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Weird sisters story

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Lachesis 7




パタン、とドアが目の前で閉じられても、暫くアスランはその場を動けなかった。
(パイロットがいなかった、だと?)
顔を背け、舌打ちをする。
掌を握り締めた。足は無意識に、ある場所へと向かっている。
議長室までの通路であるここは、何人もの軍人とすれ違う。
紫、白、黒の軍服、果ては評議会の議員すら居た。
ブレイズザクファントムの突然の脱走、それに伴うSシリーズ全てに関するデータの消失。
その所為で、様々な所にトラブルが発生しているようだ。
そしてこんな芸当が出来るのは、恐らくレイだけだろう。
だから彼は自ら率先して新型の開発に関わっていたのだろうか。
「クソッ」
怒りに、荒々しく壁を叩きつける。
鈍い痛みと、音が通路に響き渡る。

『レイが選んだのは―――』

いつかのシンの言葉が甦る。
そして、ふっと理解した。
「そういう事か…」
レイは選んだ。
確かに、俺を。
だがそれは、何のものでもない、レイを止める最後の手段として、俺を選んだのだ。
だったら。
「止めてみせる」
こんな事をしても、何もならない。
だから止める。いや…助けるのだ。
あの時、まだ意識のはっきりしていなかった俺に言った言葉を信じるなら、レイはまだ救いを求めている。
運命から、抗おうとしているのだろう。
無意識のうちに左手を掴んだ。
この傷は、恐らく一生消す事はないだろうから。






意識は覚醒したが、下手に瞳を開ける事などしない。
小さく指先や足を動かしてみて、意思通りに動けるか確認する。
だが錠でもかけられているのだろう。動くにしてもほんの少しだ。
次に聴覚を尖らせる。
物音からして、この部屋に居るのは二人。
一人は女性だろう。
何か筆記するような音も聞こえる。紙の捲れる音も。
独特な薬品の臭いから、医務室である事は直ぐに知れた。
とりあえず、生かされているという事は、直ぐに殺すつもりはなかったらしい。
漸く、レイは瞳を開ける。
タイルで区切られた、真っ白な天井が見える。
首を動かすと、看護服に身を包んだナースが何かの結果をボードに書き写している。
「…ん?」
だがナースの後方、レイからは死角となっている場所から声が聞こえる。
やがて本を閉じる音が聞こえ、椅子を立つ音、カツカツと足音が響く。
「気が付いたか?」
そう声をかける男は、顔の半分を覆うマスクを被っている。
その事実だけでそれが誰だか直ぐに判ったが、あえて口にはしない。
ようやくレイの瞳が開いている事に気付いたのか、ナースが驚いたようにこちらを見ていた。
その視線に、男は口を開く。
「数値に異常は?」
「あ、えっと…」
言われて、直ぐに何かの機械をチェックする。
一通り目を通して、ナースは男の方を見た。
「特には…」
「だったら君はもういい。下がってくれ」
「あっ、ハイ」
パタパタと走る音、そしてドアの向こうに、看護服は消えて行った。
「さて、まさか脱走兵があのレイ・ザ・バレルだったとはな…」
名指しで呼ばれても、レイは特に驚かない。
シンがレイの顔を知ってスパイとして送られてきたのだ。
顔は既に割れているのだろう。
「君の事だから、私の事も知っているだろう?」
「無意味な雑談をする気はない。…ネオ・ロアノーク」
「想像通りの言葉だ」
やけに上機嫌に答える男に、レイは少しだけ眉を寄せた。
「ディスクは調べたか?」
「当然。被弾時に壊れなくてよかったよ」
それを聞くと、レイは僅かに安堵する。
情報の流出、それも目的だったのだから。
「ザフトは凄いねぇ、あんなバケモノを次から次へと」
「そのバケモノのうち、3機がここにあるだろう」
「…流石、情報が早いな。Sシリーズ…だっけ?ウチの開発部が目を白黒させて見入ってたよ」
唯一見える口元に笑みを作る。
何故だかあの人を思い出しかけて、レイは顔を背けた。
「…俺をどうするつもりだ」
「それはこちらが聞きたい。ザフトきってのエースが、なぜよりによって脱走など?」
疑われているな、と感づく。
当然の対処だ。
「俺のパーソナルデータは調べただろう?そこに全て書いてある」
「………あんなの、どうにでも改竄できると思うが」
「ならば俺自身で試せばいい」
平然とそう言い捨てる様に、ネオは呆れたような息を漏らした。
以前通信越しに話した事があるが、その時持った印象より更に手ごわい。
「お前はラボの事を知ってるんだろ。どんな目にあうか、判らんでもないくせに…」
「元より、覚悟している」
「……よく言うよ」
片手を腰に当てると、深く息をついた。
「お前の事は今、上に取り合ってる。直ぐにどうという事もないだろう。生体パラメーターに異常はないようだし…取り敢えずは、営倉だな」
言われた言葉に、レイはそっと瞳を閉じる。

もう、戻れないのはわかっていた。


作品名:Weird sisters story 作家名:ハゼロ