町内ライダー
頼れる相手として思い付くのは、現在、只一人ブルマンに懐かれている常連客。彼以外思い浮かばなかった。
「……ブルマンに好かれる、方法……ですか?」
玄関先で来客を迎えた紅渡は、明らかに困惑して首を捻った。彼を見守る剣崎と剣立の表情は、揃いも揃って、飼い主を全幅の信頼を持って見上げる忠犬のような真っ直ぐさと真剣さに溢れていた。
「……そんな事言われても、僕も別に何かして懐かれたわけじゃないんです。お役に立てなくて申し訳ないんですけど……」
渡の言葉に敢えなく望みを砕かれて、二人は揃って同じ様に眉を下げて、はぁ、と息を吐いた。まるで一卵性双生児のような絶妙の呼吸を見せられるが、渡がアドバイス出来る事は残念ながら何一つない。
溜息と困惑が立ちこめる紅家の玄関先、そこに、陽気な羽音が響いた。
「まぁ待てよ渡。せーっかく頼られてんだぞ、ここは男を見せてやれ!」
渡の耳元で滞空するキバットを見て、初対面の剣立はぎょっと目を見開くが、渡も剣崎も、この不可解な蝙蝠について剣立に解説しようとはしなかった。
「またそうやって、キバットは自分の事じゃないからって無責任だなぁ……」
「ふっふっふ、俺様に妙案あり! 困った人を助けるのはヒーローの大事な仕事だぞ!」
「キバットの妙案って……嫌な予感しかしないんだけど」
キバットの自信に満ち溢れた言葉に、渡は眉を顰め、剣崎は怪訝そうに首を傾げた。剣立は藁にも縋る思いなのか、必死な顔つきでキバットを見つめていた。