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ooo aftre ~夜天の主と欲望の王~ 第10部

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046話 友達と叶わない欲望と見たことのある光景





「太郎、寒くない?」

「う…うん…」

「太郎、歩き疲れてない?」

「うん…」

「太郎、お腹すいてない?」

「う…」

「太郎、トイレは大丈夫かな?」


「どんだけ過保護なんだッ!!!!」


フェイトとアンクは太郎という男の子を引き連れて、彼の母親を探していた。
あれからだいぶ探したのだが、手がかりすら見つけることができなかった。


「どうしよう、アンク。全然見つからないね」

「あぁ、まぁこんだけ大きなところだったらなぁ…」

「えっ…お母さん見つからないの?…うぅ…」


太郎は再び泣き出してしまった。
フェイトは焦り出し、アンクはイラつき始めてしまった。


「おいガキ!さっきも言っただろうが!!男なら泣くな!!」

「うぅ…だって…だって…」


アンクはため息をし、手を頭に乗せた。
なにか良い提案はないか…


「…おい、お前たち。あそこに行くぞ」

「え?」

「アンク?…あれって」


アンクが指差した方向にあったのは、大きな野外ステージがある場所だった。
そこではちょうどヒーローショーがやっていた。


「ガキ…」


「ん?」
「なに、アンク」


「いや、お前じゃなくて…太郎。お前、ガキなんだからあぁいうの好きだろ?」


太郎は涙を拭きながら頭を縦に振った。


「だったら、気分転換にあれ見に行くぞ、少しは落ち着くだろ?」


アンクはそっぽを向きながらそのままスタスタと野外ステージへと歩いて行った。
二人は駆け足気味にその後についていった…。






−ついに見つけたぞッ!!バーゾックッ!!!!−

−くそぉッ!!メカ~~~レンジャーめぇッ!!!!−



「…なんなんだ、ここはガキのお遊戯会か?」

「…か、かっこいい!!」

「いけぇぇぇッ!!メカ~~~レンジャー!!」


アンクは後悔した。
とっさの判断とはいえ、今まで以上に居心地が悪かった。

周りは太郎と同い年ぐらいの子供達に囲まれて、暴れている子供たちの手や足がさっきから体中に当たる。ここで怒鳴りたいぐらいだが、その子供たちの親の目が少し怖い…。


フェイト自身も「さ、流石にこれは…」とは言っていたものの、いつの間にか目を輝かせ、終いには手に力を握り、自分より小さな男の子達と一緒に応援していた。

太郎は先ほどとは見違えるほど元気が戻り、今まで聞いたことのない大きな声で戦隊ヒーローを応援していた。




−ついに、ついに僕たちはバーゾックを倒したッ!!!!−

−みんなぁッ!!応援ありがとう!!!!−

−じゃあ最後はこれで決めるぜッ!!



戦う交通安全ッ!!電走戦隊ッ!!メカァァァァァァァァァァァレンンジャァッ!!!!−



戦隊ヒーローの決めポーズが決まり、会場中は一斉に歓喜が起きた。

アンクは無表情で両手で両耳を塞いでいた。






………

「太郎、かっこよかったよね!」

「うん!僕も大きくなったらメカ~~~レンジャーになりたい!!」

「くそっ…もうクタクタだぁ…」


ヒーローショーが終わり、3人は再び宛のない母親探しを続けていた。
アンクは先ほどのテンションについていけず、ぐったりしていたが、
読み通り太郎が泣くことを辞めたのでこれはこれでまぁ良しとした。


「ねぇお姉ちゃん!僕あれに乗りたい!」

「うん、いいよ」

「お、おいちょっとま…」

「いくよ、アンク!」

「おい!ふざけるなぁッ!!!!」


そのまま3人は当初の目的を忘れ、様々なアトラクションを楽しんだ。
…アンクはフェイトに無理やり乗せられていたのだが。


「た、太郎…この船やっぱりやめよう…」

「ダメだよ!僕これ乗りたい!!」

「ふんッ!ただ90度に動くだけの船のなにが楽しいんだか…」






「お姉ちゃん!助けてぇ!!お、降ろしてよぉ!!」

「ふふっ!こういうのだったら私好きだな!」

「ふんっ…ただの空中ブランコじゃねぇか…」






「アンク…本当にここから出れるの?」

「行き止まりばっかりだよ、お姉ちゃん…」

「ばぁか、迷路の攻略法は左の壁に沿って歩けばいつの間にか出口についてるもんなんだよ」








気づけば時刻も4時半を周り、空には夕日が昇っていた。
3人は遊び疲れ、またまたベンチに腰掛けていた。


「今日は楽しかったよ!ありがとう、お姉ちゃん!それに恐い人!」

「うぅん、私も楽しかったよ、太郎!」

「おい、俺だけ呼び方おかしくねぇか?」


3人は再びアイスを舐めていた。
そんな時、太郎が悲しげな表情をしていた。


「太郎?どうしたの…あ、そうだったね…お母さんに…」

「うぅん…違うんだ」

「あぁ?なんだ、ガキ」


太郎は一気にアイスを頬張り、口元を拭って、フェイトの顔を見つめた。
目尻には涙が溜まっていた。


「僕…友達いないんだ…だから、今日みたいにお姉ちゃん達と遊んだのも初めてだったし…」

「太郎…」

「………。」


太郎には友達が一人もいなかったのだ。
その内気な性格のため、なかなか自分から身を乗り出すことができず、
結局学校でも一人、家に帰っても遊んでくれるのは家族だけ。

…ずっと一人だったのだ。








「太郎…そっか、太郎も『私と同じ』だったんだね」

「え、…おねいちゃ…」









フェイトは太郎を抱きしめた。
そして優しくその頭を撫でてあげた。


「私もね…ちょっと前までは一人だったんだよ。ずっと一人で頑張って…母さんに認めてもらいたくて…でも、今は違うよ」

「え…?」


フェイトはそのまま話し続けた。
アンクは何も言わずただ見ていた。


「私にはね…素敵な友達が沢山できたんだ…、ちょっと喧嘩しちゃったこともあったけど…今は一人じゃない…だから…大丈夫!」



フェイトは太郎から離れ、手を差し伸べた。



「太郎にもいつかきっとできるよ!…うぅん、私が太郎の友達一号!」


太郎はキョトンとし、少し涙ぐんだ。だがそれを咄嗟に吹き、力強くフェイトの手を握った。


「ありがとう…ありがとうお姉ちゃん!」

「太郎……」































「でも、お姉ちゃんと友達になることは…できないんだ…」

「……え…」


太郎はベンチから立ち、すこし前に歩いてこちらに振り向いた。


「僕、転校しちゃうんだ…それも明日にね…」

「そ…そんな…」


フェイトの愕然とし、身体が動かなかった。
せっかく目の前の子をどん底から救えると思ったのに…。


「ありがとう…お姉ちゃん…。次の学校じゃもう、僕を知っている子なんていないし…僕もこんなんだから…多分友達も出来ないと思う……だけどね?この海鳴で最後にお姉ちゃん達に出会えてよかったよ!!」


「た…たろ…」


「本当にありがとう!!…これからもお姉ちゃん達のこと…」
















「はんっ!!ばかばかしいッ!!!!」














今まで無言だったアンクがついに身を乗り出した!
突然のアンクの行動に二人は驚き、声が出なかった。