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町内ライダー

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 インビジブルのカードを使おうか。
 一瞬そんな事を考えてしまった。とにかく、顔を合わせたくない相手が目前にいる。
 まだ気付かれていないはずだ。そう考え、海東大樹は足早にその場を通り過ぎようとした。
「大樹! 大樹じゃないか!」
 だが相手もさる者、見逃してくれる筈もなかった。
「……兄さん、こんな所で何してるの」
 兄さん――つまり、海東純一は、黄色い化繊のジャンバーを羽織り、首から紐付きの募金箱を下げていた。
「見て分からないか。全ての人が笑顔でいられる平和な理想の社会の実現……それに向けて行動を起こしているんだ!」
 よく見知った(張り付いたような)満面の笑みで、にこやかに純一は答えた。それを大樹は、実に胡散臭そうに見つめた。
「……ふぅん、行動、ね。ま、どっちでもいいけど。あんまり騒ぎは起こさないでね。『平和』を乱されたら困るんだ」
「募金はしていかないのか?」
「……何で僕が」
 兄さんの活動資金を、と後ろの言葉は言わず、大樹はそのまま純一に背を向けて歩き出した。
 勿論そんな言葉を純一が聞き入れる筈もない。また満面の笑みを浮かべて、道行く人に募金を呼び掛け始めた。
作品名:町内ライダー 作家名:パピコ