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こらぼでほすと 夏休み1

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 ハイネとしては、こちらに留まるつもりをしていたのだが、今日はカタロンの人間と顔を合わせる予定が先に入っていた。夜までには戻ると、ハイネも出かけてしまったので、本当に一人だ。こういうことは、久しぶりだ。寺にいると、ちょいとお勤めとかちょいとパチンコなんて用事で三蔵は姿を消すが、三時間もしないうちに帰って来る。

・・・・・・明後日には出航か・・・・・

 マイスター組は、エターナルと共に宇宙に上がる。それまでに派手に送り出しをしてやろうと、『吉祥富貴』の年少組は考えている。ここ何年も、こんな派手なレクリエーションを体験していなかったから、マイスター組ぷらすフェルトも楽しんでいる。

 外は朝から強烈な晴天で、洗濯ものも半日とかからずカラリと乾いてしまうほどだ。この晴天の中へ出かけていくほど、ニールも無茶はしない。

 居間にクーラーを入れて、そこで寛いでいる。誰もいないから、これといってやることもない。連日、子猫たちが掃除をしてくれたので、どこも汚れていないし、夜も食事してから帰ると聞いているから、準備することもない。こうなってくると、ニールは途端にモノグサになる。自分のために、わざわざ食事を作るのは面倒で、適当にお菓子でも摘まんで誤魔化そうと考えていた。

 そこへ、とりぃ、とりぃという鳴き声が聞こえて、自分の横にある卓袱台に、青い鳥が止まった。

・・・・あれ?・・・・・

 それは、半年前に虎に取り上げられたキラとお揃いのトリィというマイクロユニットだった。

「オソくなっテ、ごめんナサイ。アンディが忘れてイタのよ。」

 それから足音がして現れたのはアイシャだ。虎が取り上げたトリィは、アイシャが預っていた。それをアスランにメンテナンスしてもらって届けてくれたらしい。

 とりぃ、とりぃ、と、鳴いてちょんちょんとニールの横を飛び回る。刹那とニールの二人が持ち主という認識だ。刹那が、本格的に始動する時に、俺だと思え、と、渡して行ったものだ。だから、ずっと傍に置いていたのだが、それを見る度に、刹那の顔と重なって無事でいてくれ、と、祈っていたら、虎に取り上げられた。

 ちょんちょんと飛び回るトリィを、今は穏やかな気持ちで見ていられる。ようやく、終わって刹那たちが戻って来た。

「ツメタイモノがほしいワ、ニール。」

「ああ、ごめん。アイスティー? アイスココア? アイスコーヒー? 」

「アイスティーで、レモンたっぷり。」

「はいよ。」

 作り置きしているアイスティーに、生レモンをたっぷりと搾って差し出した。似たようなものを、ニールも作って相伴する。

「アイシャさんは、海水浴には参加しなかったのか? 」

「どっカの誰かサンが寂しくて泣くとイケナイから? 」

「俺は、そこまでガキじゃねぇーよ。」

「ソレと、一緒にランチしたかったカラ? どっカの誰かサンは、ヒトリだと食べないデショ?」

 くくくくく・・・っと笑ってアイシャは、ニールを見ている。付き合いも長くなってきたから、自分のためにはモノグサさんだということも知られてしまっている。

「リクエストは? 」

「あら、外へイキタイワ。気分的に北欧料理なの。」

「北欧? また、けったいなところを。・・・・目星つけてんのか? アイシャさん。」

 もちろんよ、と、アイシャは頷いた。たまに、見目のいい男と食事したくなる。自分の夫は何かと忙しくて、付き合ってくれない時に、ちょっと変わった料理をチョイスして誘うには、ニールは最適だった。その気が一切ないので、気楽な友人として付き合ってくれるからだ。普通は、お誘いすると、下心つきだと思われて迷惑する。そういう意味でも虎もニールは公認だ。

「じゃあ、戸締りしてくるから少し待ってくれ。ドレスコードは? 」

「軽くジャケットぐらい。」

 そして、きちんとエスコートもしてくれるし、マナーも完璧だから、どこでも付き合って貰える。ついでに美人なので、目の保養にもなる。


 ハイネが夕刻に寺へ戻ると、居間にはばったり倒れた人間が、二人いた。だが、ハイネの気配で一方は、がばりと起き上がって体勢を整えている。

「何ごと? 」

 卓袱台を挟んで、二人が倒れていたので、いかがわしいものはない。ないが、なぜアイシャまで昼寝しているのかが気になった。

「ニールとデートしてタノ。ワタシは、飲みすぎでダウン。ニールはシエスタ。」

 食事して、ちょっとウインドウショッピングして、また暑くなったから、カフェでアイシャは冷たいカクテルを頼んだ。ところが、これが、めっぽうに利く代物だった。おいしいからとガブ飲みしてヨッパライ状態になったアイシャを、早々にタクシーに投げ込んで寺へ戻ったものの、ニールも、その介抱をしてダウンしたらしい。

「あんたさ、一応、人妻だろ? その醜態はまずいぜ? 」

「ニールじゃなきゃヤラナイワ。」

「ま、そうだけどよ。」

「ナニカ用意してくれナイ? ハイネ。」

 すっかり酒が抜けて、いい頃合の時間だ。オヤツでも摘まみたいところだ。はいはい、と、勝手知ったるナントやらで、ハイネが冷蔵庫からシャーベットを取り出して、アイシャに渡し、自分も缶ビールのプルトップを捻り上げる。ハイネは、トリィトリィと鳴いているマイクロユニットの姿に気付いた。

「虎さん、忘れてたんだって? 」

「そうナノ。」

「まあ、終わってからも何かと忙しかったからな。耄碌じゃねぇーことは証明してやるぜ? アイシャさん。」

 戦闘が終わってからも、新たな連邦が構成されることの情報収集や、カタロンたちへの情報の提供など、いろいろとやることは多かった。前回は、この時点でこちらも手を引いたのだが、あれだと同じことになるから、と、キラが連邦樹立の話が固まるまでは動いていた。全ての国家を纏める連邦であるなら、以前のようなことはないだろうというのが、キラの考えだった。

「ワタシも参加してたカラ理解シテルワ。」

 アイシャもエターナルのほうで参加していた。だから、虎の忙しさは知っている。どうにか思う方向に落ち着いて、それを思い出した。というか、悟空に指摘されるまで、ぽっかりと頭から抜け落ちていた。

「今日は、青トリィを、綺麗な目でミテタ。だから、ダイジョウブ。」

 穏やかに、ちゅんちゅんと動いている青いトリィを、ニールは眺めていた。これなら渡してもいいだろうと、アイシャも思った。

「そりゃ、子猫どもが、総出で滞在してるんだからさ。そういうことになるさ。・・・・今日、虎さんはラボで泊まりだろ? アイシャさんは、どうする? 泊まる? 」

 まだ、悟空の部屋があるから、アイシャが泊まると言っても、問題ない。だが、さすがに、そこまではしない、と、アイシャは断った。

「帰るワヨ。でも、食事はスル。」

「じゃあ、軽く飲みつつ、ママニャンが起きるのを待つか。」
作品名:こらぼでほすと 夏休み1 作家名:篠義