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神無月愛衣
神無月愛衣
novelistID. 36911
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化物語 -もう一つの物語-

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006



 神原と軽く喋り、千石と今度一緒に遊ぶ約束をして、やっと僕は家へと着いた。
 思った以上に時間が掛かってしまった。羽川と残って仕事をしていたので、遅いのは遅いが、それでも、時間を掛けすぎたかな……。
「ただいま……」
 僕はそっと玄関を開け、中へと這入った。なるべく静かに……。
 すると、僕を見つけるなり、
「お帰り兄ちゃん。ちょっと遅かったな」
「お帰りお兄ちゃん。かなり遅かったね」
 と、二人の妹――火憐と月火は、声を揃えて言った。
 ショートヘアの火憐と、ロングヘアの月火。
 前は逆だったのに……。
 入れ替わっちゃった。髪の長さが。
 ……そんなことよりこいつら、本当は双子じゃないのか?
 台詞は微妙に違うけれど、字数がぴったり一緒だし。
 びっくりだわ。
「……遅くて悪かったな」
「何してたんだ? 兄ちゃん。こんな遅くまで帰らないって、珍しいな」
「羽川と学校に残ってたんだ」
「羽川さんと? それってお兄ちゃん、勉強を教えてもらってたの?」
「いや違う。仕事をしていたんだ」
「……なんか、兄ちゃんらしくない……」
「……何だか、お兄ちゃんらしくない……」
「二人揃って酷いこと言うなや!」
 何で学校と家で、こんなに酷い扱いを受けないといけないんだ!? 差別か!?
「まあまあ、落ち着け、兄ちゃん」
「そうだよ、お兄ちゃん。身体に悪いよ」
「僕はまだ若いのに、何で中学生の妹二人に身体を心配されないといけないんだよ……」
 僕は近い将来死ぬのか!?
 それは冗談だろ!
 ……まあ、僕は簡単には死なないが……。
「それより兄ちゃん。あたし達は、言いたいことがあるんだ」
「そうだよお兄ちゃん。だからお兄ちゃんが帰ってくるの、ずっと待ってたんだよ」
「そっか……。それは悪かったな。で? 何だ、言いたいことって……」
「あたし達がメインヒロインの『偽物語』が、ついに始動したんだ!」
「私達の出番がやっと来たんだよ!」
「僕をあんなに待って言いたかったことはそれかよ!」
 そんなの誰でも知ってるよ! と言うか、ファンは楽しみにしてたよ! ここで言わなくても!
 ……しかし今年は、確か『化物語』の前日譚で、僕の春休みの出来事が書かれている『傷物語』も映画化だよな……。
 僕の羞恥が晒されるから、見て欲しくないな……『傾物語』並みに……。
「兄ちゃん。人生って、いいことばかりだね」
「そんなに人生が上手くいってたまるか。お前らにはいつか、災いが降りかかるぞ」
「大丈夫だよ、お兄ちゃん。私達、ファイヤーシスターズだから」
「それは理由にはならない」
「なあ兄ちゃん。日本語って難しいよな」
「何だよいきなり」
 やっぱり火憐は馬鹿なのか。
 脈絡がなさ過ぎるだろ。
 空気を読め。
「いや、兄ちゃん。実はこれが、いつか物語の伏線となって……」
「何で『日本語の難しさ』が物語の伏線なんだよ。普通ないだろ。関係すら僕には分からないよ」
「いやいやお兄ちゃん。火憐ちゃんの言う通りかもよ。こういう些細なことが、物語の伏線となることだって、あるんだから」
「そうだよ兄ちゃん。月火ちゃんの言ってることは正しいぞ」
「いや、月火ちゃんの台詞は火憐ちゃんのフォローなんだけど」
「…………………………………………。ほらな、兄ちゃん。日本語は難しいだろ?」
「沈黙が長いし、適当に理由を漕ぎ着けて会話を終わらせようとするな!」
 突っ込みが二つあったから、台詞も長くなったじゃん!
 僕の言葉を聞いて火憐は、キッ、とつり目をさらにつり上げ、
「もー! うるさいなあ!」
 と、逆ギレした。
「知らない知らない! あたし何にも知らなもん! 日本語も英語もスペイン語も全部知らない!」
「……せめて、日本語は分かれよ、日本人だろ」
 まあ英語も分かって欲しいが。中学であれだけは習っているはずだが。
 その火憐の台詞を聞いて月火は、
「あ! 火憐ちゃん! 私の原作、『偽物語』の『第六話 かれんビー』の時の台詞をパクった!」
「はっ!? なぜばれた!?」
「ちょっと火憐ちゃん! どういうこと!? て言うか、あそこにいなかった火憐ちゃんが何であの掛け合いのことを知ってるのよ!」
「…………そ……れは……」
「もう! プラチナむかつく!」
「……はあ……」
 もう付き合っていられないので――いい加減着替えないとな――僕は仲良喧嘩している二人の妹を一階に放置して、階段を上がり、二階にある僕の部屋へと向かった。
 てか、確か月火の口癖『プラチナむかつく』って、あんまりキレてないんじゃなかったっけ?
 どうでもいいけれど。
 ――ちなみに、火憐と月火が、何気に自分たちがメインヒロインの『偽物語』の宣伝をしていることは、あえて無視した。
 しかも、もう終わったし。
 次は『傷物語』だ。
 ……まああ、無視した最大の理由は、いちいち突っ込んでいたら、きりがないからだ。
 階段を上がって耳をすませると、二階からでも二人の喧嘩の大声は、よく聞こえたのであった。
 ああ、うるさいなあ……。