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Weird sisters story

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Clotho



Weird sisters story


視界の隅に映る画面が突如として鳴り響いた。
欠片だけ見えた文字は、明らかに徴集命令のものだ。
身体を起こし、地に足をつけようとする。
だがそれは、悪戯好きな猫に遮られた。
浮いた身体を再びシーツに押し付けられ、伸ばした腕にやんわりと絡みつき、見えないように瞼にキスをしてレイの視界を遮った。
「……っ、シン」
堪えきれずに呼ぶと、嬉しそうに目が細くなる反面、口元は妖艶に弓形に成った。
戯れに首筋に噛み付かれる。
危うく声を出しそうになり慌てて抑えた。
(引っ掻いてやろうか…)
そんな事を思ったレイが捉われる指先に力を込めた時だった。
「お兄ちゃーん!居るんでしょ!?」
ボタン一つでドアが開くこの時代に、わざわざガンガン音を立ててまで呼びかける者はもはや貴重だ。
コールボタンがある事を知らないわけではないだろうし、第一彼女は。
響いた音に思わず顔を上げた隙を狙って、レイはベッドからするりと抜け出した。
その際、邪魔な黒髪を蹴飛ばす事も忘れずに。
身なりを整えつつドアに向かうレイに、忌々しげな視線が絡む。
それを綺麗に無視し、未だ拳で叩き何事か喚いているドアを開けた。
「っ!」
開けた瞬間、驚いた瞳があった。
そして直ぐに頬が赤く染まり後退する。
マユ・アスカは今まさに、手にしていたデータボ−ドでドアを殴ろうとしていた状態だったのだ。
「徴集令か?」
「あっ、ハイ、そうです」
上げていた腕を下ろし背中に隠して、俯きながらそう答えた。
けれど次の瞬間にはバッと顔を上げる。
「緊急です。中央ブロックに早急に集まるようにと…連絡があったはずですが」
「……あぁ、済まない」
他に何と答えて言いかわからず、曖昧な言い回しになる。
後ろでクスクス声が聞こえてきて煩わしげに眉が寄った。
「あの、こ、こんな時に言うのも…あれなんですが」
マユは兄とは正反対の藤紫色の目を輝かせてレイに詰め寄る。
「今度の休日、お暇ですか?」
突拍子も無い問いかけに、レイはただただ瞳を丸くした。
しばし戸惑って、徐に口を開いた時。
「じゃぁ俺たち徴集令かかってるから」
と、レイの口を背後から片手で押さえ、笑顔で引っ張っていく者が居た。
「ちょっとお兄ちゃん!今わたしが…」
「緊急なんだろ?残念だけど、こんなトコで時間くってる暇なんてないの」
呆れた、と頬を膨らませるマユだが、右手を掴まれ引っ張られる形で後を追うレイが振り返った。
そして仕方が無い、といった苦笑を零す。
普段は滅多に見られないレイの笑顔だけに、マユはそれだけで赤くなり、堪えきれずに嬉しそうに微笑む。
去っていく二つの影とは異なる方向へと足を向け、手にしていたデータボードをギュッと握り締めた。





隣から痛いくらいの視線を感じる。
理由はわかっていたし、今ここでどういった行動をしなければならないのかもわかる。
それでも敢えてそうしないのは子供じみた理屈だ。
「シン」
「なに?」
「とぼけるな。わかってるだろう」
舌を出しそうな嘲笑で答える。
「わかんない」
すると、溜息のような長い息が吐かれた。
そしてそそぐ鋭い眼力。
「正式な場だ。襟元を正せ」
「やだ。苦しいもん」
「文句を言うな」
シンはレイの表情を盗み見する。
これ以上やると、たぶん今日一日…いや、一週間は口を利いてくれなくなると踏み、仕方なくホックに手を伸ばす。
「…苦しいんだけど」
「我慢しろ」
「だいたい何?何でいきなり呼び出しがかかるわけ?」
「新たに上官が配属されたと聞いている」
シンはどうでもいいといった顔をした。
そんな事より彼は、楽しみにしていたオフの時間を奪われた事に対する怒りが勝っていた。
「こんな時期に来るなんて…特務フェイス?」
「だろうな。でなければこんなに大勢を呼び集めたりしない」
シン達の周りには、同じような役柄の軍人が集まっていた。
そのいずれも赤を纏っているから、要するにエリートだけ集められる程凄い人が来る、といった所か。
レイが並ぶから仕方なく最前列に位置しているシンが、誰の目に見てもわかるくらいの溜息をつきた。
直後、衆目を考えろとレイから小突かれる。
口を尖らせるシンだが、聞こえてくる足音にふと目を走らせた。
先ず現れたのはデュランダル議長だった。
あれだけざわめいていた一同が揃って額に手を当てた。
それに微笑って答える議長だが、その後ろについてきたもう一人の方がシンの気を引いた。
以前、地球軍のブラックリストに載っていた、その事実と共に。


作品名:Weird sisters story 作家名:ハゼロ