、おまえ」
「カミュ。敵に気づかれる前に意識を集中して小宇宙を高めてください。あなたの持てる力をあの者に放つのです。わたしは結界を張りながら、あなたの攻撃とともに奥義を放ちますから」
「……わかった」
 カミュは雑念を払い、臨界にまで小宇宙を高めた。ムウの小宇宙も同様に高まるのを感じながら、すべてをその一瞬に賭けた。



作品名:比翼連理 作家名:千珠