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神無月愛衣
神無月愛衣
novelistID. 36911
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化物語 -もう一つの物語-

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002



 夏休みが明けて、しばらくたった。
 その、高校生活最後の夏休みは――春休みと同様で、忙しかった。
 大きい方妹の火憐が、貝木泥舟の手によって囲い火蜂に刺され、小さい方の妹の月火が実はしでの鳥という怪異で、僕らの『偽物』の妹なんだと、影縫さんと斧乃木ちゃんに知らされ、決闘をしたり。
 夏休み最終日に忍ぶととある理由で北白蛇神社でタイムスリップしたり(『とある理由』はあえて聞かないで欲しい)。
 そのタイムスリップも終わったかと思えば、いきなり『くらやみ』に襲われかつて怪異だった幽霊の親友――八九寺を亡くしたり――と。
 いい夏休みだったし、悪い夏休みだった。
 まあ、夏休みが明けても、臥煙さんと出会って、色々としたので、結局忙しかったのだが。
 そんなことがあって――やっと落ち着き始めた今日。
 昼休みに、僕は戦場ヶ原とお弁当を食べた。
 とある休憩時間の回想シーン。
「ねえ、阿良々木くん」
「何だ、戦場ヶ原」
「一緒にお弁当を食べましょう」
「ああ……別にいいけれど」
「寧ろ、一緒に食べなかったら躊躇なく殺すわよ」
「殺されるの!? 僕! しかも彼女に!」
「ふん。勝手に殺されときなさい。あなたはいずれ、死ぬのよ。誰かに殺されてね」
「人間誰もがいつかは死ぬだろうが、僕は誰かに殺されて人生が終わるのかよ!」
「そうよ。ああ、でも阿良々木くんは不死身だからそう簡単には死なないわね。良かったわね、不死身で」
「まあ事実なのだからしょうがないけれど、声が大きいんだよ!」
「ふん。まあいいわ。とにかく、昼休み、よろしくね」
「ああ……」
 まあこんな感じで、僕は戦場ヶ原と一緒にお弁当を食べる約束をしたのだった。

