こらぼでほすと プール2
「こら、あほライル。お兄さんのことは、もっと格好良く紹介しなさい。・・・・はじめまして、ムウ・ラ・フラガです。・・・・あんたもお疲れさんだったな? 」
すっと手を差し出して、握手を求めるあたり、さすが、じじいーず組の鷹だ。気を取り直したクラウスは、こちらこそ、と、握手する。
「ということは第三勢力のAAメンバーは揃っているわけですか? 」
「全員じゃないけどな。・・・・まあ、よければ仲良くしてやってくれ。ただし、カタロンへ引き抜こうなんて思わないでくれよ? うちは、酔狂にホストやってるのが性に合ってるのばっかりだ。真面目に戦争するようなのはいないんでね。」
とりあえず、大きめの釘を刺しておく。この男、かなりのカリスマオーラはあるから、勧誘されると年少組あたりは引っかかるかもしれないからだ。
「そういう気は、毛頭ありませんよ。」
「なら、別に構わないんだ。」
紹介させてもらおうか? と、鷹と虎が、クラウスを先導する。プールのところへ辿り着いて、声をかけて紹介する、というようなことになっているので、ライルは、そちらについていく。刹那は、ニールのほうへ移動する。別に、クラウスと友好を深めたいとは、これっぽっちも考えていないらしい。
さて、こちら、トダカとニールは、若い女性に囲まれて、ハーレム状態で、タープの下の席に座っている。そこで、ニールは浮き輪をしたままのキラに背後から抱きつかれ、ぼすっと前のめりに倒れこむ。
「くぉーらっっ。」
「ねーねーねー、ママ。ここのウォータースライダーのひとつにね、大きな浮き輪に二人で乗って滑るやつがあるんだ。行こうーーーーよーーーーーー。」
ここの施設の呼びもののひとつが、いろいろなウォータースライダーで、カップルで仲良く滑るもの、急降下の恐怖もの、お子様向けのほほんものなど、各種取り揃っている。
「あたしも、ニールとやりたい。キラはアスランにしなよ。」
「あーーずるいよ、フェルト。僕が先に言ったのにぃー。」
ニールに抱きついて潰しているキラを、べしべしと叩いて離れさせて、フェルトもやりたいと騒ぐ。せっかくなんだから、いろいろと楽しむぞ体勢のフェルトにしたら、ママと遊びたいのだ。
「別に構わないけどさ。」
と、ニールは何気なくオッケーを出しそうになったのだが、そこをトダカが慌てて止める。
「待ちなさい、ニール。何度も滑ったら目が回るぞ。」
「え? 」
たかだか二回ですよ? と、言おうとしたら、キラに向かって乱暴に蹴りが入って、コロコロとキラがタープの外へ転がった。さらに、そのキラに、べしべしと浮き輪で叩いてティエリアがトドメをさしている。
「キラ、ニールは俺のおかんだ。勝手に誘うな。」
「きぃりぁーーーっっ、ばんちっっ。」
「ふたりともずるいっっ。僕のママでもあるもんっっ。勝手に独占しないでよねっっ。」
「おまえは、八戒さんがいるだろう? うちのは使うな。」
「しょうにゃっっ。おりぃたちのおかんにゃっっ。」
やられてばかりのキラではない。すかさず飛び起きて、ティエリアを両手で確保すると、近くの流れるプールへ放り込んだ。それを見ていたアレルヤが、それを追い駆けている。さらに、刹那には直接、「らいだぁーきっーくっっ。」 と、飛び蹴りを仕掛けていたりする。もちろん、刹那は大人しく、それを引き受けるはずはない。さっさと、キラの着地点から飛び退いて、逆に、こちらも蹴りを見舞う体勢になっている。
「あ、おまえらっっ。」
「ほら、ごらん。きみが付き合うことになると、この人数だ。こんなに付き合ったらダウンするから、やめなさい。」
とりあえず、フェルトちゃんだけ一緒に行っておいで、と、こそっと、ニールに伝えて、トダカも笑っている。本気じゃないので、みんな、楽しそうに戦っているが、傍目には過激なアクションの連続だったりする。さらに、悟空も参戦してきて、おっそろしく高い位置での飛び蹴り大会に発展している。
「フェルト、ちょっと待ってな。・・・・・・こぉーらっっ、プールサイドで暴れるなっっ。」
で、まあ、一般常識の持ち主なおかんは、滑って危ないだろうと、注意する。誰も、そんなレベルではないのは、さらっとスルーだ。そして、やってる三人は、おかんに逆らえないから、そこで中断する。
ごちんごちんごちんと三人に拳骨を食らわせて、注意すると、「とりあえず、一回ずつ滑ってやるからやめろ。」 と、懐柔案を出す。
「俺はいいよ。その代わり、後で流れるプールを一周して。」
「浮き輪で浮いてでよかったらな。」
悟空は単に遊びに参戦していただけだから、そっちのほうがいいと言う。戻ってきたティエリアとフェルトと刹那、キラ、アレルヤは、一緒にウォータースライダーが希望だが、五回もやったら疲れるなあーと思ったら、刹那とアレルヤも降りてくれた。
「その代わり、俺も流れるプール一周を希望する。」
「僕も、それがいいな。シャチのフロートに一緒に乗って。」
まあ、三回ぐらいならどうにかなるだろう、と、これで決まりになった。後からシンとレイも参加したがったので流れるプールのほうで参加だ。
「後で宝探しでもするか? 」
「え? どんなの? 」
「プールに、いろいろと沈めるから、それを数多く拾ったヤツが勝ちってやつ。どうだ? 」
「「「「やるやるやるやる」」」
うぉっしゃあーっっと、年少組が、それで盛り上がっているので、微笑ましそうにトダカと歌姫たちは眺めている。
しかし、その一部始終を見ていたクラウスは、かなりびっくりした様子だ。噂の『白い悪魔様』の頭を拳骨しているのもさることながら、空中で飛び蹴り大会をしている段階で、ものすごい運動能力を見せつけられた気分だ。
「なあ、ライル。お兄さんって、何者なんだ? 」
ぼこんぼこんと拳骨しているところを見ると、かなり親しいと思われる。
「え? 通称『吉祥富貴』のおかんなんだって。もう、なんていうかさ、うちの兄さん、ああいう穏やかな生活が似合い過ぎて笑っちゃうよね? クラウス。」
ここんとこ数ヶ月、毎日のように見ている光景だから、ライルは驚かない。さらに、鷹が、そのニールに抱きついて、頬にキスをかましているし、天下の歌姫様が、その鷹に蹴りを叩きこんでいるという光景は、有り得ないことの連続だ。さらに、悟空が鷹をプールへ投げ込んでいるが、誰もが楽しそうに笑っている。
「楽しそうなんだがね。」
「うん、楽しいんだろうな。」
ニヘラニヘラとライルも笑っている。普通、各陣営の有名人なんてものが、蹴られたり拳骨食らったりしている段階で、おかしいはずだが、ここでは、普通のことであるらしい。それもどーなんだ? と、クラウスは、ちょっと首を傾げつつ、まあいいか、と、開き直ることにした。
自分たちだって仲間内なら、こんなものだろう。それの派手なバージョンだと思えば、そういうものかもしれないからだ。
「せっかくだから、滑り台でもやろうか? ライル。」
「じじむさいなあ。ウォータースライダーって言うんだよ。・・・・あれでタイムトライアルやる? 」
作品名:こらぼでほすと プール2 作家名:篠義