こらぼでほすと プール1
「そこまで時間はないだろ? 出勤しないといけないんだからさ。」
「あ、忘れてた。」
「じゃあ急いでくれ。」
「オッケー、行こう、フェルト。」
デパートの地下で、二組に分かれて買出しをした。もちろん、キラがメロンだけで済むはずもなく、いろんな果物も追加されていたのは、アスランも折り込み済みのことだった。相当の荷物になったので、そこからはタクシーで寺へ向うことにした。
「くぉーーーーーらぁぁぁぁぁっっっ、キラっっ。おまえ、無駄遣いしすぎだっっ。このバカモノっっ。」
荷物の中身を確認して、ニールは、ごちんと拳骨を天下無敵の大明神様に、ひとつ落とした。
「ママ、横暴っっ。」
「何が横暴だっっ。こんなに買ってきて、どうすんだよ? 明日からフルーツパーラーでもやれってか? 」
「だって、フェルトが知らないのが一杯あったんだもんっっ。そういうの味見させてあげたかっただけだもんっっ。」
「だからって買いすぎだってーのっっ。アスラン、これ、店のほうで消化してくれ。とりあえず、メロンだけ冷やすぞ。」
「いや、ママニール。これは、こっちで消化してください。フェルトたちも食べたいだろうから。」
キラが叱られるのも予想していたから、アスランは気にしない。こういうことで叱ってくれるから、アスランはニールに感謝している。上目遣いにうるうると見上げられたら、つい、アスランは、なんでも許してしまうからだ。大きな袋二杯の果物は、さすがに買いすぎなわけで、消費するのは大変だと分かっていたが、自分では叱れなかった。
「ママ、フルーツコンポートを作りますわ。それでしたら日持ちいたしますし、ジャムにしても・・・」
「いや、せっかくの生ものだ。それは勿体無い。・・・・あのな、キラ、こういう日持ちの悪いものは、大量に買っちゃいけないんだ。今度から、もっと考えて買って来い。いいな? 」
ぶーーーーとふくれっつらをしているキラに、拳骨を見せたら、「ふぁーい。」 と、不満たらたらではあるが、一応、返事はしたので、よしとする。時間が迫っているから、とりあえず集まった人間だけで食事を開始する。アレルヤたちも、そのうち戻るだろう。
刺身と用意していた野菜を混ぜ合わせて、青じそノンオイルをふりかけて、サラダは完成だ。もうちょっとすっぱい味付けにしたい場合は、各人で取り分けてから調味料を足すということになっている。坊主が、洋食の味付けは好まないので、そういうことになっている。
何枚もの大皿には、いろんな具材が載せられているし、三つのザルには、大量のそうめんが準備されている。それから、アスランたちが買ってきてくれた揚げ物を広げたら、食事を開始する。
「おい、三蔵さん、俺は仕事中だぞ? 」
「堅いこと言うな。これぐらい、屁でもねぇーだろーがっっ。」
マーズに、ビールを注いで、三蔵も食事に手をつける。大人たちは、具材をアテにして一杯の方向だ。
「ヒルダさんも、どうです? 」
「そうだね。ビールはもらうよ、ママ。」
ヘルベルトは、あまり嗜まないほうだから、最初からウーロン茶だ。他は、仕事があるから、麦茶になっている。
「黒猫、あんたもいけるクチだろ? ほら、酌してやろう。」
ヒルダが、親猫の右側で食べている刹那にも、ビールを注いでやる。こちらは、仕事に出るつもりがないから、酔い潰れても問題がない。注いでもらったら、黒猫は無言で、ぐびぐびと飲み干して、また、食事に手をつけている。
「ただいまぁー、あっ、もう始まってるの? わぁー急がないと食いはぐれちゃうっっ。」
外から、ティエリアをだっこしたアレルヤが帰ってきて、お土産に買い込んだアイスクリームを冷凍庫へ投げ入れて席に着いた。ティエリアは、子供用の椅子に座り、小さいフォークを手にしてスタンバイオッケーの状態だ。
「おかえり、アレルヤ。慌てなくても大丈夫だ。キラたちは出勤だから先に始めてただけだからな。」
ぶっかけそうめんの作り方を説明して、ティエリアの分を手早く作ると、それを食べさせ始める。
「タレのお勧めは? ニール。」
「うーん、とりあえず、基本の出汁を食べてみて、それよりすっぱいのがよかったら、冷やし中華のタレにして、甘いのがよかったら、ゴマダレってとこかな。あとは、そこいらので自分好みにしてくれたらいい。」
「アレルヤ、俺のお勧めは、ノーマルに温泉卵トッピングに、えびときゅうりとナス。」
ドンブリ鉢山盛りのそうめんをかき込んでいた悟空が、そう言う。
「俺としては、ゴマダレかな。ちょっとボリュームが出るんだ。」
ちゅるちゅると優雅に、そうめんを啜っているアスランは、変り種を勧める。ちなみにキラは、基本極東の人なので、ノーマルの出汁で食べている。トッピングは、茹で鶏とゆで卵と冬瓜ときゅうりだ。
「私くしは、野菜でゴマダレに冷やし中華のタレを少々です。」
歌姫様は宣言通り、野菜を大量摂取中だ。これなら、いろんな味を楽しめるから、いつもより野菜を食べられるらしい。
「うーん、とりあえず、ノーマルからかな。・・・・刹那のは、何? 」
「ニールと一緒だ。」
「刹那のは、ノーマルだよ、アレルヤ。・・・はい、エビ齧って・・・・はい、そうめん・・・」
ティエリアに食べさせつつニールが返事する。刹那は、食べられればいい、なんてことを言うから、最初はニールが作ってやっていたから、その味で固定している。
「おい。」
ビールが切れたので、三蔵が瓶を振る。ああ、はいはい、と、立ち上がって、冷蔵庫へ代わりを取り出しに走るのは、ニールだ。仕事前の軽い晩酌は、毎日のことだから、それは止めないようになっている。
「せっかくだから、焼酎。」
「ダメですよ。仕事行くんでしょ? 」
「休む。」
「いいのか? アスラン。」
「ええ、今日は指名はないから休んでもらっても構いません。」
態度は正社員だが、一応、バイトな三蔵辺りだと出勤も自由が利く。指名さえなければ、休んでも稼ぎが減るだけのことだ。
そういうことなら、まあ、いいか、と、護衛陣にも付き合わせるつもりだろうから、そちらの準備をして渡すと、マーズにきゅうり入りの焼酎を作って渡している。
「にーりゅーーーしゅわりぇいっっ。」
ジタバタとティエリアは、ちっとも食べていないニールを、大声で呼んでいるし、フェルトが、ニールの分のそうめんとトッピングをして刹那に渡している。これを食べさせろ、ということらしい。
「フェルト、栄養あるもの放り込んだ? 」
「うん、たんぱく質は全部入れたよ、キラ。」
「悟空、イカとエビのマヨネーズ焼きができましたよ? はい。熱いうちに、どうぞ。」
タイマーが鳴って最後の料理が完成したものを、歌姫が、オーブンから取り出して運んで来た。うほーーっっ、うまそーーと、悟空が、すぐに手を出す。
「ラクス、ご苦労様。おまえも食べな。」
「ほほほほ・・・そっくり、その言葉をお返しいたしますわ、ママ。刹那、食べさせてくださいな? 」
「わかっている。ニール、座れ。俺が食わせてやる。」
作品名:こらぼでほすと プール1 作家名:篠義