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ooo aftre ~夜天の主と欲望の王~ 第11部 完結編

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055話 祝福の風と欲望の王と消滅






映司とリィンフォースはアンク達より先に外へと出ていた。いつの間にか外は雪が降り積もり、白銀の世界へと変わっていた。月明かりが地面の雪に反射し、その美しさをより一層増している。


「ふぅぅ…寒いな、リィンフォースさんは平気なんですか?」

「あぁ…私は特に問題ない…それより」


リィンフォースはそのまま歩きはじめ、少し映司から離れたところでこちらへ振り向いた。


「路上で話すのもあれだ…歩きながら話そう…」

「そうですね…」


映司とリィンフォースはそのまま雪が降る住宅街を歩き始めた。


「欲望の王…もう、わかっているな?」

「はい…」


映司にはリィンフォースの言葉の意味は言わずともわかっていた。間違いなく…


歴史の修正力のことだ。


「お前には…もう、時間がない…」

「はい…」

「主達は今はまだ、欲望の王のことを覚えているが…いずれ、全て忘れていくだろう…」

「ははっ…そうですよね…」


映司はもう驚くことは何もなかった。
今日の恭也の自分に対しての対応を見ればわかる。

この前曲がり角でぶつかったことすら忘れていた。

もう、驚くことも…悲しむことも…無いと思っていた…。

だが…


「そして…」

その時、リィンフォースの足が止まった。
映司は首をかしげ、リィンフォースに振り向いた。


「欲望の王だけではなく…」

「え…リィンフォースさん?」









「私の存在も…消える…」









−055話 祝福の風と欲望の王と消滅−









「え…な…何言っているんですか?」


映司は何を言われようが驚かないつもりでいた。
だが、今リィンフォースの口からでた言葉にはそんな考えは一瞬で吹き飛んでしまった。


「私は…お前たちがこの世界に介入したことによって…生存してしまうという歴史ができてしまった」

「な…なに言っているんですか…助かって当然でしょ!!」


しかしリィンフォースは悲痛な表情を浮かべ、顔をゆっくりと左右へ振った。


「いや…おそらくだが…『正史』では私は消滅しているはずだ…どんな事情があろうとな…。欲望の王、お前がいた10年後に…私は存在したか?」


映司は何も考えたくなかった。
どんなに考えても最初から答えは出ていた。


10年後には…リィンフォースは存在しない…。


「じゃあ!!また新しい歴史を作りましょうよ!!…皆が笑顔でいつまでも一緒にいられる歴史を…」

「無理だ…『歴史の修正力』により…全てが消える」

「じゃあ!!…その…えっと…」

「欲望の王…」


必死になにか考えた。
だが、なにも思いつかない…

何故だろうか…

10年後でもそうだ。

やっと幸せになれると思った矢先に何かがある。

なぜ、俺達は全員揃って幸せになることはできないのだろう。


「欲望の王…もう…良い…」


いつの間にか、リィンフォースは映司の手を握っていた。


「リィンフォースさん…」

「もう…私の欲望は叶った…だから…もう良いのだ…」


リィンフォースは涙を流していた。
だが、以前のような悲しい涙ではなく、自分が救われた嬉しさによる涙だった。


「ありがとう…欲望の王…」





また、自分が助かって、誰かが傷ついてしまう。
なんで、こうなるんだろう。


自分だけ…
そう、自分だけ…。






そうか…。
俺が…前の世界、そして今の世界に関与した為なのか…。


これは…






他の世界の住人が別の世界に関与した「罰」なんだ…。










………


「雪…降ってるね…アンク」

「あぁ…寒いか?」

「うぅん…大丈夫だよ」


映司達が話している時、アンクはフェイトを連れて最初に訪れた公園に立ち寄っていた。
フェイトはコートに身を包み、アンクの手を握りながらそこを歩いていた。


「ガキ…この場所、覚えているか?」

「うん…『まだ』…覚えているよ…」




−フェイト・テスタロッサ・ハラオウンで良いじゃねぇか!!−





アンクのお陰で自分の答えを出すことができた場所…
絶対に忘れたくない…
忘れたくない…



けど…そうもいかないんだよね…。






「アンク…ありがとう…」

「あぁ?」


アンクはフェイトへと目線を下げた。
フェイトは精一杯の笑顔をアンクに向けていた。


「アンクのお陰で、私は決断することができた。…それに、いっつも私のこと助けてくれたり…気を使ってくれたり…見た目は怖いのに…本当は優しい怪人さんで…」

「ふんッ!!…別に…」

















本当に俺は変わっちまった。
昔の俺なんて、自分が最優先で…他人なんてどうでも良かった。

あの『馬鹿』のお陰でちょっとはマシにはなったとは思っていたが…

芯は全然変わっていなかった。


そんな時、俺はひょんなことからあの世界で自分の肉体を取り戻し…


成り行きでこの世界に来た。


そして…俺はこのガキと会った…。



















「ガキ…」

「なに?アンク…」


「……俺も…感謝する…」


アンクはとても小さな声でそっぽを向きながらフェイトに言葉を伝えた。だが当の本人はあまりにも小さな声だったため頭に?マークを掲げていた。


「…ごめん…聞こえなかった…」

「あぁッ!?ふざけんな!!」

「えっ…逆ギレ?」

「…チッ……さて、ガキ…」


アンクはフェイトの手を離し、フェイトの目の前に立った。
そのアンクの表情は先ほどと打って変わって真剣な眼差しになった。


「ガキ…わかっているな?」

「うん…」

「全てが終わった…もう俺はこの世界に用はない」

「…ッ…うん…」


フェイトは次第に目尻に涙を溜め始めた。
アンクはそれを見て少し胸が痛くなったが、なんとかそれを堪え、話を続けた。


「俺は…もう帰らなきゃいけない…」

「………」





「もう…お前とは、




一緒に居られない…」




思うように喋れない。
なんだ?この感情は…

以前にもこんな事が会った。

あれは…いつか映司の奴と戦った時と一緒だ…。


この気持ちは…なんだ?






いつの間にか、フェイトは声も出さずに涙を止めることなく流していた。口元は震え続け、拳はずっと握っていた。


「だから…今日でお別れだ…じゃあな…ガキ…」


そのままアンクは後ろへ振り向き、その場を立ち去ろうとした。
…だが、その時…




「…ッ!!」

「ッ!!?…おい…」



フェイトが勢いに身を任せ、後ろからアンクに抱きついた。
アンクは顔だけ振り向き、フェイトを見つめた。


「………」

「…なんか言えよ…ガキ…」

「………」

「…何も用が無いなら俺から離れろ…」

「………」

「…いい加減に…しろッ!!!!」


アンクはフェイトを引き離そうとした!!
…だが、…それはできなかった。




身体が…動かないのだ。





「…ッ…う…くそ…」


駄目だ…できない。

俺は…もしかして…



このガキから離れたくないのか?