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ooo aftre ~夜天の主と欲望の王~ 第11部 前編

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一体どういう…ッ!!




「あ、えっと…、ははっすいません!入るお店間違えましたぁ!!おさがわせしてすいません!!」


映司は再び頭を深く下げ、そのまま店から出て行った。
二人は腑に落ちない表情で、ただ、今出て行った青年を窓越しからじっと見続けた…。





「はぁ…はぁ…」

映司は はやて が待っている家へと走っていた。
そして、家の門の前へと立ち、そこで立ち止まってしまった。


「そっか…、皆、どういうわけかわからないけど…俺のこと忘れちゃったんだね…ははっ…」

映司は玄関を開け、家の中へと入った。
そこには、二人分の昼食を作っている はやて の姿があった。


「あ、おかえり映司さん!!なんやえらい早かったなぁ。もうちょっとでできるからテレビでも見て待っててや!」

「えっと…うん!」


はやてちゃんも…いつか俺のこと忘れちゃうのかな。




………

「ほな、いただきます!」

「いただきます!」


映司の目の前にはご飯とおかずが並べられていた。
はやて曰く、すべて「味抜き」らしい。

それは はやて のものも同様だった。
つまり、はやて は映司の味覚がないことに合わせた上でわざとこのようなことをしたらしい。

映司は無理しないで…と伝えたかったが、彼女の最大限の気遣いに感激し、思わず泣きそうになった。
そのまま映司はがむしゃらに目の前に並べられたものを次々と食べていった。

「ふふっ、…なぁ映司さん」

「えっ、なにはやてちゃん?」

「なんかぁ…寂しくないかぁ?」


周りには、いつもいた『家族』はいなかった。



いつもだったら、ヴィータが映司のおかずをこっそりと盗んでいた。
それをみたシグナムが雷を落としていた。
ザフィーラさんは何も気にせずただ食事を食べていた。
シャマルはその二人のやり取りをみて笑っていた。



皆、いない。





「そうだね、でも皆も忙しいから一緒に我慢しよう?」

「…せやな。それに今は映司さんがいるし!」

「さてと、昼からは石田先生の定期健診!俺も一緒に見てもらわないとね!」

「せや!はやく片付けしないと…」




………


「お久しぶりね、はやてちゃん!…あら、今日は映司さんだけなんですか?」

「はい、今日は皆忙しくて…」

「ふふっ!だから今日は映司さんとラブラブな夫婦生活送っとったんやでぇ!!」

「ちょ!こ、こら はやてちゃん!!」


映司達は病院に来ていた。
診察室には はやて、映司、それと はやてのかかりつけの石田先生の3人がいた。


「今日も はやてちゃんの脳内は正常ね!…さてと、問診始めますから、映司さんは退室してくださいね」

「え、なんでですか?」

「…映司さん。デリカシーなさ過ぎや…」


はやて は顔を赤くし、そっぽを向いてしまった。
映司はようやく気づき、足早に診察室から退室した。


「全く、これだから男の人は…さて、はやてちゃん服脱いでね」

「は、はい…」


それから数十分経った。
映司は暇だったので待合室にあった小説や外の風景をぼんやりとしながら見ていた。

そして、診察室から検診を終えた はやて が出てきた。


「お疲れ様、はやてちゃん!」

「ごめんな、待ったかぁ?」

「うぅん、いつものことだから!」


そんな中、続いて石田先生が診察室から出てきた。

「ごめんね、はやてちゃん。ちょっとレントゲンもう一度したいからあっちの待合室で待っててくれる?」

「え?はい、わかりました」


はやて は石田先生に言われた通り、奥にあるレントゲンの待合室へと向かった。
途端に、石田先生の表情が険しくなった。

「映司さん…ちょっと、お話があります」

「え?はい、なんでしょうか…」





−−−



「えっ、入院…ですか?」

「はい、少し長くなるかもしれません…」


はやての身体の謎の症状は悪化していた。
それも…今まで以上の速度で麻痺が進んでいたのだ。

以前もシャマル達には同じ告知をしたのだが、それ以上の進行の速度だったのだ。


「つまり、今の治療が効いてなかったってことですよね?」

「はい、今まではなんとか抑えてはいたのですが…、今日の検診でさらに悪化しているのがわかりました。なので今後、はやてちゃんには入院してもらい、別の治療を受けてもらうことになります」

「その…えっと…」

「落ち着いてください映司さん!!…私達も、最善を尽くします」

「す、すいません!…あの、それで…その治療を受けたとして…はやてちゃんが助かる可能性って…」

「はい……


私たちは、とんでもないミスを犯していました…



非常に…非常に…申しにくいのですが…」













−−−

病院の屋上、夕焼けの沈む空を映司はぼんやりと眺めていた。
手には自販機で買った牛乳を持ち、ちょっと飲んではぼんやりとし…また飲んではぼんやり…と、そんなサイクルを繰り返していた。

「…あれ、もう空だったんだ…。…お話しした通りです。シグナムさん。あとこの事はまだ はやてちゃんには言っていません…」

「…そうか」


いつの間にか映司の後ろにはシグナム達が駆けつけていた。
久しぶりの再会だったが、彼らには笑顔がなかった。


「まさか…主はやて は…長くてあと『6日』と深刻されていたとは…」

「すまねぇ はやて…、もっと早く集めていれば…ッ!!」

「やめて、ヴィータちゃん…。誰も悪くないのよ…」

「しかし…まだページが足りないのは事実だ…」


映司は振り向き、シグナムの元へ近づいた。


「シグナムさん、闇の書ってあと何ページで埋まるんですか?」

「あぁ、あと40ページで全て埋まる…だが、あと6日では流石に…」

「じゃ、じゃあ俺も…ッ!!」


その瞬間、ヴィータが映司の腹を思いっきり殴った!
映司は衝撃で後ろへ数歩下がった。


「…痛いか?」

「え…ヴィータちゃん?」

「痛くねぇんだろ…もう、映司もぉ…ぐす…ボロボロなんだろ…ッ!!」


ヴィータは泣いていた。
顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃだった。


「もう映司も限界なんだろッ!!!?…も…もう…ヒグッ…動くことも…あまり…できねぇってのに…うぅ…これ以上戦おうとすんじゃねぇよッ!!!!…お前も…また倒れられたら…私たちは…私たちはどうすりゃいいんだよぉッ!!!!うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!!!!」

「ッ!!ヴぃ、ヴィータちゃん…う…うぅ…」

シャマルはヴィータを抱き、一緒に泣き始めてしまった。


「火野…」

シグナムは映司の肩を叩き、無理やり笑顔を作りながら話しかけた。
…シグナムも本当は泣きたかったのだろう。


「火野…お前の今の仕事は、主のそばにいてあげることだ…私達はもう誰も失いたくはないのだ…だから…火野…





お前が、主はやて を護ってくれ…」


映司はシグナムの手を握り、首を縦に振った。
辛かったが、今の自分には はやて の近くにいることが精一杯だ。


屋上には、今だにヴィータの泣き声が響き渡っていた…。





………