2011お年賀公開(reborn)
ため息の行く末(綱雲)
昼下がり、任務に出ることもなく書類に追われることもない。
穏やかな一時を自室でアフタヌーンティーを楽しんでいた。
…はずなのだが、厄介事は常に自分に憑いてまわるらしい。
だけど、あの、一言言っていいですか?
『雲雀さん、俺はいつも雲雀さんのことで頭がいっぱいです』
『…嘘吐きは嫌いだよ』
痴話喧嘩は余所でやってください。
コンコン、と音が聞こえて振りかえるとどうやら雲雀君が訪ねてきたようだ。
そして無言で近づいてくると我が物顔で人のソファーに座るものだから苦笑。
いつもより機嫌が悪いと見てあまり刺激しないようカップをもう一つ用意すると、目の前でムスッとしている彼女にそれを差し出した。
「…ありがと」
ちゃんとお礼を言う辺りが律儀で彼女らしいなあと感心しながら今回も不機嫌の原因を聞くことにした。
「今度は何があったんですか?」
「綱吉が悪い」
「また彼絡みですか?貴方達も懲りないですねぇ。仮にも恋人同士でしょうに」
そう、雲雀君と沢田綱吉はボンゴレ内では言わずと知れた恋仲なのである。
「綱吉が悪い…だって、見ず知らずの女と町で、しかも僕のお気に入りのテラスでデートしてたんだよ?!」
「綱吉君が?見間違いでは…」
「僕が信じられないって言うのかい?」
「そういう意味ではないですよ」
「それに、綱吉だって認めてる」
なんてことだ。
綱吉君がついに女癖を悪くしてしまったのか。
雲雀君を一途に思っていた彼はもういないのか。
「ね、酷いでしょ?」
「そうですね…今回ばかりは僕も雲雀君に同意見です」
彼女がいるにも関わらず、しかも彼女が気に入っている店に愛人を連れていくなんて、酷すぎる。
雲雀君の前だと比較的優しさが増すというのにその彼が彼女以外の女性の手を引くなんて。
何かがあったとしか思えないが、本人が認めたということは少なからず事実なのだろう。
そう分析しているとバンッという音と共に扉が開いた。
先程雲雀君が入ってきた扉から、今まで話の主だった綱吉君が入ってきた。
「………」
そして何やら彼女が入ってきた時よりも重圧な、背後に黒いものを背負いながら近づいてくる。
彼の足はソファーに座っている雲雀君の前で止まると、無言のまま彼女を見下ろした。
暫く三人で沈黙を極めていたのだが、それも潮時のようだ。
「…何しにきたの」
「誤解を解きに来ました」
「誤解…?」
「はい。雲雀さんは俺と女性があの店でデートをしていたと言いましたが、あれには深い意味はありませんよ。それに最初、あの店にいたのは俺で相席をと頼まれたから一緒に座って少し話しをしていただけです。だから誤解しないでください。俺が愛しているのは貴方だけです、雲雀さん」
そう早口に捲くし立てると最後に雲雀君を見つめた。
その瞳は真摯に雲雀君を捕らえて離さなかった。
「…綱吉」
見つめ合っている恋人たちを目の前に骸はホッと息を吐いた。
今回もただの杞憂に終わったようで良かった…いや、良くない。
どうして毎度毎度自分の部屋で事を終わらせるんだ。
いい加減、巻き込むのを止めてほしい、と骸は思う。
取り敢えずは、此処、僕の部屋なので痴話喧嘩は余所でやってください。
end.
「十年後の綱雲+骸(綱雲)」
作品名:2011お年賀公開(reborn) 作家名:煉@切れ痔