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こらぼでほすと プール1

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「おまえこそ、なんで、また現れてるんだよっっ、この変態ストーカーっっ。てか、俺は、ゾウリムシか? ああ?」

 怒鳴り合っている変態とおかんは、無視して、ライルは、おかんの背後の人間を確認して、ちょっと笑って手を振った。元カレが、笑顔で、こちらに手を振っているからだ。


 さっさと買い物して、弟の元カレに待って貰ったカフェへ引き返した。道案内がてら、寺へと戻るのに、相手は、「荷物を持ちましょう。」 と、スーパーの袋を、ニールから取り上げた。

「大した重さじゃないから。」

「いえ、お身体を悪くされているんでしょ? ライルから聞いてます。」

「そんなことまで報告してんのか? あいつ。」

「こちらに降下してからメールを、たくさん貰いました。直接、顔を見るのは、久しぶりです。・・・・・まさか、CBにいらっしゃったとは思いませんでした。」

「あーうん、まあ。・・・・てか、あんたもカタロンの幹部なんだろ? 怪我とかなかったのかい? 」

「まったくとは言いませんが、指揮艦に搭乗していたので、ライルほどのことはありませんでした。ですが、生きてらっしゃったのは驚きました。ライルからのメールの第一報が、それで、こちらも驚きました。」

 CBに潜入する前に、その話は聞いていた。それが、ようやく事態が収束して地上に降りたら、兄が生きていて、びっくりしたらしい。兄が亡くなっていたと悲しんでいたライルは、クラウスに、組織に入る前に、そのことは話していたらしい。だから、まず第一報で知らせたのだ。

「俺も生きてるのが不思議なぐらいだったからさ。・・・・・敢えて、生きてることは告げなかったんだが・・・・怒ってただろ? 」

「ただ驚いたとだけ書かれていました。あなたの考えも分かります。ライルは、少し甘ったれなところがあるから、退路を絶つためにおっしゃらなかったんでしょ? それは正解だと、私も思いますよ。」

 生きていると判ったら、途中で投げ出しそうだから、わざと伏せた。頼るものがないなら、己で道を開けるしかない。それぐらいの覚悟をしてもらわなければ、組織で生き残るのは難しいだろうと、ニールは思っていた。最初は比べられて、相当に拗ねたらしいから、それでよかったんだろうと、ニールも苦笑しつつ頷く。

「くくくく・・・・やっぱり、そういうとこは変わってないんだなあ。あんたも苦労したんじゃないか? 」

 あの弟気質の甘えたの弟と付き合うには、それなりに器が大きくないと難しい。

「まあ、最初は判らなくて、困惑させられましたが・・・・判れば可愛いと思います。」

「けど、ライルは結婚したぜ? 」

「ええ、刹那君から報告はいただきました。ただ、たまに浮気には付き合うように、と、推奨されているし、友人としての付き合いは続けてもいいんだろうと。」

 学生時代から付き合っているのだというから、刹那より付き合いは長い。愚痴やら八つ当たりに付き合うぐらいは、造作もないので、と、クラウスは笑っている。

「まあ、浮気は勘弁して欲しいが、友人としては付き合ってやってくれよ。・・・・うちは、みんな年下だからさ。吐き出すのは難しいんだ。」

「わかりました。ところで、お兄さんは結婚されているんでしたね? 」

「あー違う違う。ライルが、どう言ったかしらないけど、俺はノンケの男と同居してるだけだ。俺もノンケだしな。そういう関係じゃないんだが、相手の男が冗談で、そう言うから公認になっちまってんだよ。」

 ああ、そういうことですか・・・と、和やかに世間話をしつつ、山門を入ったら、変態ストーカーと、黒猫がやりあっていたわけで、ニールとしては、「平和になったはずなのに・・・・」 と、肩をがっくりと落とす光景だ。

「あれは? 」

 クラウスのほうは、何事だろうぐらいの感覚で、それを質問する。まさか、刹那にストーカーがついているなんて思ってはいなかった。

「刹那君にストーカーですか? 」

「めっちゃくちゃ粘着気質なんだ。・・・・おい、ライル。そっちからかかれ。」

 刹那だけで埒が明くとは思えないから、こちらからも仕掛けて退場願おうと思っていたら、山門の外にクルマが停車した。

「あら、取り込み中でしたか? 」

 中から現れたのは歌姫様だ。そして、護衛陣も一緒に山門を越えてきた。

「おやまあ、また現れたのかい? 懲りない男だね。・・・・ヘルベルト、マーズ加勢するよ? 」

「「了解」」

 現役傭兵の護衛陣が、刹那のほうへ駆け寄ると、さすがに分が悪いと悟ったストーカーが、土塀のほうへ駆け出して、そこを懸垂の要領で登り、「邪魔が入った。また、逢おう、刹那。」 と、大きく手を振って、向こう側へと降りてしまった。

「逃げ足速いな? ストーカー。」

「おい、ママニャン、あんた、参戦するのはやめとけよ? ひっくり返ったら洒落にならんぞ。」

「まったくだよ、ママ。ラクス様が心配されるようなことはするんじゃないよ。」

 護衛陣は、参戦しようとしたニールを叱り、それから、クラウスへと視線を移す。資料は確認しているから、カタロンの幹部で、ライルの元カレだというのは理解している。どうします? と、ヒルダがラクスに視線で指示を仰ぐ。

「ライル、あなたのお客様ですわね?  初めまして、ラクス・クラインです。クラウス・グラード様ですね? ご活躍は耳にしております。」

 もちろん、クラウスだって、歌姫様の顔は知っている。

「こちらこそ、初めまして。いろいろとご尽力いただいたようで、地球連邦に参加するものの一人として感謝します。」

 軽く会釈して握手する二人は、さすがに絵になる。テロリストから政治家へと転身したクラウスとは、これからも連絡は取り合う仲になるだろうと、ラクスは考えているし、クラウスのほうも天下の歌姫様との繋がりは欲しいところだ。どちらも胸算用をしつつ微笑んで手を離した。

「クラウス、久しぶり。兄さんと逢ったんだな? 」

 そして、ようやく、ライルも挨拶する。抱きついて抱擁したいところだが、さすがに、兄の目が怖いから大人しく握手にした。

「ああ、間違えてナンパしてしまったよ。人妻じゃなきゃ、そのままデートのお誘いをするとこなんだがね。」

「ダメダメ、兄さんは貞操観念が強いんだ。遊びもしないぜ? 」

 おまえ、何ぬかしてやがるんだか・・・と、ニールは呆れているが、まあ、クラウスと並んでいると、しっりくるカップルぶりだ。

「ママ、そちらは放置して中へ入りましょう。あまり暑いところにいらっしゃってはいけませんよ? 」

「まったくだ。あんたは、どうして、俺の言うことを聞かないんだ? 買い物は、俺が付き合うから一人で行くな、と、あれほど言ってるのに無視したな? 」

 両側から腕を取られて、ニールは家のほうへ連行された。いや、あの二人は・・・と、声を掛けようとしたら、ヒルダに口を手で塞がれた。

「野暮はよしなよ、ママ。」

「そうそう、元カレとの再会なんだから、しばらく二人っきりにしてやらんとな。」
作品名:こらぼでほすと プール1 作家名:篠義