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こらぼでほすと うまうま

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「やらっっ。もう、でりゅっっ。」

 汗だくで、出口に辿り着いたら、ニールが手を伸ばして確保してくれた。ちょっと休憩な? と、缶ジュースを渡したくれて、そこのベンチに座りこんだ。

「にゃぜにゃ? にゃぜ、おりぃは、あんなものに、ほんりょうされるにゃ? 」

「そりゃ、おまえさんが小さいからだ。楽しくなかったか? 」

「つかりぇた。」

 汗を掻いたから、ニールがタオルで拭いてくれた。それから、ジュースのプルトップを開けて飲ませてくれる。全部は飲み干せないから、残りが、ニールの分だ。

「俺が、もうちょっと動けたら遊園地へでも連れていってやるんだけどな。」

「じかいは、そうしゅるぅ。おおきいほうにゃら、いっしょにやりぇる。」

「そうだな。いつもの大きさなら、どれでも乗り放題だ。」

 以前、一緒に遊園地へ行ったことはある。あの時も、Gのかかるものは乗らなかったが、それなりに楽しかった。だが、こうやって、だっこされたり世話を焼かれるのは、このサイズの特権でもある。

「にーるぅー、ぶらんこ。」

「はいはい。」

 目に付いたブランコを指差したら、だっこして、そのまま乗ってくれた。しっかりしがみついとけよ? と、言われて両手両足で、ニールにしがみつくと、かなり大きく漕いでくれた。

 


 しばらく屋上で遊んで、屋内に戻った。そろそろ気温が上がってきたからだ。かなり汗を掻いたので着替えをさせる、と、二ールが子供服の売り場へカートを進めた。カートにも、子供を乗せられる。このほうが疲れないから、俺から言い出した。適当な子供服を買うと、二ールが、俺の前に顔を出す。
「さて、ティエリア。リクエストを聞こうか? 」
「にゃんだ?」
「作って欲しいもんがあるんだろ? 」
 朝から、そう言っていたから尋ねてくれた。
「ほっちょけーき。くりぃーむふわふわでぇ、いちごがのってりゅのぎゃ、たびたい。」
 以前、アレルヤと出かけて食べたことがあるのだが、二ールに作ってもらったことはない。刹那から聞いたところによると、二ールのは、ふわふわで、とても美味しいという。俺は、それを作ってもらったことがないのだ。ここ数年、何度か降りて、二ールと顔を合わせていたが、ねだったことがないし、俺がそういうものを食べるということを、ニールは知らない。
「あれ? おまえに作ったことはなかったのかな? 」
「にゃいっっ。せちゅにゃにきいた。」
「わかった。それなら簡単だ。ついでに、プリンもつけてやるよ。」
 昼飯は、それでいいんだな? と、確認されて大きく頷いた。いつもは、そんな、子供の食べるものなんて、と、バカにしていたのだが、こういう時なら恥ずかしくない。だいたい、刹那が作ってもらっていたのに、俺にはなかったのが、非常に不満だ。それから、二ールは、携帯端末を操作して、どこかへ連絡した。
「・・・・あ、刹那? 昼飯なんだけどさ・・・・え?・・・ああ。そっちへ帰るけど?・・・うん・・・・うん・・・わかった。でも、おまえ、一度は戻るんだよな? デザート、冷蔵庫に入れとくからな?・・はいはい・・・」
 携帯を閉じると、「刹那たちは外出するんだと。」 と、言って歩き始めた。
「せちゅにゃはいにゃいのきゃ? 」
「いや、今はマンションにいるよ。今日は、ティエリアとデートなんだから、邪魔者はブランチに外出するってさ。」
 なるほど、と、俺も頷いた。いつもなら一緒に食事するだろうが、今日だけは遠慮してくれるらしい。当たり前といえば当たり前だ。刹那は、つい先ごろ、ニールを一日独占したのだ。俺の時は遠慮するのが筋だ。だが、まあ、あいつも、そういう気遣いができるような大人になったのかと思うと笑えてしまう。


 イチゴだけじゃなくて豪華なホットケーキにしよう、と、ニールは果物を、たくさん買い込んだ。それから牛乳と卵、バニラエッセンス、小麦粉、バター、メイプルシロップなんかをカートに放り込んだ。
 自転車で五分も走れば、すぐにマンションだ。鍵は持ってきたから、それで入る。雑然としていたが、事後を匂わすものはない。
「洗濯機まで回してあるのか・・・・ちゃんとやればできるんじゃねぇーか。・・・はい、ティエリア、シャワーを浴びて来い。」
 買ってきたものを広げて、そこから着替えを取り出した。その間に準備するつもりらしいが、それなら、ニールも着替えればいいだろう、と、言ったら、笑われた。
「どうせ、料理すると、また汗を掻くからさ。俺は、それからでいいよ。」
「にゃら、おりぃも、そりぃからでいい。」
 だいたい、俺の今の身長では、シャワーノズルを設置しているところまで手が届かない。
「ああ、そうか。じゃあ、ちょっと待っててくれ。」
 説明したら、ニールも納得して、料理に取り掛かる。アレルヤも、そこそこ料理する。ヴェーダで過ごしていた時は、時間があったから、その腕を磨いていた。あの時は、身体がなくて食べられなかったのが、非常に残念だった。 アレルヤとニールの作るものの共通項は、誰かのために作っているというところだ。だから、食べ易いように、相手の好みに合うように考えられている。

 プリンを型に流し込み、そこにカラメルソースを落とす。その粗熱が取れたら、冷蔵庫に放り込む。ふわふわのホットケーキというのが、どういうものなのか、俺は見たくて、食卓の椅子によじ登った。
「ふわふわにするのは、ベーキングパウダーを少しだけ入れるんだ。パンケーキだと、これを入れないんだけどな。そっちは食わせたろ? 」
「わしゅりぇた。」
「まあ、時間経ってるもんな? 」
「てちゅだう。」
「じゃあ、バナナ剥いてみるか? それから、ブドウも。」
 はい、と、果物と皿を食卓に置かれた。そこには他にもリンゴやオレンジ、グレープフルーツなんかも置かれている。こちらは、ホットケーキを焼いている合間に、ニールが飾り切りにしていく。四年も地上で主夫をしていると、こういうことが上手くなったと言った。桃は、細かく刻まれてゼラチンの入ったタッパーへ放り込まれた。それも、すぐに冷蔵庫に入れられる。ホットケーキは、すぐに焼きあがるが、さらに、何枚も焼いているので、ちょっと止めた。
「にーるぅー、そんにゃにたびるのきゃ? 」
「違うよ。あいつらのおやつ。」
 刹那たちの分も作成しているのだと言う。そこまでしなくても、と、思うのだが、ニールは、そういう人間だ。せっかくなら、と、作ってしまう。分け隔てなく、俺たちの世話をする癖がついているから、そうなるらしい。
「はい、終了。後は、飾りつけだな? やってみるか? 」
「やりゅっっ。」
作品名:こらぼでほすと うまうま 作家名:篠義