こらぼでほすと 夏休み1
マイスター組プラスフェルトが、ニャーニャーと纏わりついて来るので苦笑しつつ、ニールも、はいはいと頷く。もうすぐ、宇宙へ戻ってしまうので、一緒に過ごせるうちは、一緒がいいとは思っている。
一日動き回った翌日というのは、一日休養というのが、ここんところの親猫の生活だ。翌日の朝の準備まではするが、そこからは、うだうだしている。ということなので、居間に刹那がガンプラを広げ、それを鑑賞するようにニールが陣取る。他のものは、洗濯だ。昨日の水着やらタオルやらがあるので、いつもより量が多い。フェルトとアレルヤは慣れたもので、それらを庭の干し場で捌いているが、ライルは、そこではなく回廊のほうの掃除を担当している。ティエリアは、本堂の座布団を表に持ち出して、布団叩きでパンパンしている。
働かざるもの食うべからずなので、全員が午前中は、こういう作業をすることになる。いつもは、ニールがやってしまうので、手伝うぐらいだが、今日はこちらでこなすことになっている。たまには、ゆっくりさせてあげたいからだ。
ライルが回廊の拭き掃除をして、ティエリアのほうの手伝いに出かけたら、すでに、そちらにアレルヤがいた。
「あとは? 」
「脇部屋に掃除機かけてくれる? 」
本堂の拭き掃除は、ほぼ終わったのか、アレルヤが両側の脇部屋を指し示した。
「ところでさ、今夜からハイネが来るらしいけど、どこで寝るつもりなの? 」
客間は、自分たち、脇部屋のひとつはニール、もうひとつはフェルトというようなことになっているので、空いているとすれば、ニールの部屋ということになる。まあ、ここんところ、アレルヤがいなかったので、ティエリアとフェルトもニールの部屋に居たから、脇部屋か゛空いているといえば空いている。
「はいにぇは、しゃんじょーのへやにゃ。いちゅも、そうしてりゅ。」
ライルとアレルヤは、坊主の出張は初めてだが、ティエリアは一度、この時期に降りたことがある。その時は、客間にニールとティエリアが寝て、ハイネは三蔵のベッドを使っていた。
「それなら、別に問題ないね。お昼はフェルトがパスタをするけど、夜はリクエストある? ロックオン。」
「リクエストねぇー。たまには、こってりと肉がいいな。あと、オニオンサラダとか? 要するに洋食ってやつ。」
「ああ、ここんち、基本が和食と中華だもんね。それなら、洋食で考える。午後からフェルトとティエリアと買い物に行って来るから留守番よろしく。」
「あいよ。・・・・・なんかおかしいよなあ。ちょっと前まで宇宙空間で生きるか死ぬかの騒ぎだったてぇーのにさ。ここで、晩メシの献立考えてるなんて。」
「ここは、休憩するためにあるんだよ? ロックオン。だから、これでいいんだ。」
「しょうら、にーりゅが、おりぃたちにふちゅうのせいかつをあたえてくれるにゃ。」
ここ以外では、気張っていることも、ここに来れば息をつける。そういう場所の管理人をニールはやってくれているのだ。あの人しかできないな、と、ライルも、それには同意した。
フェルトが、お昼に用意したのは、シーチキンと大葉たっぷりのスパゲッティと、レタスとトマトと豆腐のサラダだ。これに、ロールパンがついている。
「なかなか手際良くなったな? フェルト。味もいいよ。」
一口食べてニールが評価すると、フェルトが嬉しそうにニパッと笑う。ここんところ、ほとんど料理なんてできなかったのだが、腕は錆びていなかった。
「うん、これ簡単でおいしいよ、フェルト。」
「うみゃいじょ。」
アレルヤとティエリアにも好評だ。刹那は黙々と食べているが、食べているところからすると気に入ったらしい。
「サラダも栄養のバランスいいしな。ライル、おまえさんはビタミンを摂れ。タバコ吸ってる人間は、ビタミン不足するからな。」
「ちゃんとサプリメントで補っているぜ。それより、兄さん、あんたこそ、豆腐食え。」
わいわいと騒ぎつつ食事して一服すると、午後からの用事に取り掛かる。アレルヤとフェルトはティエリアを連れて買出し。刹那とライルは、このクソ熱い時間に境内で訓練をやり始める。
もうちょっと日が沈んでからのほうがよくないか? と、ニールは止めたのだが、砂漠育ちのマイスター組リーダー様は、これぐらいは大したことはない、と、おっしゃった。だが、北極に近くて白夜なんかのある地域出身のロックオンには、この湿気めためたの暑さは未体験で、すぐにへろへろと境内に沈んだ。
いつもなら、飛び出て介護してくれるはずの兄は、この時、午睡時間で現れない。もう死ぬ、と、砂利すら熱い境内に寝転んだら、上から温い水が降り注いだ。
「うわぁっっ。」
「熱射病には、これが効く。大人しくしていろ。」
「・・・いや、ちと違うんじゃね? ダーリン。」
確かに、全身にかかっているシャワーは気持ちいいが、とりあえず日陰に避難させるもんじゃないのか? と、ライルは疑問に思いつつ自力で日陰に移動する。しゃわしゃわと境内にくまなく水を撒いたら、ライルのダーリンは、そこで筋トレを始めた。もう好きにしてください、と、ライルは寝転んだまま、それを眺めていたら、アレルヤたちが戻って来た。その伸びている様子を、ハレルヤがからかう。
「だらしねぇーなー、それでもマイスターかよ。」
「俺は寒冷帯地域の人間だ。」
「けっっ、この程度で、それはいただけねぇー。おい、刹那、俺とやらねぇーか? 」
ハレルヤたちは超兵なので、暑さ寒さにも強いから、これぐらいだと気にならない。刹那のほうへ歩いていって、組み手をやろうと誘ってたら、刹那も喜んで、と、向かい合った。どっちも負けん気が強いから、とっても真剣だ。
「ロックオン、この荷物運んで。」
超兵が持っていた荷物なんてものは、フェルトには運べない。だから休憩中のライルに命じる。ライルのほうも、はいはいと起き上がる。すでに湿っていた衣服は乾いている。
今日一日は、マイスター組ぷらすフェルトとママでのんびりデーとキラたちが予定した日だった。たまには、他の人間抜きで休暇を楽しんでくださいということだった。それに、ニールが動けないから、それに合わせた。身内だけで、のんびりと過ごすのは、とてもいいと、誰もが思っていた。
のんびりとマイスター組ぷらすフェルトは、二日ばかり親猫と過ごして、そこから怒濤の追い出し大会に連れ出された。
初日は、水族館、翌日は遊園地、三日目はプラネタリウム、四日目は、オーヴまで遠征して海水浴という強行軍だが、脱落するやつはいない。ニールは三日目までは付き合ったが四日目は不参加だ。オーヴまでは、飛行艇で一時間という近距離だが、気圧変化があるから、ドクターが止めたからだ。四日目は、ぽつんと一人で留守番で、居間でテレビなんか見ていた。
作品名:こらぼでほすと 夏休み1 作家名:篠義