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キスの理由

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 資料室の前まで来たバジルが振り返り、苛立った様子でボクに向けて怒鳴る。
「アンディ!! まったくとろいな、おまえは。何やってんだよ、早くしろ」
「……はいはい」
 鍵はボクが持っているので、開けないとバジルは入れない。
(急にキスなんてしてくるからじゃないか……)
 それに急にやさしくしてくるから。
 だから困ってしまうんじゃないか。
 それをボクのせいにされても。
 誰でも戸惑って次の行動に移れなくなると思うんだけど。
 バジルにはわからないのかな。
 ……わからないといえば。
(なんでキスなんてしてくるのか……)
 それが一番わからない。謎だ。
 まあ、遊びなんだろうな。
 ボクが嫌がっていると思っているのかも。
 確かに、嫌は嫌なんだけれど。
 それよりも困る。
 ガチャッと資料室の扉を開けて、バジルの後ろから中に入る。
 ドサッと資料をもとのダンボールの中にバジルに続いて置いた。
 さて、終わった。
 とっとと教室に戻ろうと踵を返し、扉に向かう。
 ぐいっと肩を強く引っ張られ、後ろに引き戻された。
 バジルがさっと前に出て扉に向かい、開いていた扉を閉めてしまう。
 ガチャンッ……と。
「? バジル……?」
 振り向いたバジルの大きな目が、じっとこちらを見据えている。
 なんだか、妙に強い光を放っている。
 ゾクリとした。
「バジル……」
 ツカツカと近付いてくるバジルに、自然と足が後ろにさがる。
 ドンッとダンボールの山に腰がぶつかる。
 バジルは酷薄な目をしてボクを見ている。
 ……そう、まるで獲物を見るような。
(ああ、こういう目、昔見たな……)
 嫌がらせをする時の目だ。
 でもそれよりもっと……。
 もっと、熱がこもっている。
(これって……)
 ゴクリと息をのみ、相手をにらみつける。
 今は邪魔な資料も持ってないし、人がいないことだって、こっちにも都合が良い。何をしても大丈夫だ。向こうが何をする気かわからないが。
 バジルがふっと皮肉げに笑った。
「いつもただでキスさせるくせに、なんでそんなにかまえてんだよ」
「え……」
 キスしたいのか!?
 そういう空気かこれが!!
 しまった、呆然としてたら両肩をつかまれた。
(ケンカじゃないの!?)
 ほら、どうしようかと思うから、困るから、困るんだってば。
 ……まあ、また適当に目を閉じてじっとしていればいいし……。
 強く肩を握りしめられ、痛みに顔を歪める。
 そうすると、バジルはすごく嬉しそうな顔をする。
 サドだ。
 呆れて息を吐き、近付いてくる顔に、しぶしぶ目を閉じた。
 吐息が顔にかかる。重なる唇。
 いつも少しかわいていて、熱い唇が、しっかりと上に乗るように触れてくる。
 角度を変えて、幾度か重なり……ゆっくりと離れていく。
 ああこれで終わりかと安堵する。だが、バジルの低い声が、その安堵を吹き飛ばした。
「……おい、口開けよ」
 ……は?
「何で……」
 少し口を開いて疑問を漏らすと、その唇に再び唇が重なってくる。
(ええっ……?)
 噛みつくようにキスされる。その唇の間からぬるりと舌が出て口の中に入ってくる。
(ちょっとっ……)
 さすがに胸を手で押して、引き離そうとした。でも、相手の肩をつかむ力が強くて離れない。
 後ろにのけぞろうとしたら、片手が頭をとらえ、もう片方の手が腰に回された。
 その間も、分厚い舌が口の中を舐め回すようにしてくる。
 舌と舌が触れ合い、逃げようにも、絡みつくようにしてきて逃げられない。
 息が苦しい。
「んんーっ……」
 どんっと胸を叩いて、ようやく相手が離れる。
 ハァ、ハァ、と息を吐いていると、また顔が近付いてきて、唾液を舐め取るようにペロリと唇を舐められる。
 体はまだ抱きしめられている。変に熱くて、気持ちが悪い。
 なんなんだ、一体。
 新しい嫌がらせなのか、これは?
 見ると、バジルはひどく満足そうだ。
 腕にしがみつくようにしている自分に気付き、もう一度強くバジルを押した。
「離せよ」
「嫌なこった」
 ……なんなんだか……!!
 なんで幼馴染みにこんな抱きしめられてあんな濃いキスをされてるんだ自分。
 そろそろどうにかした方がいいんじゃないだろうか?
 ずっとこれを続けていくわけには……っていうか、ひどくなっている気がする。
 よし、言おう。


作品名:キスの理由 作家名:野村弥広