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神無月愛衣
神無月愛衣
novelistID. 36911
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化物語 -もう一つの物語-

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005



 神原と別れた僕は、徒歩で家へと帰っていた。
 それにしても、神原が言っていたこと、ちゃんと考えておかないとな。
 僕は、少しだけ吸血鬼になので、北白蛇神社に行ったときと同じように、よくないものが集まっていても、神原のように気分が悪くならないからな――
「――暦お兄ちゃん? どうしたの?」
 と。
 考え事をしている僕の背後から、聞き慣れた声が掛かった。
 僕のことをこう呼ぶのは、ただ一人である。
「千石……」
 千石撫子。
 蛇――その怪異は蛇切縄である――に巻きつかれた少女。
 彼女に掛けられた呪い――『おまじない』は、この町の女子中学生や、僕の彼女の戦場ヶ原を、金儲けのために人を騙す詐欺師、貝木泥舟がはやらせたものである。
 そのため、僕の妹である火憐と月火が動き回り、夏休みは随分と苦労したものだ。
 まあその貝木も、戦場ヶ原から、
「……この町から出て行って。すぐに」
 と言われたので(その後すぐにミスドで貝木と会ったけれど)多分二度と来ないだろう。
 ……話が逸れたな。
 彼女も下校中なのだろう――僕が昔通っていた公立七百一中学校の制服を着ていた。
 ちなみにこの学校の制服は、今時珍しいワンピースタイプである。
「千石の方こそどうしたんだ? 中学校は結構前に終わっている気がするんだが」
「うん、そうだよ。でも撫子は、もう家に帰ったんだよ」
「……じゃあ、何で制服のままなんだ?」
「……撫子は、家に帰ったら、大型書店にいくつもりだったの。……だけど、私服に着替えるのが面倒だったから……。ま、このままでいっかなって思って……」
「いや絶対よくないだろ! 書店の人に何か言われなかったのか!?」
 ちなみに千石が言う大型書店とは、この町に唯一あると言っても過言じゃないあの大型書店だろう。
「ううん、特に何も言われなかったよ。あ……でも撫子のこと、見てたかも……」
「……学校に苦情がこなかったらいいが……」
「そんなことより、暦お兄ちゃんは、どうしたの? 高校って、終わるの、今じゃないでしょ?」
「ああ。僕は学校に残って、羽川と仕事をしていたんだ」
「羽川さんと仕事? 何の?」
「クラスの副委員長の仕事。僕はクラスの副委員長なんだ」
「そうなんだ。確か、羽川さんは、委員長なんだよね……」
「ああ」
「副委員長か……暦お兄ちゃんにぴったりだね」
「そうか?」
 て言うか、千石も神原と同じことを言うんだな……。
「撫子とは大違いだよ……」
「ん? 何か言ったか? 千石」
「ううん。何も言ってないよ」
「そっか。……ああ、そうだ、千石。一つ聞いてもいいか?」
「うん、いいよ」
「最近……おかしなこととかないか?」
「おかしなこと?」
「ああ、『おまじない』みたいなこととか……」
「…………?」
 ……実は、神原が言っていたことが、本当に気になるのである。
 もし本当だとしたら、何らかの形で影響があるかもしれない。
 千石のように、『おまじない』の悪化とか。
 と言っても、千石の場合は、蛇切縄に対する対処が的確すぎたからであって。
 千石のような――実際に『おまじない』が発動したケースはないはず、である。
 でもまあ、念のためだ。
 その千石は、
「ううん。特に何もないよ」
 と言った。
「そっか。ならいいんだ」
「……でもどうしたの? 何かあったの?」
「『何か』が『あった』と言ってもな……。神原が、この町が『おかしい』と言っただけで……信憑性が微妙なのだが……」
 でも、神原が言うんだし、間違いはないだろう……多分。
「……この町が『おかしい』……? それって、どういう意味?」
「いや、なんて言うか……。ほら、北白蛇神社があるだろ?」
「うん……撫子にとっては、因縁の場所だよね……」
「……僕にもだがな――まあ、あそこみたいに、『よくないもの』が集まっているって――神原が言っていたんだ」
「神原さんが――? そっか……。でも、それってつまり……怪異が集まっているってこと?」
「ああ……そうなる」
「それは大変だね」
「ああ。まあ、それが本当かどうかは、夜になったら、分かるんだ」
「何で?」
「忍に聞くからだよ」
「忍さんに……」
 すると千石は今よりも少し、俯いた。
 あ、しまった。
 そう言えば千石は、忍(無口の頃)に随分と睨まれたのだ。
 それで怖い思いを抱いているのだ。
 ちょっと配慮が足りなかったな。
「千石? 大丈夫か?」
「……ん? あ……うん、大丈夫……。それより暦お兄ちゃん」
「?」
「今度……遊びに行ってもいいかな……ららちゃんとも遊びたいし……」
 ちなみにここで言う『ららちゃん』とは、月火ちゃんのことである。
「ああ、勿論いいよ。月火ちゃんにも僕から言っておくから」
「うん、お願い」
 じゃあまた今度ね、と千石は言って、家へと帰っていった――ああ、でも、まだ大型書店の袋を持っていなかったらから、今から行くんだろうか?
 そういえば、歩く方向も、いつもとは違うし。
 まあいいか。千石の自由だしな。
 千石が見えなくなるまで見送って、僕もまた、もうすぐ家なので、早歩きで帰るのだった。