2011お年賀公開(reborn)
溶け合って絡まり合って(ディノヒバ)
恋は盲目、と謂われているがそれはどうだろう。
意識を奪われてしまう程の恋を自分はしていない。
まあ…それは本当に恋か、と訊かれては何も言えないけれど。
それでもこの感覚が恋だと言い切れる自信があった。
確信と言ってもいい。自分は恋を知っている。
だからこそ周囲が見えなくなる程に固執することが不思議で仕方ない。
「恭弥」
「やだよ」
「まだ何も言ってねえだろ?」
「言わなくていいよ。貴方のことだからきっとまた碌でもないことに決まってる」
そう言い合っている僕等に何があったのか。
それは目の前、いい歳して両頬をリスのように膨らませている男に聞いてほしい。
「いいじゃんかー。きっと似合うぜ恭弥のナース姿っ」
「それを僕が着ると思ってるなら貴方本当の馬鹿だね」
「男の浪漫なんだよ!」
と、言うわけである。
差し出された右手には年始の福袋。
その中身は聞かなければよかった、ナース服だと。
本当にこの人マフィアのボスなの、そんなことを思うほどに自分が考えていた裏の世界の情緒など価値観が違いすぎた。
「な、頼む。一回だけ着て見せてくれないか?」
「どうせ見せるだけじゃ足りないくせに」
「それはそうだけど…でも」
もじもじ指と指をくっつけては離すを繰り返す動作に溜息を吐きながらも、小声で…一回だけなら、と呟けば。
途端に「本当か!?」と目を輝かせる恋人を見て内心クスリと苦笑を漏らした。どれだけ必死なの。
最後に、これは一回だけ、夜まで待って、と念を押せば首を何回も縦に振るディーノ。
その様子を見ながら思う。執着というよりはお互いに惹き合っている、の方が正しいのかも。
「貴方って本当物好きだね」
こうやって僕等は自分たちの好きなように意識して恋をしているんだと、僕は思うんだ。
end.
「ディノヒバ/現代(DH)」
作品名:2011お年賀公開(reborn) 作家名:煉@切れ痔