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グッバイ・パピーラブ

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その3



「遊園地?」
 夕食と晩酌を兼ねた食事の途中、良かったら使ってくれ、とトラから渡された封筒の中に入っていたのはペア無料招待と書いてある券だった。どうしたんだこれ、と説明を促すと、背中に重みが伸しかかって虎徹は呻く。
「トラがスーパーのくじで当てたんだ」
くっついてきたウサの補足に、へぇと思わず声が出た。
「すっげーなトラ! 俺なんて毎回ティッシュだぜ…って、どうした? なんか落ち込んでない?」
 ばしばしと背中を叩くと、トラの身体はふらりと揺らぐ。覗きこむと悲しそうな目をしているのに気がついて虎徹は焦る。
「本当は米が欲しかったらしい」
「こめ…?」
 またしてもウサが補足してくるのに虎徹は振り向くと、ウサの顔が至近距離にあって、頬に触れてくる唇は避けられなかった。いつの間にかウサの腕は腰に回っていて、食事中は離れてろと言ったばかりなのにすごく近い。注意するバーナビーがいないから、余計フリーダムになっている。
「……コテツとマスターで行ってくるといい」
「いやいや、トラが当てたんだからトラが使えって」
 ウサの手を剥がしながら、虎徹は消沈しているトラに封筒を返す。
「なら、コテツと一緒に行きたい。だめか?」
「だめじゃない、けど…」
 自分と同じ顔で上目づかいされただけなのに、何故か赤面してしまうこの破壊力。トラから視線を逸らしながら応えると、引き剥がしたはずのウサが再びぴったりとくっついてきて虎徹は我に返った。
「オレも行くぞ、コテツ」
「お、おう」
「僕も行きますよ、虎徹さん」
 いつの間に帰ってきていたのか、振り返るとバーナビーは話は聞かせてもらった風に壁に寄りかかっていた。
「……おかえり、バニー」
 バーナビーの肩が若干上下しているのを、虎徹は見逃さなかった。

 トラにOKと答えたはいいが、男二人にさらに男二人が加わって、いい大人の男四人で遊園地はどうなんだろうと考えなくもなかったが、冬はオフシーズンになる為か園内の人気はまばらだった。気にするほどでもなかったか、と虎徹はひっそり胸を撫で下ろす。虎徹の隣では、先ほどからトラとウサが貰ったパンフレットを興味深げに熟読していた。頭をつき合わせて覗きこんでいるのが、なんとも微笑ましい。
「いい体験学習になりそうですね」
「本人たちが楽しけりゃ、いーんじゃねーの?」
 にょきりと虎徹の背後から現れたバーナビーに、首にパスケースを掛けられた。
「なにこれ」
「一日フリーパスですよ」
「……」
 学校の先生の様な事を言っておいて、実は楽しむ気満々じゃないか。思わず胸の内でつっこんでいたら、トラとウサの二人にもパスケースを渡して振り返ったバーナビーと目が合う。
「さぁ、行きますよ虎徹さん!」
 こんなに活き活きとしたバーナビーを見るのは、付き合い始めて初めてだった。

 ぐるぐるする奴が気になる、というトラの言で初めに乗ったジェットコースターだけは良かった。次にウサのリクエストで乗った速さと落差が売りのジェットコースターで雲行きが怪しくなり、左右に揺さぶられる船っぽいアトラクションでついにバーナビーが音を上げた。
「……こてつさん、少し、きゅうけい、しましょう」
「だらしねーなーバニーちゃん。もうギブか?」
「身体が…グラグラする…」
「あれ、トラも?」
「家庭用だから処理しきれてないんだろう」
 ベンチに座って弱る二人を前に、そう冷静にウサは分析する。平気なのは虎徹とウサの二人だけらしい。二人分は無料だがもう二人分は自腹だし、せっかくフリーパスも買ったのにな、と虎徹は腕を組んで思案していると、ウサに袖を引っ張られた。
「次はアレにしよう、コテツ」
 ウサが指差す乗り物を見て、虎徹はそうかとひらめく。
「観覧車なら、バニー達も休むのに丁度いいんじゃねぇ?」

作品名:グッバイ・パピーラブ 作家名:くまつぐ