ooo aftre ~夜天の主と欲望の王~ 第12部 前編
シグナム達は先ほどの はやて の言葉を聞いたためか、その目に力が戻っていった。
「主はやて…私も映司を待ち続けます」
「シグナム…」
「私も…待つわ…映司くんが戻ってくるのを!!」
「シャマル…」
「そうだ…あいつはそんな簡単に我達の目の前から消える者ではない…、我も待ち続けよう」
「…ザフィーラ!」
「…私も待つ!!…そうだ、ぜったい映司なら帰ってくる!!」
「ぐすっ…リィンも待ちます!!」
「ヴィータ…リィン!!」
何故だ…
根拠もないのに、なぜ消えちまったあいつの事を信じていられるんだ?
わけがわかんねぇ…
「悪い、やっぱり俺は無理だ」
アンクはポケットに手を突っ込み、そのままそこから出て行ってしまった。
「あ…アンクちゃん!!」
「いや…追っかけんくてえぇよ、シャマル…」
「で、でも…」
「アンクは私たちより映司くんと一緒にいた時間が長かったんや…。…きっと、アンクは私達以上にショックを受けているに違いないわなぁ…。今は、そっとしておいてあげよか」
−−−
アンクは宛もなく隊舎の中を歩き回った。
ただ、その苛立ちを抑えるために…
「…くそっ…なんなんだよ……」
「あ、アンク…」
アンクは声が聞こえた方向に振り向いた。
そこには執務官の制服で身を包んだフェイトが立っていた。
「…っ!!…なんだ、フェイト…」
「いや…どうしたのかなぁって…アンク、何か嫌なことでもあったの?」
「…別に……」
そのままアンクはフェイトの横を過ぎ去ろうとした。
だが、フェイトは腑に落ちなかったのか、通り過ぎるアンクの腕を掴んだ。
「っ!!おい、離せ!!」
「離さないよ、何があったの?教えてアンク」
「…うるせぇんだよ!!!!離せ!!!!」
「きゃっ…」
アンクは力任せにフェイトの手を思いきり振り払った。
「な…なにするの…アンク…」
「『約束』」
「…え?」
「約束…覚えているか?」
その場に、静寂がおとずれた。
アンクは真剣な目つきでフェイトを見つめた。
フェイトは振り払われた手を抑えて戸惑いの表情をうかべていた。
「……約…束?」
「…あぁ…」
「…えっと……
ごめんなさい…何のことだか…その…」
やはりな…。
まぁ、最初からわかっていた。
「そうか…じゃあな」
「え、アンク…」
アンクは再び歩き始めた。
フェイトには一度も振り向かず、ただ歩いていった…。
………
「そや、なのはちゃん」
「なに?はやてちゃん」
「この事って、フェイトちゃんにはもう言ったんかぁ?」
「うぅん!言ってないよ!!」
「えぇ!!?…はは、絶対フェイトちゃんパニくるなぁ…」
「まぁ、ちょっとしたサプライズってことで!!」
「まぁ、えぇか!…おっと、もう皆集まっとるなぁ!!」
「うん、はやく行こう!!」
二人はフォワードや隊長達が待つ場所へと駆け足気味に走っていった…。
「ったく、あいつら普通に締めることができねぇのかよ…」
アンクは機動六課の屋上から はやて達のやりとりを見ていた。
取っ手に座り、アイスキャンディを舐めていた。
「…地球に帰るか…いや…できねぇな…」
帰っても、映司の奴がいなきゃ意味はねえ。
それに…どういう顔していいのかわかんねぇ。
「…はぁ…くだらねぇな…結局、全部無駄だったな…」
「…どうやら、オーズは助からなかったらしいな」
「…あぁ?」
アンクは顔だけ後ろに振り向いた。
そこには仮面ライダーディケイドが立っていた。
「…残念だったな、アンク」
「ふんッ!!…どうしようもない馬鹿を持つと本当に疲れる!!」
アンクはそのまま取っ手から降り、ディケイドへと近づいた。
「地球に帰るなら、手伝ってやるが…どうする?」
「いや…いい…俺はこの世界に残る…」
「あぁ?…ったく…しょうがないな…」
ディケイドはやれやれと両手を横に振り、再びアンクに話し始めた。
「…おい…これは警告だ。お前は早く地球に帰れ」
「…うるせぇな、俺がどの世界に居ようが勝手だろ」
「そうじゃない…」
「…あぁ?どういう意味だ?」
ディケイドは後ろへ振り向き、空を見上げた。
アンクはディケイドの言葉の意味が理解できなく、ずっと頭を横に掲げていた。
「…この世界は、『普通の世界』じゃない。…悪いが今はそれしか言えない」
「…?」
「だから…これが最後だ。…お前は早く地球に帰れ」
「…チッ……」
だから、帰ったところでどうなるんだ。
あいつらに真実を伝えるか?
話したらなにか変わるのか?
だったら…誰とも『関わりを持たない』この世界で一生過ごした方が幸せだ…。
「ディケイド、悪いがもうお前の助けはいらねぇ…俺はこの世界に残る」
「…そうか、わかった…」
その瞬間、ディケイドの前に灰色のオーロラのカーテンが出現した。
それは次第にディケイドへと迫ってきた。
「…お前がそう決めたなら俺はもう何も言わない。…これで本当に最後だ、じゃあなアンク」
「…あぁ」
そのままディケイドはオーロラのカーテンに飲み込まれ、その場から完全に消えた。
「そうだ…このまま一人でいりゃずっと気分が楽だ…もう…」
もう、誰も信じねぇ…
どいつもこいつも自分勝手だ。
他人の事なんてどうでも良いんだ…。
俺一人で、これから先も生き続けてやる…。
俺は馬鹿だ。
わかっていて叶いもしない約束をした。
無意味な涙を流した。
本当に…俺は馬鹿だ。
−−−
「…あれ?」
「どうしたんですか?はやてちゃん」
「リィン、アンク見なかったか?」
「え…見てないですけど…」
最後の模擬戦が終わり、はやて達は隊舎へと戻ってきた。
だが、隊舎に異変を感じた。
アンクの姿が…全く見当たらなかったのだ。
「…おかしいな、どこいったんやろ?」
「…大変です!!皆で探しましょう!!」
リィンフォースⅡの放送が隊舎に響き渡り、なのは達を含む全隊員がアンクを探し始めた。
「アンクさ~ん!!!!…おかしいな、本当にどこにもいないみたい…」
「なのは、私はこっち探してみる!!」
「うん、フェイトちゃんお願い!!」
フェイトは機動六課のガレージへ探しにきた。
ヴァイスのバイク…自分の車…
すると、以前映司が使っていたライドベンダーが消えていた。
「…もしかして!!」
嫌な予感が的中した。
シャッターは開けっ放しでバイクが走っていった後が残っていた。
その後はまだ新しかったのだ。
「…今なら間に合う!!バルディッシュ!!」
『yes sir』
フェイトはバリアジャケットを装着し、飛行許可を完全に無視してアンクが走っていった後を追いかけていった。
作品名:ooo aftre ~夜天の主と欲望の王~ 第12部 前編 作家名:a-o-w