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ooo aftre ~夜天の主と欲望の王~ 第11部 前編

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049話 変わる腕と映司とヴォルケンリッター




「…以上が、これまでわかったことだ、映司」

「そう…だったんだ…」


映司とアンクは病院の待合室の椅子に座り、アンクがこれまで起こった出来事を映司に全て話していた。映司は黙ってそれを聞いていた。…いや、何も言葉がでなかった。


「つまり…今、俺たちが行なっていることは、逆に はやてちゃんを…」

「そうだ、あの女の寿命をさらに早めているだけだ」

「そう…か……」

「…おい、映司…ッ!!!!」


アンクが椅子から立ち、次の瞬間映司の顔面を思いっきり殴った!!
…映司には何が起こったのか全くわからず、気づいたときには目の前に床が映っていた。


「え?…な、なにする…」

「やはりなぁ…」


いきなり殴られたのに、なぜか怒りが込み上げてこなかった。
…それどころか、なぜか逆に悲しかった…


「お前、ついに身体の感覚自体も消えたんだな…痛くねぇんだろ?」


図星だった。
すべて、アンクの言うとおりだった。


「…うん、なにかに触っても、触れてる感じもしないし…熱いもの触っても…なんともないんだ」


アンクは再び椅子に座り、手を額に乗せた。


「映司ぃ…お前、戦えるのか?」

「一応オーズには変身できる、でも、前みたいには戦えないかな」

「そうかぁ…、映司、お前これからどうするんだ?」




「どうするって…一つしかないでしょ」





映司は外を眺めた。
日は完全に沈み、漆黒の空が広がっていた。
そんな中に、雪がちらちらと振り続けていた。




「皆を止める、そして、はやてちゃんも助ける」





その瞬間、アンクが急に椅子から立ち、映司の胸ぐらを思いきり掴んだ!!


「お前ッ馬鹿か!!?俺たちには時間がねぇってのに、まだお前は他人のために自分の身を犠牲にする気なのかッ!!?いいか?世の中ってのはどっちか捨てなきゃ助かんねぇものもあるんだよッ!!!!今も昔も、そしてこれからもそうだッ!!!!自分の命か、他人の命、どっちが大切なもんか誰でもわかるだろうがッ!!!!」



アンクの罵声が病院中に響きわたった。
次第に職員がそれに気づき、ざわつき始めていた。




「それでも…俺は助けるよ」


「てめぇッ!!いい加減に…」


「俺は『欲望の王』…オーズだよ?アンク」





「ッ!!!!」


その瞬間、アンクの手から力が抜けた。
映司は真剣な眼差しで、アンクに話し続けた。





「どっちか選べって言うなら、俺はどっちも選ぶ。どちらかが助からないなら、俺はどちらも助かる道を選ぶ」



「…映司ぃ…」



「ごめんね、アンク!…俺、絶対はやてちゃんを助ける!!…そして…ありがとう、アンク」



アンクはわけがわからなかった。
自分は映司になにもしてはいない。


「アンク、どうしちゃったんだよ。お前、そんなに優しかったっけ?」

「あぁッ!!?」

「だってアンク、ちょっと昔だったらそこまで他人に気を遣わなかったじゃない!」

「はんッ…誰かのお陰でな……」



ガキ、お前のお陰で飛んだ赤っ恥かいたぞ…



「さて、歴史の修正力か…これも厄介だね、…通りで士郎さんや恭也さんに忘れられた訳だ…」

「映司…やはりお前も同じ現象起きていたのか?」

「うん、まぁ薄々とは感じていたけど…。アンク、あとどれぐらいで俺たちは皆に忘れられちゃうのかな?」

「はぁ…そうだなぁ…」


アンクは腕を組み、その場をゆっくりと歩き回った。
3分程度経った頃、そのまま映司の前に立ち、5本の指を前に出した。


「これは俺の推測だが…おそらく『5日』だ。5日経ったら俺たちは消滅し、ゲームオーバーだ」

「5日?なんでだよアンク」

「俺の推測だぞ?…いいか映司…」


アンクは再び腕を組み、そのまま映司に話し始めた。


「少し前までは、クソガキ共は俺たちの行動、つまり俺たち自身にはあまり関係のない事を少しずつだが忘れていったらしい、俺すら気づかない程ゆっくりとな。…だがここ最近、クソガキ共の記憶上から俺たち自身の特徴、思い出が消えていく速度が異常な程、加速していやがる。…つまりだ、このままいけば、俺たちの存在を知っている奴ら全員の記憶上から俺たちは抹消される。…その速度を日数で計算すると…最低5日だ、まぁ実際俺もわかんねぇけどな」

「そうか…あと5日もあるのか…」

「あん?5日しかねぇの間違いだろ、映司」

「いや、違うよ…」







「5日もあれば、皆を説得できるかもしれないし、はやてちゃんも助けることができるかもしれない!…特に根拠はないけど、きっとなにかある筈なんだ!」


「ったく、お前はどんな状況でも…馬鹿なんだなぁ…」







だが、そのお陰で俺はもう一度、「命」を授かったからなぁ…







しかし、アンクはまだ腑に落ちない事があった。

歴史の修正力によって全員から記憶が無くなることはわかった。
だが、時々みるあの映像はなんなのだろうか?


それに、映司が見たという『もう一つの世界』…、

これも、歴史の修正力によるものなのだろうか?



いや、

なにか、違うような気がする……。










「それと、アンク。さっきから『クソガキ』って言っているけど…一体誰のこと?」

「あん?…クロノ・ハラオウン…だったか?そいつのことだ」

「ちょっと!クロノって、『クロノ提督』のことじゃないか!!ダメだよアンク!!」

「別にクソガキはクソガキで良いじゃねぇか、だいたい今のあいつは提督じゃなくて執務官だ!!」

「どっちにしろ偉い人だからダメ!!何の言い訳にもなってないよ!!」

「ったく、本当にクソガキなんだからしょうがねぇじゃねぇか!!」

「ダメ!!クソガキ禁止!!」

「…チっ……」





………


「ただいまぁ、はやてちゃん!」

「あ、お帰り映司さん!…あれ、お客さん帰ったんかぁ?」

「うん、今日は家に帰るって!」

「そうなんかぁ、会いたかったなぁ…きっと、映司さんに似てとってもお人好しな人なんやなぁ」

「うぅん、正反対だけどね。あ!はやてちゃん小腹空いたでしょ?りんご切ってあげるよ」


映司はベッドのすぐ近くにあった丸椅子に座り、棚からりんごを取り出し、起用に皮を剥いていった。


「ちょ、ちょっと大丈夫か?映司さん身体の感覚ないんやろ?」

「大丈夫!感覚無くても身体が覚えているよ!」


映司は特に怪我することなく、そのまま皮を剥き終わり、皿の上には綺麗なウサギの形をしたりんごが並べられた。


「へぇ!映司さん上手やなぁ。なんや、もしかして感覚ないって嘘ちゃうか?」

「ち、違うよ!!本当になにも感じないんだから!!」

「ははっ!冗談や。ごめんな、気を使わせてもぅて…」

「うぅん、それは俺のセリフ!」


映司は はやての手を握った。
体温は感じとることはできなかったが、不思議に心に温もりを感じた。


「俺は今まで はやてちゃんに支えられて生きてきたんだ…、だから、今度は俺の番。俺が はやてちゃんの手を掴み続けるよ」

「ふふっ!本当に映司さんってお人好しやなぁ」