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こらぼでほすと プール1

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「おかえりなさい。勝ちましたか? 」

 ちょうど、その話が終わる頃に、古女房が麦茶を運んでくる。行き先も把握しているのが、さすがというところだ。

「あんなもんだろう。ほれ。」

 懐から高級カニ缶を、ひとつ取り出して、古女房に渡す。換金しないで品物で、と、頼まれているから、かさばらないものと交換してくるようになっている。

「へぇー、なかなかいい稼ぎだ。・・・・明日、みんなでプールに行くことに急遽、決まったので、お昼は作りおきしておきます。」

「おう。」

「店があるから、夕方には解散になると思いますんで、夜は店のほうで準備するそうです。」

「おまえは休めよ。」

「強制的に帰宅させられるんじゃないですかね?」

「まあ、そうだろうな。そのまま寝ちまえ。」

「はいはい。」

 五年近く暮らしていると、意思疎通も、それなりのことになるので、もはや熟年夫夫のノリの会話が展開していたりする。いちいち、これにツッコミする人間はいない。ヒルダたちにしても見慣れた光景と化している。用件を告げると、ニールのほうは台所へ引き上げる。

 悟空たちも帰って食事するというし、アレルヤたちも、こちらに戻ってくるというから、料理の量が生半可ではないことになったから、歌姫とママがせっせと、ぶっかけそうめんの具材作りに勤しんでいるのだ。

「これだけっていうのも、なんだから、刺身でカルパッチョ風にでもするか? 」

「そうですわね。それなら、アスランに材料を買ってきてもらいましょう。後、イカのマヨネーズ焼きなんて、いかがですか? ママ。ボリュームとしては、海老も混ぜたほうがいいかしら? 」

「あーそうだな。アレルヤたちも、結構、食うからなあ。」

 二人して仲良く、今晩のメニューについて会議している姿は、仲睦まじい親子といった感じで、どこにもいちゃこら感というものはない。打ち合わせると、歌姫はアスランに連絡をとって、買い物を依頼している。

 その横で、ママのほうは茄子を茹でて、ボールへと移す作業中だ。冷やしておきたいものから順番に作っているので、大鍋の出汁で冷やすものから順番に茹でている。豚肉、鶏肉、薄切りかぼちゃや冬瓜、しいたけ、人参なんてものが、続々と茹でられていく。それらは、種類別にして冷蔵庫に放り込まれる。出汁のほうは、明日の味噌汁となるので無駄は一切ない。

「イカと海老とお刺身は、オッケーです。ついでに、揚げ物は、買ってきてくれるように頼みました。」

「サンキュー、ラクス。じゃあ、こっちやってくれ。俺、たまねぎのスライスするから。」

「いえ、ママはそのままで。私くしがスライスを担当します。」

「化粧が剥げるぞ? 」

「ほほほほほ・・・・スッピンです。ここに来るからには化粧は落としてきてますわ。」

「へぇー、やっぱ若いってーのはいいねー。肌がピチピチだ。」

「みなさんの前で歌うのに、手入れは怠れません。」

「女の子は大変だなあ。でも、それだって栄養バランスも必要だぞ? 体内のバランスがよくないとな。」

「ええ、ですから、ママの野菜たっぷりの料理が食べたかったんですわ。」

 ああ、長閑で和むねーと、ヒルダは、それを台所の入り口で見て、微笑んでいる。手伝おうと思ったのだが、その会話が心地よくて、なかなか声をかけられない。歌姫様は、ママと台所をしている時は、素の娘に戻っている。だから、たわいもない話をして料理しているのが、非常にストレス解消になるのだ。ママのほうも、天下の高名な歌姫様なんて意識していないから、用事は言い付けるし、叱りもする。そういう関係であることを、どちらもが望んだから、五年ばかりで、こんなことになっているのだ。

・・・・・野良猫たちを懐かせられるんだから、歌姫様だって懐かせられるってことなんだろうねー。珍しい人だよ。・・・・・

 ニールが、『吉祥富貴』に居ることになって、キラとは別の意味で歌姫には、癒しになっている。刹那たちには、申し訳ないが、体調が治ったとしても、こちらに居てほしい、と、ヒルダたち護衛陣は希望している。母親のような存在というのは、今のところ、ニールだけだから貴重なのだ。

「どれ、あたしも手伝おうかね? 」

 ようやく、会話が途切れたので、ヒルダが声をかけた。

「すいません。じゃあ、大根おろしをお願いします。」

 あいよ、と、ヒルダは剥かれた大根とオロシガネとボールを持つと、居間へ引き返す。

「あんたら、暇だろ? やりな。」

 ヘルベルトに、それをつきつける。それから、取って返して、インゲンとボールを掴んできてマーズに、「筋とりな。」 と、配達する。そして、当人は、ホットプレートで薄焼き卵なんて焼いている。ヒルダも、歌姫が料理を楽しむようになってから、この程度は手伝えるようになった口だ。



 フェルトを連れて、ぶらぶらと街を散策していた大明神様ご一行も、夕飯の買出しに巻き込まれた。

 まあ、アレルヤたちも戻るし、歌姫様と護衛陣まで揃うとなると、料理のほうは膨大な量になる。

「デパ地下でいいな? 悟空。」

「うん、いいんじゃねぇか。あ、それなら、デザートも買おうぜ。」

「ちょっと待って、悟空。たぶん、ティエリアたちも何か買ってるんじゃない? 」

 気配り上手なアレルヤのことだから、寺へ戻ってくるのに何かしら土産は携えているだろう。それなら重ならないようにしたほうがいい、と、フェルトが提案する。そういやそうか、と、今度は、悟空がアレルヤの携帯端末へ連絡する。

「・・お、アレルヤ? おかえり・・・・うん・・・あのさ・・・デザート、なんか買ってる? 俺ら、今から買出しすんだけどさ・・・・ああ・・・うん・・・・アイスクリームか・・・オッケー。」

 あちらは、アイスクリームを買ったらしい。それなら、果物がいいかな、と、悟空が報告すると、キラはニパニパと笑って、「網目メロンがいいっっ。」 と、提案した。

「げっっ、網目か? おまえ、それは高すぎるだろ? 一個じゃ足りないんだぞ?」

「たまにはいいじゃんっっ。ね、フェルト、冷たく冷やしたメロンいいよね? 」

「いいけど。」

「ほら、フェルトもいいって言ったもんっっ。じゃあ、僕とフェルトでメロン探索ミッションっっ。それから、マカロンもいいなあ。あ、それより、レアチーズケーキとか? 」

 大明神様は、『吉祥富貴』のナンバーワンで、普段は、ほとんどお金なんて持つことのないご身分だ。それが高かろうがなんであろうが、食べたいことが優先する。

「キラ、ママに叱られるぞ? スイカとかにしとけよ。」

「いや、悟空、たまにはいいさ。それに、明日、スイカ割りをする予定だから、違うもののほうがいいよ。・・・・じゃあ、キラ、探索ミッションに行っておいで。フェルト、買い物が終わったら連絡してくれ。メロンは三個それだけだよ?」

 今夜は、お客様の予定はないのだが、それでも、定時には出勤する予定だから、あまりのんびりしているわけにはいかない。さっさと片付けて、寺へ行かないと食事が遅れてしまうから、アスランも急いだ。キラもカードは持っているから、支払いは問題ないだろう。

「スイーツは?」
作品名:こらぼでほすと プール1 作家名:篠義