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こらぼでほすと 夏休み1.5

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「会いに来てくれるなら歓迎するさ。」

「行けるなら連絡する。」

 エアポートの送迎デッキで、そこから離陸していく飛行機を眺めて、二人して話していた。他のメンバーには、ホテルで挨拶してきたし、すでに、第一陣は飛行機で離陸している。クラウスが表立って動くことになると、ライルも接触は難しくなる。元々、友人だが、テロリストなので素性を調べられるとまずいなんてことになるからだ。

「俺たちが望む方向に世界を導けるように尽力するさ。」

「まあ、ごり押しとかは、俺の管轄になるんだろうな。」

「アローズのような物騒なものは作らせない。それは約束する。」

「そうか? そのうち、どっかが作るに決まってる。大国の威信とかなんとか言いやがるのさ。・・・・ま、その時は叩くけどな。」

 国家とか政治家というものをライルは信じていない。大義名分を振りかざして、ちっぽけなものは破壊する。ライルは、それを経験したから、反政府組織の活動に身を転じた。クラウスは理想主義だから、現実とのギャップというのは生じる。そこは、自分たちのテリトリーだ。戦争というものを根絶するために、武力介入して、戦争を引き起こしたものを叩き潰す。これから、一生かかってやっていく。

「お互い、気をつけような? ライル。」

「俺は大丈夫だ。あんただろ? 暗殺されんなよ? 」

「悪運だけは強いんだ。」

「まあな。・・・・・・またな、クラウス。」

「ああ、ライル。」

 そろそろ、搭乗便のファイナルコールの時間だ。最後までは見送らない。そこには、プレスたちもいる。だから、わざわざ、ここで挨拶をしていた。

「スポーツには付き合うから、そのつもりで連絡してくれ。」

「うん、それは助かるな。欲求不満の解消には是非、利用させてもらう。」

 じゃあ、と、クラウスは踵を返す。それを見送って、ライルのほうも違う扉から入り、空港を出る。これで、しばらくは会うこともないだろう。拠点が、宇宙と地球では接点はない。

 つけられていないことを確認して、ライルも寺への帰り道を辿る。本当に遠いところまで来たなあーと、しみじみと思いつつ、モノレールに乗り込む。そこへメールが着信した。相手は、兄で、「メシは? 」 なんて内容だ。

・・・・・なんかほっとするな・・・・・・・

 ここにいると、ただの日常を送れる。明日からは、普通じゃない。気持ちの切り換えは明日、エターナルに乗り込んだらする。そこまでは、こののんびりとした普通の日常がある。それは、以前にはなかったものだ。以前は、ずっと普通ではない状態で暮らしていた。そう考えると、この生活も案外、楽しいとは思える。

「ごはん何? 」 と、メールしたら、「カレーうどん」 なんて返事される。「食べる。」 と、返信して、肩を震わせた。『吉祥富貴』は普通ではない。だが、ただの普通の日常と、普通じゃないのが同居しているおもしろ空間を行ったり来たりしている。そこの普通の日常を担当しているのが、ニールだ。

 ここに戻れば、テロリストだという事実も、守秘義務も全部、放り出して寛ぐことができる。刹那が、兄から離れないのは、その空気に触れていたいからだ。

・・・・・明日からは、俺が独占だけどね・・・・・・

 組織に戻れば、相棒は自分で、刹那もリーダーの顔に戻る。そうなれば、完全独占状態だ。そう考えたら、組織に戻るのも悪くない。


 ライルが、寺へ戻ると、すでに食事は終わったらしくデザートタイムに突入していた。とはいっても、夏の定番のスイカだ。テレビの前で、刹那たちはスイカをたべていてる。ティエリアは、アレルヤが種を取り除いてスプーンで赤い果肉部分を口に運んでいる。

「おかえり。着替えてこい、ライル。」

「このままでいいぜ? 」

「いや、Tシャツとか洗濯しやすいののほうがいいって。」

「いいよ、もう、面倒だし、メシ食ったらシャワー浴びる。」

 外出から帰って、汗を掻いたからからの提案だろうと、ライルは流したのだが、うーん、と、兄は上から下にライルを眺めてから、まあ、いいよ、と、卓袱台に座るように指示した。なぜか、そこにはお忙しい某国の国家元首様がいらっしゃって、スイカに豪快に齧りついているが、気にしてはいけない。

「じゃあ、これ、前にかけとけ。」

 大振りのスポーツタオルを渡されて、卓袱台には、スパイシーなカレーうどんが現れた。うひゃーと食欲をそそられて、食いついたら汁が飛びまくる。

「・・・・あ・・・・・・」

 膝に置いていたスポーツタオルの意味を、それで知ったのだが、すでに、お気に入りのシャツには黄色のシミが飛び散っている。付け合せのサラダなんかを運んできたニールは、その惨状に、あーあーと呆れた声を上げている。

「だから、前にかけろって言ったのに。」

「クリーニングすればいいよ、兄さん。」

「落ちにくいんだよ、それ。・・・・まあ、漂白してみるから、そのまま食え。」

 アチアチのカレーうどんはスパイスが効いていて、食欲の減退しそうな暑さでも食べられる代物だ。ただし、ものすごく辛いので、ニールが運んでくれた水は、すぐになくなってしまう。アレルヤが気付いて、水を運んでくれた。ニールは、フェルトたちのほうにアイスティーを用意している。

「辛いけどおいしいだろ? ロックオン。」

「美味いわーこれ。・・・・けど、これって・・・ティエリアは食えたのか? アレルヤ。」

 どう考えても、これはティエリアには無理なんじゃ・・と、思ったら、ちゃんと違うものだったらしい。

「ティエリアのは、スパイスのないのだったよ。クラウスさんたちは帰ったの? 」

「ああ、全員、帰った。」

「僕らも明日だ。なんか楽しい時間は、あっという間だ。」

「うん、また帰ってくればいいさ。・・・・どうせ、おまえとティエリアは、すぐに降りてくるんだろ? 」

「でも、次は打ち合わせがメインだから、ゆっくりしてられないけどね。」

 組織の事後処理は残ったままだ。そちらを片付けなければならないし、新しい機体のロールアウトまでは実働しないといっても、訓練やトレーニングは必要だ。

「アレルヤ、こっちで飲むのか? 」

「ううん、あっちに行く。」

 卓袱台の前に座っていたアレルヤに飲み物を渡すと、ニールが入れ替わる。お代わりもあるよ? と、微笑んでいる兄は、ちょっと寂しそうだ。

「やっぱり、俺がいないと寂しい? 」

「寂しいんだろうな。こんなに、ゆったりした気分に慣れたのは、久しぶりだったしな。おまえとも、こんな距離で話せたから。」

「まあまあ、ちょくちょく帰ってくるからさ。」

「いや、ちょくちょくは無理だろ? たまにでいいさ。」

「俺単独の時でいいけど、二人で出かけような? 」

「はあ? いい年して双子で外出は勘弁してくれ。」

「それ、差別だぜ? 兄さん。刹那とはデートしてやったじゃんか? 俺とは大人のデートで、よろしく。」

「あのさ、いい年した双子で並んで外を歩くなんて悪目立ちすぎだろ。それなら、刹那とデートすりゃいい。」