比翼連理
-3-
「アテナ…あれは……あの力は」
ポセイドンとアテナの加護の中、まばゆいばかりの輝きに目を眩ませながらも、来るべき衝撃に備え、小宇宙を燃焼させていたムウやサガたちは異変を感じ取り、口々に呟いた。
壮絶な光を放つ閃光を、暗黒の渦が中心から吸収するかのように広がっていく。まるで、それは輝く光の塵が渦巻く暗黒に呑み込まれていくようでもあった。
「――ハーデスだ」
驚愕のまま、呟いたポセイドンの言葉にアテナは息を呑むとようやく口をついた。
「ハーデスが…暴走を止めた…?」
周囲を暗闇に染め上げ、まるで突然、夜が訪れたように光を覆いつくしていく。それはまた、闇夜が光を愛しげに抱いたようにも見えた。
「アテナ…シャカは…….」
サガが恐る恐るといった風に尋ねる。ほかの者たちも固唾を呑んでアテナの言葉を待った。
重い時間だけが過ぎていく。
つらそうに俯いたアテナは、唇を噛み締め、小さく首を横に振ろうとした。だが、その刹那、確かな 『命』の存在を感じ取り、弾かれたように顔を上げる。
アテナに倣って、一斉に皆その視線の先を見つめた。暗黒に包まれた夜空は星ひとつ見えないままである。重たい沈黙のまま、見つめ続けた次の瞬間、星ひとつなかった夜空に小さな綺羅星が輝いた。
新たな銀河を誕生させたかのような尊い光が、すうと広がっていく。今度は柔らかな光が闇夜を包み込むように抱き締めていった。
「………!」
両の手のひらを口元に当て、感極まったかのように涙を浮かべるとアテナは走り出した。
そのアテナの姿に胸を熱くしながら、後を追っていく聖闘士たち。ポセイドンはその後ろ姿を見届けると海闘士を従えて、自分たちの領域へと戻っていった。