町内ライダー
「警視庁から各局、指名手配中の脱獄犯・浅倉威と、ワームと呼称される未確認が出現したとの通報。付近を警邏中のPCは至急現場に急行せよ。未確認生命体対策班へ、G3システム出動を要請」
「G3OP了解、至急現場へ急行します」
無線のスイッチを上げて応答して、すぐにスイッチを切り、小沢澄子はきびきびとした動作で振り向いた。
「Gトレーラー出動よ! 各員配置について!」
鋭い号令に、未確認生命体対策班第一班の構成員――氷川誠と尾室隆広、そして照井竜は、表情を引き締めて頷いた。
トレーラー後部格納庫へと移動した氷川は、小沢と照井に補助されて、G3‐Xのプロテクター装着を完了。跨ったガードチェイサーが後部ハッチから排出される。
「では、俺も行く」
「頼んだわよ」
『Accel』
「変……、身!」
小沢の言葉に力強く頷いて、照井はガイアメモリを起動。予め腰に巻いていたベルトへとセットし、ハンドルを捻った。
『Accel』
影が浮かんだ照井の全身を、炎にも似た光が包み、赤い仮面ライダー――アクセルが姿を現す。
アクセルは開いたままの後部ハッチへと駆けながらその姿をバイクへと変形させ、体を横に倒しアスファルトにこすって、急角度のUターンに成功すると、猛スピードでGトレーラーを追い抜いて、ガードチェイサーを追っていった。
「何回見ても気持ち悪いわよねあれ……一体どういう仕組みになってんのかしら」
閉じられていく後部ハッチの向こうを見つめながら、小沢が独りごちた。
どうなっているのかを質問すれば「俺に質問をするな」と返され、変身した状態の体を調べるのも、あのガイアメモリとかいう物を調べるのも却下された。
そもそも照井竜が、何故この未確認生命体対策班に配属されたのかが、全く分からない。G3システムは小沢・氷川・尾室の三人で十二分に運用できるし、小沢には何の相談もなく、唐突に決まった人事だった。
結果として、照井が「仮面ライダーアクセル」なる戦士に変身可能で、G3‐Xとの協力により、未確認アンノウンその他の脅威に対抗する大きな力となっているため、結果オーライではあったのだが、釈然とはしなかった。
何とも釈然としない。突然の決定に驚いた小沢が食って掛かると、その人事を承認した当の本人までもが釈然としない顔つきで、これはもう決定事項だから、と、半ば首を捻りながら告げた。
考えようとしたところで、材料がないのだから何も検討出来ない。
軽く息を吐くと、小沢はオペレーター席へと戻っていった。