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聖なる夜

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シュラは眼を伏せた。
ああ、と思う。
自分の心がささくれていることに気づいた。
祓魔師が悪魔落ちするのは、めずらしいことではない。
でも、めずらしくないから、慣れているから、平気、ではない。
だれが悪魔落ちしたのかがわかったとき、胸に衝撃を感じた。
心が痛んだ。今もそうだ。痛い。
大丈夫かと自分はアーサーに問いかけた。
だが、そう問いかけた自分が大丈夫ではなかったらしい。
もしかすると、アーサーはそれに気づいていたからシュラが先に帰ることを許可したのかもしれない。
「大変でしたね」
雪男の声がした。
その声が、ささくれている心に寄り添ってくる。
今の自分はだれかにこんなふうに優しく声をかけられたかったのだと、気づく。
シュラは眼をあげ、雪男の顔を見る。
そして、口を開いた。
「ああ」
自然に表情がやわらいだ。
心はまだ痛んでいるが、胸に温もりを感じてもいた。
雪男のメガネの向こうの眼が細められた。
「……やっぱり違うな」
そう雪男は言った。
なにが違うのかわからなくて、戸惑い、シュラは小首をかしげた。
すると、雪男は少し笑った。
「電話で話をしているのとは違うって思ったんです」
それはそうだろうと、シュラは納得する。
心が落ち着いてきたので、現在の状況を考え、雪男を暖かい部屋に入れたほうがいいと判断した。
シュラは雪男をアパートメントのほうに進むよう、うながそうとした。
しかし、そのまえに雪男が呼びかけてきた。
「シュラさん」
「ん?」
「僕はあと三日で十八歳になります」
「ああ、そーだな」
「春には高校を卒業します」
「うん」
そんなわかりきったことをどうして今言うのだろうかと思いながら、シュラはうなずいた。
「大学に進学する予定ですが、仕事をしてますから収入はあります」
「うん」
それも知ってる、と思った。
雪男は祓魔師として働いていて正十字騎士団から給料をもらっている。
祓魔師は特殊な知識と能力を必要とする職業で、なおかつ危険を伴うため、シュラほどではないだろうが、給料の額は結構いいはずだ。
「だから」
そう言ったあと、なぜか雪男は口を閉ざした。
けれども、すぐに、決意したような表情になり、ふたたび口を開いた。
雪男は言う。
「霧隠シュラさん、僕と結婚してください」
頭の中が真っ白になった。
作品名:聖なる夜 作家名:hujio