2011お年賀公開(reborn)
モノクロの対象性(山獄)
雨が降っている時の景色は、嫌い。
雨上がりに見た外の景色は、好き。
雨は嫌いだが、好きだ。
それは俺の心の矛盾を表していた。
雨は止んだというのに未だに暗雲は垂れ込むようにあたりを覆っていた。
まだ降るかもしれないが、今しかない。今のうちに早く帰ってしまおう。
そう思って上履きを履き替えて足早に校門を潜り抜けた。
朝、通ってきた道を戻って歩いていくというのはまた変な感じだ。
たくさんの雨が降った後の地面には形も多様な水たまりができていて、俺はそこを避けるように時にはジグザグに歩いていく。
そして時折止まっては水たまりに映る自分の顔を数秒見つめた。それからまた歩き始める。自分でもよくわからない行動だ。
そんな不可思議な行動を繰り返していた俺を、山本が見ていた。
「獄寺、何してんだ?」
毎度毎度のことだがコイツはどっから出てきやがるんだ。
偶然か、はたまた何かの悪戯か本当によく遇う。
今では慣れてしまって大して驚かない。
「…別に、お前こそ何でいるんだよ」
「俺?俺は雨が止んだみたいだから、また降り始める前に帰っちまおうと思って!」
自分と同じ考えの山本に適当な相槌を打っていると、いつの間にか二人で一緒に帰っていた。
今日学校であったこと、十代目のこと、色んなこと。
そんな他愛ない話をしながら肩を並べて帰っていた。
けれど、そんな退屈でもなかった時間ももうすぐ終わる。
「獄寺、ちょっと止まって」
薄い明かりの点いた電灯の下、十字路。
山本が足を止めて俺を呼んで止まらせる。
これは合図。この時間が終わる合図だ。
そしてまたいつものように。
「おやすみ」
俺の額に口付けると、一日の別れの言葉を俺に向けるんだ。
ゆっくりと離れていくと何事もなかったかのようにさっきまで浮かべていた笑顔で手を振る。
そんな山本にいつもの如く複雑な思いを抱いたがさっさと諦めることにする。
嫌じゃないとわかった時点で、結局俺はコイツをどうするかまだ決めていないから。
「じゃあな!」
「…おう」
心の中はやっぱり、雨が降るのか降らないのかわからない。
そんなどっちつかずのもやもやな雲でいっぱいだった。
fin.
「山本が好きかわからない獄寺(山獄)」
作品名:2011お年賀公開(reborn) 作家名:煉@切れ痔