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こらぼでほすと プール1

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 友人との再会なんだから、そういやそうだった、と、ニールも思い直した。クラウスのほうは友人としての付き合いを続けるつもりだと言ったのだから、それならそれでいいのだろう。

「明日、プールに参りますので、お誘いに参じました。」

「はいはい、お疲れさんだったな? ラクス。」

 欧州に仕事で出向いていた歌姫を労いつつ、玄関へ入る。もうすぐ、刹那たちも宇宙に帰るんだなあ、と、歌姫の姿で、それを思った。



「アレルヤは? 」

「戻っておりますけど、本宅でティエリアの我侭に付き合っていて。こちらには来られませんでした。」

 一緒に戻ったはずのアレルヤは、連絡だけは携帯端末でしてきたが、こちらには顔を出して居ない。出迎えに向かったティエリアに、いい様にこき使われているらしい。

「フェルトは? 」

「キラとアスランとデートです。たぶん、悟空も合流していると思いますよ。」

 悟空は、朝から外出した。キラと待ち合わせしていたらしい。いくら、おかんのニールとはいえ、もういい年頃の悟空の行き先なんて、いちいち尋ねたりしていない。

「それで、おまえさんだけ貧乏くじか? ラクス。」

「いえ、ママの手料理が恋しくなりました。」

 欧州へ出張っていたので、どうしても、こってりした食生活になりがちだ。そうなってくると、ニールの作るあっさりした和食が恋しくなる。五年もすると、歌姫様まで餌付けできてしまうらしい。その言葉に、ニールも、ニパッと笑顔になる。

「嬉しいことを言ってくれるじゃねぇーか? 何が食べたいんだ? 」

「サラダ風そうめんか、冷やし中華が希望です。」

「それなら、そうめんな。ちょうど、作るつもりだった。」

 ラクスが希望しているのは、所謂ところの「ぶっかけそうめん」なるものだ。具材をそうめんに、トッピングして、薄めの出汁をかけて、そのまま食べてしまうというパターンなので、トッピングで、いろいろと楽しめるものになる。

 人数が多いから、いちいち、盛りつけるのではなく、大皿に具材を用意して、各人で飾りつけて食べるのが、寺仕様で、ラクスは、温泉タマゴときゅうりや焼きナスなんかの、あっさりトッピングが好みである。

 悟空あたりになると、焼き豚だの、トリからだの、ハムだの、どんだけたんぱく質を載せたら気が済むんだ? という、ヘビーなトッピングとなる。

「それから、エターナルは、十日後に出航いたしますので、それまで、送り出し大会で、刹那たちを連れ回す予定です。」

「ああ、遊んでやってくれ。こいつら、ちっとも動きやがらねぇーからさ。」

 刹那たちマイスターは、エターナルが宇宙へ上がる時に、一緒に搭乗することになっている。そのまま、刹那たちは組織へ戻るし、ティエリアたちは、ヴェーダへと戻る。それまでの間、遊び倒そうということになったらしい。ただし、悟空は、それには不参加だ。プールの予定が終わったら、保護者の三蔵の仕事に付き合うために二週間ほど本山へ出張することになっている。

 だから、せっかくなんだから遊べと、ニールは、勧めていたのだが、なかなか動こうとしなかった。あまつさえ、全員がニールとデートしたいなんて言いだして、意味がないと嘆いていたから、ラクスの提案は有難い。


 居間に案内すると、坊主はいなかった。どこかへ出かけたらしい。ちょっと買い物に、と、声をかけた時にはいたので、パチンコか射撃だろう。まあ、座れ、と、卓袱台の前に誘導して、クーラーをつけた。

 晩ご飯という時間ではないから、ひとまず、休憩だ。スーパーの買い出しを整理して、冷たいものを用意する。

 刹那は、それを、じっと眺めているだけで、何も言わない。普通、嫁の元カレが来たら、何かしら思うことはあるはずだか、このイノベーター様にはない。無表情の微妙な表情の変化を把握しているニールが、そう思うぐらいだから、本当に刹那は、何も思っていないのは判る。分かるのだが、ちょっとぐらい、わたわたとかもやもやとかすればいいのに、と、情操教育の失敗を感じているニールは願っていたりはする。

「アイスココアにするか? 刹那」

「俺は、子供じゃない。」

「でも、おまえさん、あれ、好きだろ? ラクスは、なんにする? 」

「私も、アイスココアでお願いします。ヒルダさんとマーズさんは、アイスコーヒーで、ヘルベルトさんは、アイスココアで、よろしいですね? 」

 護衛陣は、鷹揚に頷いて、居間で寛いでいる。さすがに、ここへ暴れこんでくる輩はいないだろうし、狙撃も難しい場所だ。全体に土塀で仕切られているし、周囲に高い建物が、あまりない。余程、凄腕の、まあ、以前のニールクラスのスナイパーなら狙い撃てるかな? ぐらいのところなので気が抜けるから、そういうこことになる。


 ちゅーと飲みものを吸い上げて、はふう、と、全員で息を吐く。まだまだ夏は中盤戦で、日中は30度を連日突破している。境内の木にいるせみたちが五月蝿いほどである。それを、耳にしながら、明日の予定についての説明を受けた。

「明日のお昼は、おにぎりでもしようか?」

「そんなことなさらなくても・・・・」

「けどよ、プールの出店なんて高くてうまくないのが定番だろ? 」

 貧乏性庶民派のプール遊びなんてものは、こういう考え方が普通だ。年少組たちと連れ立って出かけていた時は、お昼は、お弁当というのが定番だった。

「貸し切りにいたしますし、食事はバイキングで用意しようと思っておりますの。ですから、ママは何もしないでくださいね? たまには家事から解放されてください。」

 特区近くの遊園地に隣接する屋外プールを貸し切りにした。なんせ、人数も多いし、天下の歌姫様を、人ゴミの中に行かせるわけにもいかない。歌姫様が参加する場合は、大抵、こういうことになる。食事も本宅の厨房で作って運ばせる。

「あんたらのとこの、ツェーリ夫妻も参加するからね。そのつもりで、そっちの世話を助けてやっておくれよ? ママ。」

 ヒルダが、そう口を挟むと、はいはい、と、ニールも頷く。仲間だから気安いので、クリスは、ニールに子守りを頼みにやってきていた。エターナルの定期点検の間の休暇だから、フェルトと以前の様にショッピングを楽しみたいと、ここへ預けていたのだ。もちろん、リヒティーは荷物持ちで参加だ。宿泊しているホテルにも、ベビーシッターはいるのだが、気心の知れた世話好きのところのほうが安全と、クリスは判断したらしい。生後一年に満たない赤ん坊なら、人見知りもないので、ニールも気軽に応じた。昔取った杵柄というか、なんというか、おむつだのミルクだの、割とスイスイと出来てしまうあたりが、さすが、おかんだ。

「ドクターは? ヒルダさん。」

 ニールの問いかけに、刹那の頬がピクッと動いた。こいつ、炎天下なんかに出していいのか、と、自分のおかんのことを気にした。ドクターがいれば、何かあっても処置できるだろうと考えたらしい。

「遠慮するってさ。・・・・・刹那、うちのドクターは呼んであるから心配は無用だよ? あたしらも、注意しているからね。」
作品名:こらぼでほすと プール1 作家名:篠義