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町内ライダー

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「警視庁の芦河ショウイチさんです。SAULの第二班に所属なさっているんです」
「あー、じゃあ、G3‐Xを」
 津上翔一は得心いったように頷いた。
「あれは結構楽しいですよね。また機会があれば着たいなぁ」
「津上さん、あれは遊ぶ為に着るわけではありません!」
「分かってますってば、冗談ですよ」
 裏も表もなさそうな陽気な笑顔で津上が言い、氷川が嗜めた。
 楽しい……?
 言われたことの意味が掴めず、芦河は困惑した顔を見せた。
「……ええと、津上さんは氷川さんの部下か何かだったのでしょうか? それでG3‐Xを?」
「俺が? 氷川さんの? あっははは、まさかそんな」
「こんな部下がいたら、僕の胃に穴が開いてしまいます」
「氷川さんの胃には穴は開かないでしょー」
「……どういう意味ですか」
 またコントが始まりかけているが、それより津上翔一だ。
「……お二人はどういうお知り合いで?」
「戦友です。俺がアギトで氷川さんがG3‐Xで、ねっ」
 津上は、あっけらかんとした声で質問に答えた。
 へぇ、と流しかけて、芦河は言われた内容を漸く把握し、びっくりして津上の顔をまじまじと眺めた。
「……アギト?」
「そうですよ、俺アギトです」
 口が開いたまま塞がらないのが自分でも分かった。芦河の口からは驚いて言葉も出なかった。
 何で、こんな、陽気なんだ……?
「じゃあこの……アギトの会って……」
「俺が会長です。もしお知り合いに、悩んでるアギトがいたら、是非紹介して下さい! 俺が悩んだ経験とか、役立てられると思いますから」
 この男にも、思い悩むということがあるのか。
 いやそれは人間だから、生きていれば悩みは尽きないだろう。こんな悩みなどなさそうに笑っていても、実は深く思い悩む事もあるのかもしれない。
 しかし、だけれども。アギトとは、こんな、職業はコックです、とでも自己紹介をしているようなノリで、口にできる事だったのか。
 自らの生き方について問い直す必要を、大いに感じる。芦河は、息を深く吐いて、ハンバーグを一口、口に運んだ。
「仲間がいれば励まされる事も多いですからね。一人じゃないって思えるだけでも大分気持ちも楽になります、きっと」
「そうそう。氷川さんもたまにはいい事言うんですね」
「なっ……失礼な! 僕だっていい事位言います!」
 またコントが始まりかけている。
 氷川は芦河がアギトである事を知って、励ます為にここに連れてきたのだろうかとふと考えたが、氷川ならそれを知れば、回りくどい事をせずに、直接自分の言葉で励まそうとするだろうと思われた。
 まあ何にせよ、アギトもそう悪くないのかもしれない。気の持ちようで、楽しくなれるらしい。
 陽気に笑う津上翔一を見つめて、悩めるアギト・芦河はぼんやりとそんな事を考えた。
作品名:町内ライダー 作家名:パピコ