衝動SSまとめ(ヒロ清)
ヒロ←清
2012/3/8更新
先生の片思い。
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島に来て、もう随分と経った。
島にも、エコな暮らしにも、ここの人達にも、慣れた。
自分でも順応力には自信がある。
最初からなんとかなるだろうとは思った。
そして思ったとおり、なんとかなっている。
だが、こればかりは予想外だった…。
いつの間にか恋をしていたのだ。
良い年して・・・
純粋に・・・
男相手に。
ヒロに――
はぁ・・なんてこった。
一応、『若い』、『イケメン』が売りなのだが、それはあくまで書道界の中においてだ。
一般的ならばそこそこ年もいって、そこそこな顔でしかない。
東京に居た頃はそれなりに女性から話しかけられもした。
連絡先を交換したりと、まぁそれ以上の関係にはなかなかならないが、連絡は貰っていた。
だが、あの事件をキッカケにそれらは一切無くなった。
所詮はその程度ということだ。
そんな男が、男に恋をした。
なんという高い壁だろう。
まぁ叶うとは思っていないが…
あまりの無謀な恋に笑えてくる。
俺はそんな思いを抱えながら、毎日を過ごしていた。
高ーい壁は毎日ちゃんぽんと共にやってくる。
「せんせーーーちゃんぽん。」
まだ気持ちに名付けられる前。
こうして来る度に俺は瀕死の状態で、随分と迷惑をかけた。
だが、今こうして『恋』と名付けられた気持ちを抱えてしまった状態では、
とてもじゃないが、無理だった。
「おう、・・・ヒロ。」
「最近先生、元気だな。」
「俺の自己管理をナメるな。」
「よく言う。」
あははっと暢気に笑っているが、俺の自己管理は本当に優秀だと関心する。
そうでなければ、お前はとっくに俺に押し倒されてるんだぞ・・・
「先生、なるは?」
「ん?あぁ今日は忙しいんだと言いに3、4回は来たぞ。」
「それは確かに忙しいな。」
「お前も食ってくだろ?お茶でいいよな?」
「お茶しかないくせに。」
「・・・よし、自分で淹れろ。」
「・・・・まぁ、かまわないっすけど。」
「あーーヒロのはそこだ。」
「りょーかーい。」
この家には湯のみだけは何個もある。
なる、美和、タマ、そしてヒロのだ。
全員がいつの間にか持参して置いていったのだ。
少し前、俺は意味も無くヒロの湯のみを手にしていた。
今思えば、恋する乙女モードというやつだったのだろう。
そうして、何をするでもなくただボーッと湯のみを眺めていた。
そんなとき、ヒロが来て俺は思わず湯のみを落とした。
・・・いや若干放り投げた。
案の定、湯のみは割れた。
それほどヒロは気にしていなかったのだが、
俺はいたたまれない気持ちでいっぱいになり新しく買った。
ヒロは俺が急遽買った新しい湯のみを気に入ってくれた。
『ありがとうっ』―――
『なんか美味い気がする』―――
思えば、あの時に気付いたんだ。
この気持ち。
「先生も淹れる?」
「あぁ、頼む。」
「・・よっと、」
「さーんきゅ。」
「「美味い。」」
ははっ・・ハモった――
「ねぇ、先生。
ちょっと相談聞いてくれる?」
「・・ん?なんだ?」
「俺さ・・好きな子出来た。」
「・・ぇ?」
俺の高い壁が崩れる音がした――
end
作品名:衝動SSまとめ(ヒロ清) 作家名:おこた