こらぼでほすと プール2.5
「孫? ハイネ、ニールは産めないと思うんだが? 」
「いや、シンのほうだよ。そのうち、花嫁さん連れて来るだろ? 」
「ああ、そうか。そっちは可能性があるなあ。」
できたら、ニールの子供も見たいんだけど、三蔵さんは産ませてくれないしねぇーと、暢気にのたまっているトダカからは、本気が見えるのは気のせいではないだろう。
「それなら、トダカさん、ニールには子猫はたくさんいるから、あんた、孫持ちみたいなもんだ。」
刹那やフェルトは、彼らが十代前半からニールが世話をしていたのだから、完全に子供感覚だ。
「あははは・・・フェルトちゃんには、いい相手があるといいと思うんだが・・・・ダコスタは、どうかな? 虎さん。」
身持ちの硬い好青年のダコスタに、トダカは目をつけていた。ああいう青年なら、しっかりもののフェルトには似合いじゃないかな? なんて、出会う時間を作ろうとしていたほどだ。
「遠距離恋愛すぎないか? 」
「CBへ出向させればいいだろ? 」
「俺は構わないが、本人の意思を尊重してやってくれ、フェルトちゃんのおジイ様。」
「そこなんだが、いまひとつ反応が薄くてね。」
ダコスタとフェルトでは、なかなか話す機会もないし、ちょっと年上のダコスタは、年少組行事には参加しないから、顔を合わせる機会も少ないのがネックだ。
「シンはダメなのかい? 」
「シンは、年上のしっかりした女性がいいんじゃないかと思うんだが・・・どう思う?」
「まあ、そりゃそうだな。あの鉄砲玉には、ストッパーが必要だ。」
虎とトダカが、勝手にシンやフェルトのお相手を決めてかかっているのには、ハイネは呆れつつツッコミする。この昨今の自由恋愛謳歌の時代に、えらいこと言ってくれる。
「そこのじじいーず二人、待て待て、勝手に決めるな。当人の好みってもんがあるんだから。」
「ハイネ、おまえも、そろそろ間男は卒業して、本格的に良い人を探したらどうだ?」
「そうだよ。私みたいになってからじゃ遅いからね、ハイネ。」
そして、じじいーずは伊達にじじいーずではない。ハイネの痛いところを的確に突いて来る。現在、恋人募集中だと解っていて、そういうのだ。
「なかなか出会いがないんだよ。落ち着いたら、プラントで恋人探しの旅でもしてくるから、そっちはスルーしといてくれ。」
「そんなこと言ってると、ニールんとこで、延々と間男をしてそうな気がするね。」
トドメのきつい一発をトダカに叩き込まれて、ハイネでも萎れる。寺でのんびり下宿していると、生活自体は、ニールが面倒をみてくれるから、ついつい楽で居ついてしまうのだ。おかんと同居しているような感覚だから、これが一番、気楽だと知ると、ついつい恋愛ゲームをやるのも面倒になってくる。
「痛いところを・・・・」
「自覚してればいいさ。」
「おまえ、じじいーず筆頭にツッコミなんぞするから袈裟懸けでバッサリ斬られるんだよ。うだうだしてるなら、八戒の手伝いをして来い。」
鷹が声をかけて、その場からハイネを逃れる口実を用意してくれた。これ幸いと、ハイネもスタコラとテントの中へ逃げ込んだ。
スイカ割の前に、メインイベントをやろうと、悟空とキラが、じゃんけんを始める。チームキラ対チーム悟空のリレー対決だ。
コンビやカップルは解体して、後はジャンケンで取り合うなんてことになる。ただし、あまり偏るとおもしろないから、ちゃんと、その辺りも考えてとる。
「えーっと、じゃあ、僕からね。僕がムウさん。」
「じゃあ、俺が虎さん。んでぇ、刹那。」
「刹那? うーん、じゃあ、アレルヤ。それから、カッパの人? 」
「おう、うちはイノブタの人な。あ、アスランは貰う。」
「うーん、アスランの代わりは、誰だろう? とりあえず、リヒティ? さらに、シン。」
「レイとダコスタ。」
「ハイネとラクス。」
「メイリンとフェルト。」
「クリスとクラウスさん。」
「あほライルとトダカさん。」
「僕が、ムウさんを取ったから、アイシャさんだね。それとヒルダさん。」
「俺はマリューさんとヘルベルトさん。」
「ん、ラストはマーズさん。」
全員を集めて、キラと悟空が適当に組み分けして行く。最終的に残ったのは、おかんとミニティエということになるが、こちらは待機要員だ。泳ぎたいと言ったら、泳いで貰うが、ティエリアに単独で25メーターはきついし、おかんは、そもそも泳げないし、むしろ泳がないでください、だ。
「本当に全員でやるんですか? 泳げない人は、どうするんです? 悟空。」
一部泳げないのも混じっているので、八戒が声をかける。
「ビート板か浮き輪で参加。25メーターだから、それぐらいならなんとかなるだろ?」
「そのつもりで組んでるから大丈夫だよ、八戒さん。」
競泳用のプールは、大人用の50メーターと子供用の25メーターがあるので、短いほうでやることにした。これなら、女性陣でも泳げるだろうという心配りらしい。
「俺、重いから遅いっすよ? キラさん。」
「うん、わかってる。その代わり、あっちにはライルがいるから。」
ライルもニールも、ほとんど泳げないことは判明している。半身が機械のリヒティと、浮き輪のライルなら、いい勝負だという判断だ。
「俺らは護衛なんだがな? キラ。」
マーズが、俺はやめろ、と、抗議するが、「さっきやりたかったみたいだから、一回くらい参加しなよ。」 と、悟空が言う。
「まあ、よろしいじゃありませんか。マーズさん。どうぞ、参加してください。」
護衛対象のラクスから、こう言われてしまうと、護衛陣も頷く。やりたくないわけではないので、許可があれば参加するのにやぶさかではないのだ。
「これが終わったら、スイカ割して、ちょうどお開きですからね。全力でやっちゃってください。」
「了解、八戒。」
「攻撃しちゃダメなのかい? 」
「ちょっ、ヒルダおねーさま、何する気? 」 と、悟浄が怯えた演技なんぞかましている。
「攻撃はなし。純粋にリレーで勝負。あ、応援は、やりたいだけオッケーだよ、ヒルダさん。」
「というか、コースはひとつ離してやるから攻撃は無理です。」
本気でも気楽にでも構わない。とりあえず、25メートルを泳ぎきってタッチすることだけがルールだ。それらを決めていると、マリューたちに連れられたニールとティエリアが戻って来た。ティエリアの頬には大きなルージュのキスマークが両頬についていて、当人はプンスカと怒っている。
すかさず、シンが、マリューとアイシャに説明して、コースへと案内する。両側に別れるから、チームごとで、そこは要相談だ。
「なんですか? 」
「全員でリレーをするんだ。ああ、きみとティエリアくんは応援。私も泳ぐから、まあ、見ておいで。」
「ニール、おしぼりです。」
「ああ、ありがとう、レイ。俺は目が覚めてたから助かったんだけどさ。あの二人、いきなり 「お目覚めのキスよ」 って、ティエリアを襲うんだから。」
レイが持って来たおしぼりで、こしこし怒っている紫子猫の頬を拭き取って、ニールも苦笑している。
作品名:こらぼでほすと プール2.5 作家名:篠義