比翼連理 〜 緋天滄溟 〜
「―――始まったか」
緑の木々の隙間から伝わってくる気配にタナトスが顔を向けて呟いた。こくりとアテナも頷き、遠く耳を澄ます。
「ええ。激しい力―――ぶつかり……流して…...受け止めて。また、ぶつかる。ふたりはまるで……互いに欠如していた意思や……感情を伝達し合っているみたい」
「コミュニケーションをはかっている、か?」
「私には……そう感じる」
太古の森の奥深く、繰り広げられているハーデスとシャカの戦い。
『―――始まりがあれば、終わりもある。
歪んでしまった意思の秩序に……終止符を打たねばならぬのです』
シャカの静かな決意。
否、それは……希望なのだと思った。
本人はどこまで理解しているか、わからなかったけれども。
シャカはきっと、シャカ自身の意思で終点ではなく、始点に立ちたいのではないだろうかとアテナは思った。
だから、手出しはしない。
彼ら自身のために。
作品名:比翼連理 〜 緋天滄溟 〜 作家名:千珠