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加賀屋 藍(※撤退予定)
加賀屋 藍(※撤退予定)
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平和島静雄についての考察

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「こんばんは」

池袋という、人口の多いロケーションに在ってなお、細い道を一本入った場所に、知る人ぞ知る地下のバーがある。
日頃からあまり客が多くない店ではあったが、饗される酒と料理は周囲の一ランク上。
そこに集まる人種ゆえに、少しこの街を知っている、そして保身を知る人間なら入店を避ける類いの――人を選ぶ店であった。
そこで女が一人、今日の出来事の憂さ晴らしにカウンターの隅で持ち手の細いグラスを傾けていると、待ち合わせでもしていたように親しげに声を掛けてきた男がいた。
「こんばんは、鈴本彩加さん」

……今日はもう、一人にしてくれと言ったのに!
昼間に人間の常識を超えるものをみてしまったために、彼女は昼間からずっと悪寒に捕らわれていて、誰かの相手をしている気分ではないのだ。
知らない声だったがどうせ組の関係者だろうと、今日は遠慮してくれと言う気で、彼女は煩わしげに隣に立った男を見上げた。
そして、その顔を認識し、その美人の部類に入る顔を驚きに染めた。
「お、折原臨也……?」
そこには場違いにあまりにいつもどおりの、黒いダウンジャケットを来た臨也が笑んでいたのだった。


「あれー、俺の事知ってるんだ?鈴本さん。もっとも、ここの組の関係者なら当然かな。じゃあ、自己紹介はいらないね」
折原臨也は馴れ馴れしく、彼女の隣の席にするりと滑り込んでみせる。彼女に拒絶する間を与えない、絶妙のタイミングで。
一人で飲みたいと頼んだために、バーテンダーは離れた位置にいて、彼女は会話を余儀なくされた。
「何故、貴方が私に会いに来るの?」
「ちょっと興味があってね。あのシズちゃんを凹ませられる人間に」
「『シズちゃん』って、平和島静雄?」
この二人が犬猿の仲であることは、少しこの街の事情に詳しい人間なら誰でも知っていることだった。
なので、彼からその名が出る意味を彼女は考えようとしたのだが……。
「そうそう。……いやぁ、君は凄いね!あのシズちゃんに言いたいことを言えるなんて、大した勇気の持ち主だ!思わずどんな人間だか、この目で確かめたくなったよ」
今日は奢らせてくれないかな? などと、思いもよらぬ賞賛を向けられて、彼女は奇妙さと薄気味の悪さを感じていた。