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ooo aftre ~夜天の主と欲望の王~ 第12部 中編

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−059話 欲望と夜天の書と沈まない夕日−





海岸沿いを二人の大人と二人の子供が歩いていた。
はやて とアンクの前を、ミウラとアギトがじゃれあいながら遊んでいた。


「あいつらは?」

「あぁ、そういえばアンクには紹介していなかったな。あの赤い髪の子がアギト、私達の新しい家族や!もう一人の子がミウラ・リナルディ、私が開いている八神家道場の生徒の一人や!ここ近辺に住んでるんよ!」

「そうか…」


自分が知らない間に、周りには沢山の変化が起きていた。
俺「達」は、こうして自分の繋がりを持つ者が、知らない間に新たな繋がりが出来ていくのだろう。


「聞くまでもないが…あいつは…」

「まだ、帰ってこんよ」

「そうか…悪いな」


少し、期待はしていた。
あいつの事だからひょっこり現れる…そんな気がしていた。


「…?…それは…」

「あぁ、夜天の書な!…なるべく、こうやって持つようにしてるんよ」


はやて の左手には夜天の書を掲げていた。


「もう10年以上も経つんやな…あの子が消えて…」

「夜天の書の意志のことか?」

「せや…リィンフォースもきっと…私達と一緒に生活したいと願っている筈や…」

「……なぁ」

「ん?なした?」











「13年前、お前は地球でヴォルケンリッターの四人の他に、もう一人の人物と一緒に生活していた筈だ…覚えているか?」

「え…シグナム達の他に?…う~ん…」


アンクは返ってくる答えはわかっていたが、あえてこの質問をした。
だが、はやて はいくら考えてもそのもう一人の人物に心当たりはなかった。


「まぁ…わからなくて、当然なんだがな…」

「すまんな、なにせ昔のことやから…、…て、なんでアンクが私達の事知っているんや?」

「っ!…あ、あぁ…昔、誰かから教えてもらったんだ」

「そか…でも、なんでアンクはそんな質問を私にしたんや?」







「お前に、思い出して欲しいからだ」






アンクがその口から出た言葉に、はやて の顔がより一層険しくなった。
その言葉の意味が、全く理解できなかったからだ。







「思い出す…一体何のことや?」

「お前は…重要なことを、忘れている」

「忘れているって…そりゃ時間も経てば、私の記憶から忘れていくもんや…だからアンク、教えてくれな!私、一体何を忘れているんや?」

「それは…俺の口から話しても意味はない」

「はぁ!?全く意味がわからんで!!」

「だがな、今の俺なら自身を持って言える…、お前なら…」










「お前なら、きっとあいつの事を思い出せる筈だ」













「あい…つ…?」

















映司くん?

映司くんの事なんて、一秒足りとも忘れたことなんてないわ。
最初の出逢いから…最後に語り合ったあの起動六課の屋上の出来事まで…。

アンジュを一緒に倒して、私はすぐに気を失ってしまった。
そして…目を覚ました時には…彼は…。




「アンク…私をからかってるんか?」

「からかってない…真面目に聞いているんだ」

「馬鹿にしないでな!!…例え、今は離れ離れでも、私達は『見えない手』で繋がっているんや!!…だから私は待っていられる!!あれから3年経った今でもなぁ!!!!」


いつの間にか、はやて はアンクに身を乗り出していた。
突然の はやて の怒りで、ミウラとアギトは驚き、その場で固まってしまった。


「…くだらねぇな」

「…っ!なんやて…!!」

「いつもそうだ…なんでだ…」

「…?」

「悪い…少し感情的になりすぎた…」


アンクは自分の行き過ぎた発言に気付いたのか、そっぽを向きながら不器用に自分の右手を はやて に突き出した。
それをみた はやて はキョトンとなってしまったが、すぐさま自分もその手に握手した。


「ふふっ…変わったなぁ、アンク」

「あぁ…本当に…」


はやて は先ほどの言葉があまり腑に落ちなかったが、アンクの行動に関心し、とりあえず今は彼を許すことにした。
だが、それを見ていた二人は黙ってはいなかった。


「おい!お前!!」
「っ!!…す、すいませんがっ!!!!」

「お?」
「ん?なんだ…」


はやて の後ろからアンクを睨みつけ、敵意丸出しのアギトと、そのアギトの後ろからおどおどしながらアンクを見つめるミウラが身を乗り出してきた。


「はやて を怒らせやがって!!もし はやて に何かしたなら、私はお前を許さないからな!!」

「喧嘩はダメですよっ!えっと…アンクさん!!はやてさんを困らせないでください!!」


「あ…あぁ?」

「ふふっ!しょうがないなぁ…」


アンクは突然の事で、若干動揺してしまった。
はやて は微笑みながら、興奮状態の二人を落ち着かせてあげた。


「私は別にアンクに怒られていたわけじゃないんよ、ちょっと感情的になっただけや。二人とも心配かけてわるいなぁ」

「そ、そうなのか?…まぁ、それならいいんだけど…」

「そうですか……」

「うん、でも私の事気にしてくれてありがとな!二人とも!」


はやて は二人の頭を笑いながら何度も撫でてあげた。
その姿は、まるで「母親」だった。

彼女自身も、成長しているということだ。


「…さて、もうこんな時間だ。俺はそろそろ帰らないとなぁ…」

「なんや、アンク。もう帰っちゃうんか?ゆっくりしていきぃな!」

「あぁ。だが悪い…俺にはあいつ等が待っているからな」

「そか…わかったわ!また今度な!」

「あぁ、じゃあな」


アンクはポケットに手を突っ込み、その場から離れていった。
少し離れたところで、アンクは再び、はやて がいる方向へ振り向いた。



「おい、お前!!」

「ん?なんやぁ!?」










「あんまり、無理すんじゃねぇぞ!!!!」

「えっ…」










「辛いときは、自分の欲望を解放しろ!!!!いつまでも我慢してるんじゃねぇぞ!!!!」

「…アンク…」








「解放しろ!!!!お前の中の欲望を!!!!」

「………」











そのまま、アンクは振り向くことなく、先ほどより少し歩くスピードを上げてその場から立ち去って行った。
はやて はアンクの姿が見えなくなるまで、ずっとその背中を見続けた…。














その日以来、はやて はいつもと変わらない、ただ彼の帰りを待つ日々を過ごしていった。
はやて は昔とは違い、仕事の休みを多くしていた。
休みの日は、家で過ごし、海岸沿いを散歩をする。
たまに道場を覗いて子供達に指導する。

そうして、また、日々は流れていった。




………




「ミウラちゃんインターミドル、残念だったわねぇ」

「だが、実に良い試合だった」

「今度からさらに密度の濃い修行をしねぇとな!!」

「これからもビシビシと指導していくからな、ミウラ」


「はい、師匠!!それに皆さん!!これからもヴィヴィオさんやアインハルトさんに負けないように、僕ももっと強くなります!!」