こらぼでほすと プール1
じゃあ、行こう、と、アレルヤは、ミニ女王様に命じられて肩車して歩き出した。明日は、プールだと歌姫から言われているし、もう少しで地上から離れることも決まっている。せっかくだから、夏を満喫しましょう、という歌姫の提案に、アレルヤもウキウキしている。あまり、遊びなんてやったことがないから非常に楽しみだ。
「ありぃるりぃや、およげぇるにょきゃ? 」
「え? ・・・・・んーと、どうだっけ? ハレルヤ。」
「泳げるぜ。一応、組織でやってたぞ。」
とはいうものの、それだって何年も前の話で、水着すらない状態だ。そちらの準備と、ついでに浮力をつけるものを用意することにした。筋肉マッチョなアレルヤは、浮力は、あまりないから、スーパーの売り場で大型の浮き輪とシャチの形のフロートを購入することにした。
せっかくだから、食事もどうぞ、と、ニールは勧めたのだが、さすがに、そこまでは、と、クラウスは辞退した。
「刹那君、ライルをデートに誘ってもいいかな? 」
それよりも、と、クラウスが言いだしたことに、え? と、周辺は驚いたが、刹那は、「構わない。」 と、返事した。
「今夜帰らないかもだぜ? ダーリン。」
「帰って来なくてもいいが、そういう場合は、先に連絡しろ。ニールが心配して起きているからな。」
ヤキモチなんてものと無縁のイノベーター様は、気にした様子もない。なんせ、浮気推奨していたのだから、やるならやってこい、と、顔に書いてある。
「ライル、友人として飲み明かすってーのなら、朝帰りしてもいいけどさ。浮気は、厳禁だぞっっ。刹那が許しても、俺は許さないから。」
一般常識として、本来はクラウスのほうに注意するところなのだが、ライルは弟気質で甘えた体質だ。誘うのも、おそらくライルのほうだと思われたから、ニールは、そちらに釘を刺した。
「お兄さん、そこまではさせませんから大丈夫です。」
「お願いしますよ、クラウスさん。こいつ、つけ上がったらキリがないんだから。」
「いや、まあ、そこが可愛いとは思うんですけどね。」
「あははは・・・・それは、わかるんだけどさ。」
過去、それと十四、五年付き合っていたニールと、学生時代から10年付き合っているクラウスともなると、ライルの性格なんてものは、よく把握しているわけで、言わずとも理解しているところがある。
「あんたら、そこで意気投合しないでくれないか? 兄さんなんか、俺のこと放置してたくせに、よく言うぜ。」
その様子に、ライルはプリプリと怒っている。
「でも、根本的な性格は変わってないんだろ? おまえさん。クラウスさんから聞くところによると、あんま変わってないぞ。」
「うるさいな、大人になって、それなりの格好はつけてんだよっっ。てか、クラウス、兄さんに何をバラしたんだよっっ。」
「いや、別に日常的なことを少し。」
「余計なことすんなっ。もう、出かけるっっ。ほら、クラウス、行くぞ。」
幼少時代の話なんてされたら、たまらないと、ライルは逃げるように外出した。じゃあ、また明日、と、クラウスも挨拶して帰って行く。
「刹那、あれでよかったんですか? 」
その一部始終を鑑賞していた歌姫は、刹那に尋ねた。あれでは帰って来ないだろう。
「別に構わない。あんたのことだから、クラウスの滞在先も把握しているんだろう? そこへ、明日、迎えをやればいい。・・・・・ニール、今日は、一緒に寝る。」
「ラクス、ライルはさ、あんなこと言うけど、浮気はしないんだよ。だから、大丈夫。」
ただ、ヤキモチを妬いて欲しくて、いろいろとやっているだけだと、ニールは気付いている。だから、クラウスを誘っても本気ではないし、やったとしても、遊びとかスポーツの感覚だと歌姫に説明する。
「浮気と遊びとスポーツの違いが、今ひとつです。」
「うーん、気持ち良く融けられるのが、浮気。いい汗かいた、が、遊びとスポーツってとこかな。」
「ママ、相当、遊んでいらっしゃったんですね。今は貞淑な妻なのに。」
「若気の至りってやつだよ。俺が、マトモなわけがないだろ。」
裏稼業からテロリストへと転身しているのだから、マトモな人生なんてありはしないだろうと、ニールは苦笑する。表を向いて裏も経験して来たから歌姫とは歩き方が異なるのは仕方がない。
「でも、今は、旦那持ちだ。」
「三蔵さんも浮気なさいませんものね。」
「まあな。もう、そういう気持ちが湧かないってのが、正解だな。」
三蔵にしても、ニールにしても、もう、そういう色恋沙汰は面倒になっているらしく、どっちも、そういうことに力が入らない。同居しているのが、そういう人間だから、どっちも気楽に暮らせているのが実情だ。
某宗教界の最高僧様は、暇つぶしのパチンコに出かけていた。サルと古女房の両方が勝手に外出してしまうと、物足りなくなったというのが、暇つぶしの理由だ。のんびりとスクーターで行って二時間ばかり遊ぶと、そろそろ古女房も戻っているだろうと、寺に戻る。
戻る途中で、義弟と出くわした。一人ではないし黒猫が相手でもない。はて、あんな知り合いはあったか? と、思いつつ、スクーターを停止した。
「お義兄さん、買い物ですか? 」
「それは、誰だ? 義弟。」
「元カレです。クラウス、うちの兄さんの旦那さんで、三蔵さん。お義兄さん、こっちはクラウス・グラード。連邦の関係者です。」
噂の元カレだったらしい。まあ確かに、身長差とかを考慮すると、こっちのほうがカップルらしいとは、三蔵でも思う。どうやら、浮気に出かけるらしい、と、気付いて、さっさとスクーターのエンジンをかける。
「そういうことなら楽しんで来い。」
「はーい、じゃあ。」
義弟のほうも手を振っているところをみると、そういうことらしい。別に、他人様の夫夫生活に意見するつもりはないが、公認の浮気ってーのは、どうよ? と、三蔵は首を捻りつつ帰って、直接、当人に尋ねてみることにした。
なぜか、台所には、暗黒妖怪がいて、居間には護衛の三人もいるが、いちいち気にしてはいけない。フリーダムあんどオールセルフサービスの家だから、どんなのが居ても驚くことではないからだ。
「訪ねて来たから、許可した。」
「浮気もか? 」
「ああ。別に、元カレなんだからいいだろう? 問題があるか?」
いや、あるだろう、と、ヘルベルトとマーズは内心でツッコミをいれているし、ヒルダは苦笑している。
「ないっちゃーないが、使われると磨り減らないか? 」
「多少、磨耗させておいてもらえると、俺も有難い。毎日、ベタベタとしつこいからな。それに、長いこと逢っていなかったんだから、積もる話もあるだろう。」
「おまえが、そう言うなら、それでいいんだが・・・・・」
普段、いちゃこらカッパイノブタ夫夫を間近にしているので、どうも浮気っていうのが、ピンとこない。あそこで、カッパが、なんぞやらかしたら、確実にイノブタの半殺しお仕置きが待っている。他人に少しでも心を動かしたら、即、お仕置きみたいな状況の夫夫なアスキラもいる。そういうのばっかりだと、こういうのは新鮮だ。
作品名:こらぼでほすと プール1 作家名:篠義