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魔王と妃とその後の魔界

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「ごめんなさい…。バイアスさんはラハールさんの事、色々話してくれるからつい………」
 今回もそういうお話かなぁって。
 上目遣いでもごもごとフロン。
 勢いに流されて連れ出された様なものではあったが、その時点ではプリニーが一匹だ。フロンでも、何とでもできた筈である。
 だがそのままついて行ってしまったのだから、やはり怒られて当然だった。
 普段から魔界に住んでいるにしては無防備すぎるきらいはあるが、特に身内の様な者であるバイアスに呼ばれたりすると、フロンは弱い。
 ラハールはあまり昔の話や自分の話はしてくれないので、ついつい聞きに行ってしまうのだ。
 それでラハールが怒ってしまう事もあるのだが、ラハールの事をもっと知りたいと思ってしまうフロンには、それをやめられない。
 聞けば渋々ながらも話してくれるラハールだが、どうしても照れがあるのか、あまり深くまでは教えてくれなかったりするので。
 それはエトナも知っているし解ってもいるが、だからといって言葉が出るのは止められない。
「でも、プリニーに言われてでしょ?あの方なら本人が来るのが常なんだから、せめて確認取るか、あたしに言ってからにしてよね!!」
「はい………ごめんなさい、エトナさん」
 腰に手をあてて怒るエトナに、しゅんとしてフロンが謝る。
 まるで母親と子供の様だ。
「まぁまぁ、そこらへんにしておけ」
 苦笑しながらラハールが宥める。
「殿下もフロンちゃんに甘すぎると思いますけどねー」
 じろり、と睨まれ、ラハールの苦笑が深まる。
(それはお前も同じだろうが)
 そう思うが、口には出さないでおいた。
 エトナの機嫌をこれ以上悪くするのも面倒臭い。
 それに、不敬そのものなこの態度も微笑ましいと思ってしまっている。
 なんだかんだ言って、エトナはフロンを心配してこんなにも怒っているのだから、苦笑以外の何ができようか。
「しかし、お前も知っているだろう、フロンに施した“保険”は」
「…そりゃそーですけどー…」
 エトナが口を尖らせ、ぶちぶち言っている。
 現魔王と大天使と先代魔王の力がこめられた“保険”だ。
 心配なんてするのが馬鹿らしい程に強力なのは解ってはいるが、感情は納得しないのだから仕方が無い。
「しかしいい蹴りだったな!!」
「キレイに決まりましたからねぇ…」
 からからと笑って言うラハールと、困った様に、曖昧な笑みを浮かべながらフロン。
 エトナに飛び蹴りされた悪魔はその一発で昏倒し、今はプリニーに介抱させている。
 因みにフロンを連れ出したプリニーは金で雇われただけの様で、この場にフロンを置いてすぐにどこぞへと消えたらしい。
 まぁ無理だろうが、もし見つけられたら捕まえて百年はタダ働きさせてやろう、と心に決めつつ。
「……で?どーすんですかこいつら?」
 溜息を吐いて、エトナが悪魔達を見回す。
 妃の下につくと言った連中は、その妃を叱る腹心の登場に戸惑い気味だ。
 だが、なんとなくその関係性も知れたらしく、それぞれに納得してたり苦笑してたり微笑ましそうにしてたりする。
 本来の凶暴性などが見えないのはフロンの“保険”によるものだろうが、実に穏やかな空気だった。
「まぁ、一応部下扱いにしておけ。日を置いて、それでも敵に回る気が無いのであれば、それなりに役職も与える」
「了解です。で…陛下がフツーにぶちのめした連中の方は?」
 一応悪魔達の前なので陛下呼び。よくできた部下である。
 …先程の殿下呼びは気にしない方向で。
「プリニー達を向かわせておけ。殺してはおらんが、手当ては必要だろう。拒否する様なら捨て置け」
「わたしが魔法をかけに…」
「いらんいらん。数も多いし、それ以上力を使うとぶっ倒れるぞ」
「そーよ、フロンちゃん。王妃様がそんなに力を安売りするもんじゃないわ」
「そういう問題じゃないと思うんですけど……」
「とにかく、一旦城に戻るぞ」
 眉尻を下げるフロンの言葉を黙殺し、ラハール。
「……そういえば、城は空か?」
「あ」
 思わず声を上げるエトナに嘆息し、
「まぁよかろう。万一乗っ取られていたとしても、取り戻せばいいだけだしな。…おい、貴様等。他に戦力は無いな?」
 未だ呆然と事の成り行きを眺めていた兄弟悪魔を振り返る。
「は、はいっ!!ありません魔王様っ!!」
 ラハールに問われ、慌てながらも答える弟。背筋を伸ばして緊張しまくりだ。
「……ねえよ。降参だ、魔王様」
 兄は溜息を吐いて、両手を挙げた。
 疲れたのかダメージが酷いのか、地面に無造作に座りながら、だ。
 それでも開き直ったかの様に、自然体でそこにいる。
「……使われていた方が堂々としているな」
 ラハールの言葉に、兄が力無く笑う。
「今更取り繕う体裁もねえよ。弟に使われて殺される所だったとか、みっともねえったら…。それでこの展開だ。抵抗する気も起きねえよ」
「ふん……。で?オレ様の部下になる気はあるか?」
「ああ、こんな命で良けりゃ、好きに使いな」
「潔いな」
「元々根が単純でね。自分より強い相手には従うさ」
「そういう単純さは嫌いではないぞ。だが、どうせなら下克上を狙ってみるがいい。野望を持たん悪魔など、面白くも無い」
 にやり、と笑いながらのラハールの言葉に、兄は意外そうに目を瞬かせ。
「……お妃さん。アンタの旦那、面白いな」
「ふふっ、困ったひとです」
 声を掛けられたフロンは、言葉とは裏腹の柔らかな微笑みを浮かべてそう答えた。

 その様子を眺めつつ。
「……だっせえわねー、アンタ」
「………すいませんね」
 エトナに言われ、弟は拗ねた様に口を尖らせていた。



 そして城に戻れば、そこにいたのはバイアスと。
「皆!?」
「あ、せんせー!!」
「先生だー!!」
 教会に住む子供達だった。
 フロンの事は先生呼び。結構懐いている様で、口々にフロンを呼びながら集まってきた。
 城の周辺には、倒れてぴくぴく痙攣している悪魔達。
「おや、お帰りなさい。思ったよりも早かったですね」
「……何があった?」
「城より先に、教会を狙おうとする輩がいましてね。ちょっとしたレクチャーをしながら、城へ避難誘導ですよ」
「教会を!?」
 バイアスの言葉に、フロンが声を上げた。
「……いい度胸だな」
 ラハールの声に殺気が混じるが、
「まぁ、教会の存在が気に入らないとチョッカイ掛けようとしただけのチンピラ集団でしたからね。子供達に馬鹿のあしらい方を教えながらお灸を据えてあげただけですよ」
 バイアスは呆気無いものでしたよ、と気楽そうに笑った。
「そんな……。皆、大丈夫だった?」
 だがフロンはショックだった様で、心配そうに子供達に問い掛ける。
「大丈夫だよ、せんせー」
「あいつら、オレらが羨ましいだけだぜ、絶対」
「タダ飯食いてーなら先生の授業受けろっての」
「大体陛下に直接喧嘩売る事もできないヘタレだもん、怖くないよー」
 子供達は何も気にしていない様に、一様に笑っていた。
「いやー、ホント逞しいわね、このガキ共は」
 エトナが感心した様な、呆れた様な口調で言う。
「でも、世話役に置いてたプリニー達は?…あいつら逃げやがったか…?」