こらぼでほすと プール2
「いいだろう。元軍人に、ホワイトカラーが挑むなんて無謀だと解らせてあげるよ。」
「残念でした。これでも、現役ガンダムマイスターなの、俺は。実戦から遠ざかってる元軍人なんかには負けないぜ。」
どうせなら、このお誘いを存分に楽しもう、と、気分を切り替えて、クラウスも本気でプールを楽しむことにした。
「さあ、ティエリア。おねーさまたちと水遊びをしましょうね? 」
「てぃえ、とても可愛いワ。」
ほのぼのお子様向きウォータースライダーをニールと滑り落ちたティエリアは、そのまんま魔女いやいやいやいやいやお姉様たちに連れ去られた。足の届かない深いプールで、ぷかぷかとティエリアを浮かべて遊んでいる。さすがに、誰も逆らえない相手なので、見て見ぬフリになっていた。
「にゃあーーーーーーたちゅけてぇーーーありぃりゅりぁーーーーーー」
縋り付いている浮き輪を、ゆらゆらと揺らされて、ミニ女王様は必死の形相になっている。さっき、すぼっと落ち込んで、かなり水中を強制的に潜水させられたからだ。
「マ、マリューさんっっ、アイシャさんっっ。」
さすがに見ていられなくなったアレルヤが、そこまで泳いでティエリアを救出していたが、ティエリアにしがみつかれて、溺れそうになったことも見ないフリになっていた。
各人バラバラに楽しんでいたが、そろそろ食事の時間にしよう、ということになって集められた面々は、まだ遊び足りないという顔で、そういうことなら、と、ニールが先に言っていた宝探しをやってから食事にしようということになった。
ニールがプールの食堂から200個のカレー用の大きなスプーンを借り出してきた。
「絶対に200個になるまで探すこと。一番多かった人間からスイカ割りの順番にする。それから、女性陣にはハンデに五個先渡し。以上。」
メインプールは、かなり広いので、その周囲を歩きながら、ニールとライルで投げ入れる。これは全員参加なので、クラウスも強制的に参加だ。唯一、ティエリアとニールは不参加だ。
「キラ、ペアで参加というのはいかがでしょう? 」
「うん、それにする。二人でスイカ割ろうね? ラクス。」
ちゃっかりと歌姫様と大明神様は、手を組んだ。スーパーコーディネーターとハンデをプラスすれば上位にランクされるのは楽勝だ。スイカ割りは、早いうちに割らないと楽しくない。トップが一番、心地良くスイカを割ることができる。最悪なのは、割れてしまってから、ぐしゃりと、その割れた部分を再度アタックすることだ。だから、なるべく早い順番がいいのだ。
ぼちゃんぼちゃんと投げ入れられたスプーンが完全に沈むと、ライルとニールが、「よーーーーーいっっ、アクションっっ。」 と、開始を告げる。じゃぼんじゃぼんと全員が飛び込んで、スプーンを拾う。200個と言っても、女性陣にハンデを渡している分があるから、この広いプールの底にあるのは、せいぜい170個くらいだ。
年少組に煽られて、ハイネや悟浄もかなり本気になってくる。そうなると、負けん気の強いライルとか、そのライルよりは上回りたいクラウスも、真面目に潜水を始めている。
「意外だなあ、悟浄くん、カッパなのに、息継ぎするんだね。」
「トダカさん、誰だって酸素は必要ですよ。」
「おーーいっっ、悟浄、女房より少ないなんて甲斐性がねぇーーぞぉーっっ。」
「シン、ザフトの赤服が、その様はなんだいっっ。もっときばりなっっ。」
「おまえら、参加したかったんだろ? 」
それらを、のんびりと観察しているのは、除外されているニールとトダカの擬似父娘と、護衛陣たちだ。ティエリアは、アレハレルヤの応援を、プールサイドから送っている。
「あ、これ、どうやって止めます? 」
ふと失念していたことに気付いたニールが、トダカに声をかける。開始は、みな、水上に居たから聞こえていたが、ただいま、必死に潜水中だ。これでは、止めても聞こえないだろう。
「プールのスタッフに水中へ音を流して貰えばいい。15分くらいでいいな? ニール。」
「まあ、そんなもんじゃないですか?」
「けど、全部拾うんじゃないのかい? ママ。」
200個揃えて返さないといけないから、そういうルールになっている。それを、ヒルダが指摘したら、とりあえず中間発表ということで、と、ニールが言う。
「そうしないと負けん気の強いのが、そのうち溺れます。」
「まあなあ、どっかのサルとか、どっかの赤目とか、どっかの、お、こいつも赤目だな。それから、どっかの紫目とかだな? 」
「けど、よく考えればよ、マーズ。そのどっかの連中は、スーパーなんとかさんたちばっかりだけどな。」
「ちげぇーねえー。」
「ヘルベルトくん、うちのシンは、普通のコーディネーターで、スーパーじゃない。」
「そう考えたら、シンってすごいですね? あの中で頑張ってるんだから。」
見物席は、のどかなものだが、参加者は必死だ。かなり広いプールの隅々まで散って探している。女性陣は、さほど真面目にやってないが、他のは本気だ。そこまでのブザーが鳴るまでに、ほぼ170個は拾い上げていたのだから凄まじさは解るだろう。
「優勝は、キラとラクスペア。36個で、トップ。それから、マリューさんと虎さんペアが、28個で次点。三位はアイシャさんと鷹さんペアで、26個・・・・・・・」
じじいーずは、頭脳戦に出た。カップルをシャッフルして参加するという技が、ある意味、大人らしい。そこからサルだのシンだのが続いて行く。
「なかなか白熱しておもしろかったな? 鷹さん。」
「いい勝負だったよ、虎さん。」
「てか、真似っこずるいっっ。」
「ふふふふ・・・・キラ、おまえがいい案を出してくれたから、俺らは楽させてもらったった。ありがとよ。」
カップルはダメというルールはないのだから、タッグを組むのは違反ではない。悟浄たちも夫夫でなら、楽勝で優勝だが、そこまで勝ちに拘ってないから、そのまんまだ。
「いい運動でしたね。食事をいただきましょうか? オーナー」
「ええ、八戒さん。」
全力でプールを動き回るのは体力が消費する。だから、ちょうどいい塩梅で空腹だ。さあさあ、ビュッフェスタイルで、好きなものを好きなだけ、と、声をかけると、年少組がテントの下へ走り去っていく。ティエリアは、別のクリスとメイリンという魔女いやいやいやいやお姉さまたちに鹵獲されて、食事に連れていかれた。アレハレルヤは、また後を追いかけている。
「じゃあ、我々も行きましょうか? 」
「ハイネ、接触するなら今だぞ? 」
「わかってるよ。ああ、今日のママの昼寝番は、ヘルベルトさんがしてくれるってさ。あんた、危険だからやらないでくれよ? 鷹さん。」
「ふーん、どうだろーねーーーマリュー、おまえさん、ママの添い寝しない? 」
「いいわね。それ。じゃあ、ムウは邪魔しないでね。」
「あんたらっっ、洒落にならんわっっ。」
作品名:こらぼでほすと プール2 作家名:篠義