 そして、その昼休み。

 僕達は、夏休みの話をしていた。
「夏休み――ね。私達、結構色々なことをしたわよね」
 と、戦場ヶ原は、思い出に浸っているといった風に言った。
 戦場ヶ原ひたぎ。
 蟹に行き遭い――体重を、想いを失った少女。
 クラスで『深窓の令嬢』と呼ばれる彼女だが、実はツンデレ(ツンドラ?)で毒舌家(ドS)。
 制服の至る所に、ホッチキス、カッターナイフなどの文房具を仕込んでいる。
 ――まあ、今のは全て夏休み前までの話。
 今はちゃんと更生したし(羽川のお陰である。ちなみに僕はまだだ)、文房具も仕込んでいない。
 普通の女子高校生である。
 そんな戦場ヶ原は、空を見上げながら、最後の夏休みの思い出を語った。
「阿良々木くんを監禁したり……、阿良々木くんを監禁したり……、監禁したり……」
「僕を監禁したことしか思い出せないのかお前は!」
 つくづく酷いやつだよ、戦場ヶ原は。
 本当に僕の彼女なのか?
 ちなみに、僕と戦場ヶ原は付き合っている。
 五月十四日――母の日から。
 八九寺と出会った、あの日から――で、ある。
 その彼女と繰り広げる、夏休みの話が、こんなのって自分でもどうなのかと思うが。
「冗談よ。ケーキブッフェにも行ったじゃない……あれ? 行ったかしら?」
「覚えてくれていて僕は非常に嬉しかったが、しかし戦場ヶ原。それを言った直後の言葉は聞き捨てならんな」
「ごめんなさい。私、自分に都合が悪いことは忘れてしまう頭なの」
「僕と一緒にブッフェに行ったのは、そんなに悪いことだったのか!?」
「ええ」
「否定しないのかよ!」
 どんだけ僕の存在が邪魔なの!? いくら何でも酷いだろ!
「大丈夫よ、阿良々木くん。私はちゃんと覚えているから」
「そっか……」
「ええ。だって阿良々木くん。あの話は番外編として、『化物語 コンプリートガイドブック』に収録されているのよ? 忘れるわけないじゃない」
「メタなこと言うなや!」
 それにあれは、僕の思い出したくない思い出もあるのだ。
 もう会うことのない、あいつとの――思い出が。
 ……とりあえず、閑話休題。
 しばらくして、僕はこう続けた。
「ったく……。戦場ヶ原、本当に更生したのか? 毒舌が戻ってきている気がするんだが……」
「しまった! 今は阿良々木くんの前だったのよ! 忘れていたわ!」
「ん? 何か言ったか?」
「いいえ、更生しきれていない戦場ヶ原ひたぎは何も言っていないわ」
「自分で更生できてないって言っちゃったよ!」
 羽川の努力が無駄になちゃった!
「何よ、ちゃんと更生できていなくても、更生さえもできていない阿良々木くんよりはましだわ」
「うっ……」
「羽川さん、嘆いていたわよ」
「…………」
「まあ、昔はお利口さんだったと、未だに自慢する阿良々木くんには、更生なんて難しいこと、できないわよね」
「……戦場ヶ原――」
「ああ、ごめんなさい阿良々木くん。『更生』という意味が分かっている前提で話を進めてしまったわ。ゴミの阿良々木くんには、難しかったわよね。悪かったわ、阿良々木くんの頭の悪さも考えずに言葉を発してしまって」
「僕を馬鹿にするのもいい加減にしろや! いつまで続くんだよ!」
「阿良々木くんが死ぬまで」
「僕は彼女から死ぬまで馬鹿にされないといけないのか!?」
 過酷な人生だな! 寿命で死ぬ前に、絶えきれずに自殺するよ、それじゃあ!
 まあ、自殺をしようとしても、不死身の僕は死なないし、死ねないのだが。
 またまた閑話休題。
「阿良々木くん」
「何だよ、戦場ヶ原」
 少々僕は怒り気味だったので、渋々返事をする。
 戦場ヶ原の手作り弁当を食べている僕に、唐突に、
「無事に帰ってきてくれてありがとう」
 にっこりと微笑んで戦場ヶ原は言った。
 夏休みにばっさりと切った髪を耳にかけながら。
 そして、『戦場ヶ原は何か企んでいるのだろうか』とか、何かを考える暇もなく、戦場ヶ原はこう続けた。
「私ね、別に心配はしていなかったのよ。阿良々木くんが無事に帰ってくるって信じていたから」
「戦場ヶ原……」
 感動的な台詞だ……! あの戦場ヶ原にしては珍しい!
「でも、阿良々木くんから『しんぱいすれな』ってメールが来たときは、私もさすがに心配したけど」
「まあ、そうだよな……。あんなメールが来たら普通……」
「ええ。私は阿良々木くんの頭を――脳味噌を心配したわ」
「…………」
 いい雰囲気だったのに……。
 全部台無しじゃねーか。
 ちゃんと更生しろよ……。
「……まあ、そのあとに、阿良々木くんから、『あの件』について聞いたときは、ああ、私の考えていたことは――私が阿良々木くんを心配していたのは全て杞憂だったのねって思ったわ」
「『あの件』って何だよ」
「阿良々木くんが幼女と童女と少女の全員とキスした件」
「…………」
 それについてはちゃんと謝ったじゃん……。
 ちゃんと『戦場ヶ原と羽川のラブシーンを見せつけられる刑』に、僕、処されたじゃん……。
 今になってそんなことを蒸し返すなよ。
 あれこそ僕の『黒歴史』だ。
 ……案外根に持ってるんじゃないのか? 戦場ヶ原は。
「根に持ってなんかないわ。そんな人聞きの悪いこと、言わないで頂戴」
「僕の心を読むな」
「そんなことはともかく」
 と、惚れ惚れする手際の良さで戦場ヶ原は話題を変えた。
「ちゃんと言わせて頂戴」
「何をだ」
「黙って聞いていなさい」