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らんぶーたん
らんぶーたん
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小説インフィニットアンディスカバリー

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「僕と年の変わらないような子までいるんだよ。あー、僕も月印が使えたらなぁ……」
「それは言わない約束でしょ?」
「そうだった。あー、でもなー」
 そうこうしているうちに、戦いを終えた解放軍の面々がやってきた。さっきの少年も一緒だ。隣にいる女性が、カペルがアーヤと呼んでいた人だろうか。その二人が話しかけてきて、一緒に逃げてきた村の老人が応対している。
「あの、ショプロン村のみなさんですよね」
「そうですが」
「私たちは解放軍です。ショプロン村の鎖は、先日、私たちが解放しました。もう村に戻っても大丈夫ですよ」
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます。ありがとうございます!」
「……アーヤ、でもいいのかな。このままこの人たちだけで帰らせたら、また同じようなことになっちゃうんじゃない?」
 カペルが少女に話しかける。カペルの言う通りかもしれない。鎖を斬ってすぐにモンスターが大人しくなるのなら、私たちが襲われることもなかったはずだ。
「それは……そうね」
「送っていくわけにはいかないぞ。俺たちにそんな時間はない」
 二人の会話に、身の丈ほどもある大剣を持った男が割って入ってきた。よく見れば、彼もまた自分と同じ年頃だ。先ほどの子供たちやカペル、その隣にいる少女もそうだが、解放軍は、想像していたような屈強な傭兵団というわけでもないらしい。
「カペル、目的を忘れたのか? 俺たちは月の鎖を斬るために戦っているんだ。一刻も早く鎖を斬ることがこの人たちのためにもなる。それぐらい、お前にもわかるだろ」
「それはそうかもしれないけどさ……」
 不服そうに口を尖らせるカペルは、自分たちのことを新月の民とわかっていながらも心配してくれているらしい。
「シグムント様、何とかなりませんか?」
 カペルの隣にいたアーヤという少女が、懇願するように後ろにいた男に尋ねた。
 彼が光の英雄シグムント。白銀の甲冑に赤いマントを翻し、何もせずとも、その佇まいだけで精悍さを感じさせる彼は……。
 驚いた。その顔立ちが、雰囲気は違えど、カペルと瓜二つだったからだ。
「双子なのかな?」
 レイムが小声で聞いてきた。ファイーナにわかるはずもない。わからないが、彼がカペルと同様、自分たちに同情的かもしれないとファイーナが期待したのも、二人がそっくりなことを考えると自然なことだったかもしれない。
 しかし、そのファイーナの期待はすぐに彼自身の言葉で否定されてしまった。
「フェイエールへ向かう」
「そんな!?」
 アーヤが声を上げるが、シグムントは何も言わない。カペルも押し黙ったままだ。
 新月の民を救おうなんて奇特な人がいるはずもないことは重々承知していたはずだった。勝手に期待を抱いて勝手に失望しただけだとファイーナは自分に言い聞かせるが、気分が重くなるのは否定できない。そして、また襲われたらと思うと身体が竦んでしまう。
「……じゃあ、僕が送っていきますよ。僕なら、いなくなっても困らないでしょ」
 思わず顔を上げる。言ったのはカペルだった。
「駄目だ。お前は次の戦いに連れていく」
「駄目って……。だったら、ここでお別れですね。僕はもともと解放軍の一員ってわけでもないですし、どうせ戦力外だし。これからは別行動ってことで」
「カペル!?」
 アーヤが抗議の声を上げる。
「ほんとは面倒だけどね。痛いの嫌だし。でも、見捨てたら寝覚めが悪くなっちゃうでしょ。ね、アーヤ?」
「あっ……」
「というわけで、今までお世話になりました」
 カペルは、解放軍を離れて自分たちを助けてくれると言ってくれている。彼が何故そこまでしてくれるのかは、ファイーナにはわからなかった。
 それはシグムントも同様なのか、表情は変えないまま黙り込んでしまった。カペルもまた、返事を待って黙っている。こうして黙って並んでいると、本当に鏡に映したように二人はそっくりだ。
「……七日だ」
 口を開いたのはシグムントだった。
「えっ?」
「カペル、七日で帰ってこい。いいな」
「……帰ってこい、ですか」
「ああ」
「わかりましたよ。七日ですね」
 シグムントにそう返答すると、カペルはこちらを見てニッと笑った。視線が合い、ファイーナは頬が熱くなったような気がして思わず顔を伏せてしまった。


 一人で護衛をするということには、多少の不安は残っているが、彼らだけで行かせるよりはましという見方もある。いずれにせよ、放っておくことは出来ないと感じて自分から言い出したからには、やるだけやるしかないとカペルは考えていた。
 本当は、シグムントが考え直してくれないかと期待していたのかもしれない。他人に期待するなんてらしくないなと自嘲しながらも、いくらか失望を感じてしまうのもまた本当の気持ちだった。
 だから、アーヤがこう言い出したときは驚きもしたが、嬉しくもあった。
「わ、私も行くわよ!」
「……なんで?」
「あんた一人で行かせたら逃げちゃうでしょ!」
「信用無いなぁ」
「カペルなんだから、当たり前でしょ」
「また随分とひどいおっしゃりようで……」
「よろしいですか、シグムント様?」
「ああ。アーヤ、君に任せる」
「ありがとうございます!」
「あーあ、せっかく逃げ出すチャンスだったのに」
「バカなこと言ってないの!」
 理由はともかく、彼女が来てくれることは心強い。道中のモンスターはここに来るまでにあらかた片付けてはいたし、これならなんとかなりそうだ。
 不安な顔を並べている村人たちを鼓舞する意味も込めて、カペルは努めて明るく振る舞った。
「じゃあ皆さん、行きましょう!」
「……あんたたちだけで、本当に大丈夫なのかい?」
「大丈夫ですよ、たぶん」
「たぶんって、あんた……」
 村人達を促し、カペルとアーヤは最後尾につく。さっき助けたファイーナという少女が弟と一緒にいる姿が見えた。
「でも、あんたがこんなこと言い出すなんてね。どういう風の吹き回し?」
「言ったでしょ? 寝覚めが悪いのが半分、逃げ出したかったのが半分、ってところかな」
「バカ……ふふふ、まぁいいわ。ありがと、カペル」
「ん? そこでアーヤがお礼言うの?」
「いいから行くわよ!」
「そうそう、行くよ、カペル!」
「行っくよー!」
 気がつけば、足下にはルカとロカがいた。必要以上に元気なのはいつものことだが、今はいつにもまして機嫌が良さそうに見える。
「何、二人も来るの?」
「シグムントがついていけって」
「おめつけやく、だって!」
「ああ、そう……」
 さすがは光の英雄。子供の焚きつけ方もご存じのようで……。それで張り切っている二人は、カペルたちを追い越して先頭に行ってしまった。
「カペル、どしたの?」
「ああ、うん。なんだかんだで気を回してくれているんだなぁと思ってさ。お目付役っていっても、ようは援軍でしょ?」
「そりゃ、見た目だけそっくりな誰かさんと違って光の英雄だもの。優秀なリーダーは部下への配慮を忘れないものよ」
「ですよねー」
 アーヤも僕に配慮して欲しいものだと、カペルは切実に思った。