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Weird sisters story

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Lachesis 4




手にデータディスクを持つレイの足先は、どういうわけか進行方向とは違う方へ向かった。
それは咄嗟の出来事であり、レイ自身、理由などわからない。
ただ、一目だけでも見たかったというのが素直な感情だ。
無音の世界へと足を進め、以前見た時とずっと変わらない姿に言い知れぬ想いが詰まった。
彼の変わらない瞳を閉じた表情に、そっと瞳を伏せる。
「貴方は…このような場所で死すべき人ではない」
そう、失われるべき人間ではない。
まだ、やって貰わなければならない事がある。
「俺を止めるのは、貴方の役目ですから」
だから、生きていて欲しい。
レイは薄く自嘲した。
結局は最後まで我が儘を言って振り回すのだ、自分は。
生まれた時代が違っていれば、恐らくは涙と共に飲み込んだ本音を告げられるのだろうに。
左手を取った。
それに唇を寄せて何事か呟くと、レイはクルリと踵を返した。
そのまま、ドアが静かに閉まっていく。
誰の気配もなくなった部屋で、そっと青碧色の瞳が開かれた。






人気の少ない夜の工廠。
あの日・・・から働き詰めであった整備士は皆、疲労による眠気と倦怠感を持て余している。
レイは真っ直ぐ、ザクファントムへと足を進める。
昨日のうちに一番人影の少ない5番ハンガーへと搬送しておいたから、誰も目にも触れられずにここまで来れた。
パイロットスーツを引っ張り、指先まできっちり着込む。
工廠内をひとつ足音を立てながら歩く。
が、ファントムまであと1ブロックの所で、レイの足は思わず止まった。
居るはずのない人を、見つけたからだ。
「遅かったな」
トダカは壁に寄りかかっていた身体を起こすと、レイと向き合う。
「出撃か?」
「……特務だ。他言は禁止されている」
それだけ答えると、レイは再び歩き出した。
だがすれ違うか否かの所で、独り言のように呟く声が聞こえた。
「どうにも、あの3機のデータが尽く抹消されてるって噂だが」
ピタリ、響いていた足音が止まる。
僅かに振り返ったレイは、これまでにない程鋭い表情をしている。
「…何が言いたい?」
「さぁな。ただ、Sシリーズは本当にザフトの為に作られた物なのか」
その言葉が終わる前に、レイが目にも止まらぬ速さで銃を突きつける。
ガチャリと、重々しい音だけが響いた。
「いいのか?撃っても」
「この辺りのセキュリティ、及び監視システムは先程全て潰した」
「物騒な奴だ。だが止めておけよ。お前がその引き金を引くのなら、俺だって相当の対処をせざる負えない」
レイは無言を貫く。
まだその鉛の玉が撃ち出されていない事が、トダカの賭けに勝った証拠だった。
「お前も、撃ちたくないだろう。……俺もだ」
しばらく睨み合う。
まだその瞳から鋭さが消えない事に、軽い溜息をついた。
「俺はそんな野暮じゃない。…まだ死にたくないしな。心配しなくても、お前が危惧するような事にはならないと思うが」
「…では何故ここへ来た?」
「お別れの言葉を言いに来てやったんだ」
「下らない…」
そう言いながら、レイは銃を下ろす。
一応は逃がす気になったのか、いや、恐らくは処分を上へと委ねたのだろう。
時間も押してきている。
「言っておくが、言いに来たのは俺じゃないぞ」
「何?」
訝しむレイの前で、トダカは扉のスイッチを操作する。
ハンガー特有の重い扉が開く。
徐々に現れるザクファントムを見上げる形で、一人、少年が立っていた。
振り向いた、その瞳の色は。

「―――シン……」

絶望にも、救いにも聞こえる声で、気が付けばその名を口にしていた。


作品名:Weird sisters story 作家名:ハゼロ