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Weird sisters story

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Atropos 9




室内灯が微かに落とされた。
浮かび上がるパネルに、この近隣を模式化した地図が現れる。
「偵察隊によると、敵軍は北緯30度の地点まで南下、各諸島のザフト軍基地を起点にしている。現在確認された所では…まぁ、そこにも書いてある通り、かなりの量と様々なタイプの機体が投入されている。いわゆる、総力戦というやつだ」
ネオは難しい顔をして、更に指示棒を滑らせる。
「我が軍はこれの殲滅を命じられた。ちなみに、援軍はほぼ期待できない」
その一言にその場の空気が重くなる。
自分たちの力だけでこの大軍を相手にしなければならないと、はっきりと告げられたも同じだからだ。
だがその流れを断ち切るようにネオは口を開く。
「しかし、その条件は敵も同じだ。あまり悲観的になるな」
少しだけ口元を緩める。これから戦闘に赴く兵士を緊張させる事は避けたかった。
「以上が大体の概要だ。なお、全体の指揮は私が執るが…各隊への緻密な指揮は随時、レイに任せる。いいか?」
全員の視線がレイに集まる。
先の戦闘において見事ザフトの軍を撤退させたその腕を見込んでの事だ。
レイはふっと瞳を伏せるとぽつりと零す。
「了解した」
「よし。皆、これからはレイの指示に従ってくれ」
ネオが場を空ける。レイは席を立ち、そこに移った。
パネルを操作すると、赤い敵軍のマークが地図上に現れる。
「今回の戦闘ではギリギリまで敵に悟られないように近づき、確実に敵機の急所を叩く。もし撃ち損じても深追いはせず、地形や雲を利用し距離を置く事を第一に考えるべきだ。特に…この2機は、」
ピッと音が鳴り、セイバーとインパルスが映し出された。
「スペックが違いすぎる。捕捉したのなら直ぐにその場から離脱しろ」
その言葉に、えー?と不満の声が上がる。
見れば、机に凭れかかっているアウルが口を尖らせていた。
「今度こそアイツとやれると思ってたのに」
「同感だな。逃げ回った所で、勝てる奴だとは思えない」
アウルの隣に座るスティングもまた、苦言を呈してきた。
それに、レイはフッと笑う。
「なら、このインパルスはカオスとアビスで落として貰おう」
言うと、みるみるアウルが笑顔に変わる。
「それ、面白そうじゃん!」
「…楽しみだな」
スティングも同時に頷いた。
と、その横でぼぅっとしていたステラが呟いた。
「ステラは…?」
「ガイアは前線に出る。足場は近くの島を使えばいい」
「敵…倒すだけ?」
「殲滅、だ」
「うん、わかった」
ニッコリとステラも了承を返す。
あと、残る問題は。
「セイバーは、俺が相手をする」
途端に、室内がざわめいた。
当然だ。あのアスラン・ザラの操るセイバーと戦うと言うのだから。
「大丈夫かよ。ウィンダムだろ?お前」
アウルが訊いてくるが、レイは淡々と返した。
「OSを弄ってある。それに装備も少し変えた。問題は無い」
「…専用機ってコト」
ふーん、と息をつくアウルを見遣って、更にレイはパネルを操作した。
地図上に今度は味方の青いマークが現れた。
「では、これから隊の編成に入る」
皆が集中して言葉に聞き入っている中、レイの様子を見ていたネオが静かに顔を伏せた。






ミーティングは終わったが、作戦開始まで時間がある。
機体の最後の微調整でも手伝おうかとハンガーへと足を向けた時、ふと通路の先に見慣れない人影を見た。
壁に凭れていたその人は、レイの姿に気付くとゆっくりと対峙した。
「その服も中々、様になってるな」
掛けられた言葉の意味が理解できず、レイは訝しむ。
目の前に居るのは隊長服に身を包んだ男だ。
近隣の基地から派遣されたのだろうか。
「どんなもんかと思っていたが…上手くやってるみたいだな、レイ」
名乗りもしないのに名指しされ、僅かに身構える。
あれだけ目立った事をしたのだから、知らない人間に顔が割れていても不思議ではないのだが、どうにもこの男からは何か別なものを感じた。
何より、名を呼ばれる感覚がおかしい。
「…誰だ?」
そう誰何すると、ん?と首を傾げる。
ややあって、妙に納得した声を上げた。
「なるほど、例のアレか。…まったく」
そう言うと、胸のポケットから一枚の紙切れを取り出した。
そのままレイの前に差し出す。
「ほら、お土産だ」
「…どういう意味だ?」
その問いには答えず、紙切れを無理矢理レイに押し付ける。
男は口元を緩めたままレイの頭をぐしゃぐしゃに撫でると、ふと真顔になって言った。
「アイツはもうボロボロだ。自分の心を殺しちまってる」
「…?」
「早く戻ってやれ」
俄かに微笑んで、男は背を向ける。
わけが判らず固まっていたが、去っていく足音を聞き届けて再び訊ねた。
「お前は誰だ?」
男は、ゆっくりと振り返った。
「このままだと、お前らは互いに互いを殺し合わなければならなくなる」
返ってきた言葉は、問いかけとはまた別のものだ。
「そうなる前に…よく考えてみるんだな。その右腕の傷跡が何を意味するのか」
驚いて、息を呑んだ。
何故知っているのかと。
瞳を見開くレイを後目に、男が今度こそ完全に背を向けた。
「待っ…!」
「俺の名前か?」
問う前に逆に言われる。
是、と答える前に、あちらが先に口を開いた。
「お前の昔の上官だ。ま、かなり昔の話だから、忘れられても仕方がないがな」
そのまま通路の角を曲がって消える。
レイは顔を顰めた。
上官、と聞いても、当てはまる記憶は無い。
ふと、いつの間にか握り締めていた紙切れに気が付いた。
それをそっと開いてみる。
書いてあるのは、ただの数字。
だがそれが何を意味しているのか判った時、レイは再び男が去って行った先を見返していた。


作品名:Weird sisters story 作家名:ハゼロ