化物語 -もう一つの物語-
「……分かってるさ」
「じゃあ私達、お粥作ってくるから、お兄ちゃんは安静にしててね」
「ああ」
「安静にしてなかったら、千枚通し持ってくるから」
「…………」
中学二年生の妹に脅迫された男子高校生がいた。
と言うか、僕だった。
「おかしいな、今日は――ん?」
何だろう……。
何かがおかしい。
火憐ちゃんの台詞と、別の『何か』。
二つの絶対にあり得ないことが僕の身に――今、起こっている?
そして――何かを、忘れている。
大事で、大切なことを。
しかしそれは――何だ?
そう思いながら、僕は火憐に取ってもらった携帯電話を開き、アドレス帳を出す。
そして『戦場ヶ原ひたぎ』と『羽川翼』の名前を探そうと思った――のだが。
そこには。
僕の携帯に登録されているのは、一件だけだと言わんばかりに――
『羽川翼』の、名前しか。
画面には表示されていなかった――
作品名:化物語 -もう一つの物語- 作家名:神無月愛衣