町内ライダー
その13
確か、こんなシーンがアニメであったような気がする。
夜、仕事が終わって帰ろうとする少年。ふと空を見上げると、青い光がゆっくりと舞い降りてくる。
空から少女が降ってきたのだ。
きしめんを思わせる前髪の少年が『みんなー、地球はいい所だぞー』と月に向かって叫んだり、サングラスの人が『月は出ているか』と副官のお姉さんに聞いたりするのは、またそれぞれ別のアニメだ。
しかし、今葦原涼が置かれている状況は、そんな詩的なものではない。
何で空から人が降ってくるのか?
その謎は、永遠に解き明かされる事はないだろう。薄くなる意識の中、涼の胸には確信に近いそんな思いが浮かんだ。